新型シエンタはフリードを超えたか

他社がヒット車を出したら、必ず同じカテゴリのクルマをぶつけて市場を横取りしてきたトヨタが、なぜか手をこまねいていたのがコンパクト3列シートミニバンです。

2001年発売のホンダ「モビリオ」に対して、トヨタが先代「シエンタ」を出したのが2003年。

その後、大ヒットした「フリード」(2008年)に対して、同年12月に「パッソセッテ」を出したものの、後席スライドドアではなかったのがウケなかったのか、丸4年も経たず(2012年2月)にディスコンに。

「シエンタ」は「パッソセッテ」としばらく併売されたものの2010年に生産完了。 ところが2011年に再び生産再開して結局12年もの長寿命モデルになりました。
かつて初代「ストリーム」に同じスリーサイズの「ウィッシュ」をぶつけて粉砕したトヨタにしては、あまり手際がいいとは言えませんね。


とりあえずスペックを比較してみましょう。

フリード シェンタ
全長 4,215mm 4,235mm(+20mm)
全幅 1,695mm 1,695mm
全高 1,715mm 1,675mm(-40mm)
最低地上高 150mm 145mm(-5mm)
2列目床高さ 390mm 330mm(-60mm)
W/B 2,740mm 2,750mm(+10mm)
室内長 2,625mm 2,535mm(-90mm)
室内幅 1,440mm 1,470mm(+30mm)
室内高 1,265mm 1,280mm(+15mm)
車両重量 1,390 - 1,420kg 1,380kg(-10kg)
車両総重量 1,710 - 1,765kg
JC08 21.6km/L 27.2km/L(+5.6km/L)

全高が40mm低いのに室内高は15mm高いということで、ホンダのお株を奪う低床フロアですね。
室内寸法は測り方によるのであまりアテにはなりませんが、制約の強い室内幅で+30mmというのは立派です。 ちなみに新型「ステップワゴン」の室内幅は1,500mmということなので、まだ追求する余地はありそうです。

室内長が短い点は、シートバックの角度などによって違ってくるので一概に言えませんが、3列目の足元スペースがどうなのか興味あるところです。


「アクア」がベースということで、個人的には圧倒的な軽量化(HVで1,305kg以下)をしてくるかと思っていたのですが、「フリード」より屋根が低い分くらいしか軽くなっていませんね。

余談ですがトヨタの「車両重量」はおかしくないですかね? HVの全グレード(6人乗り、7人乗り含め)で同じ(1,380kg)なんてあり得ないでしょう? 現に「車両総重量」では差が付いていますし。

「アクア」でも「G」も「S」も等価慣性重量のクラス上限(1,080kg)に合わせてますが、カタログ表示を良くするために装備をFOP扱いにするなど、実態にそぐわない細工をしているとしか思えません。


燃費については予想より良いですが、「フリード」もFMCが近づいていますので、この燃費で勝てるかは分かりません。 新型「シャトルHV」のFF仕様が34.0~29.6km/L(車両重量1,190~1,240kg)なので、ここから二段下がるくらいの燃費で出してくると思います。

でも実は「シエンタ」の燃費が凄いのはガソリンエンジン仕様(車両重量1,310~1,320kg)の方で、20.6~20.2km/Lというのは200kg近く軽い(車両重量1,130kg)「シャトル」の21.8km/Lに匹敵します。 新型「フリード」でもこれを超えるのは難しいと思います。


一番感心したのは価格です。 「HYBRID G」で233万円というのはトヨタのハイブリッド車としてはかなり安いと思います。 「アクア」より「フィットHV」の方が10万円くらい安いですからね。

現行「フリード」が素の「Hybrid」で221万円、「Hybridプレミアムセレクション」で237万円(7人乗り)ですからね。 FMCすれば「フリードHV」の価格は上がるでしょう。 「フィット」の場合、IMAからi-DCDへの変更で10万円上がってますし。

「シャトルHV」が199万円~238万円なので、スライドドア+3列シートで+20万円くらいでしょうか。 史上初めてトヨタとホンダのHV価格差が逆転するかもしれませんね。

「フリードHV」が優位に立つとしたら、最近のホンダはハイブリッドの4WD仕様をラインナップしていることでしょうか?


概して新型「シエンタ」は競合車と同等以上の商品力は持っていると思います。 あとはメーカーやデザインの好みの問題ですね。 ここまで冒険しないで、もうちょっと一般受けしそうなデザインでも十分に売れたと思いますが...