特に2度目の敗戦は、小泉には衝撃だった。最下位の3位に沈んだのはよもやだった。盟友に突き放され、清和会から小泉を裏切って梶山に流れた票の固まりもあった。それでも、小泉は「俺より背負う荷物が重い加藤さんと拓さんの方が苦しかったんだよ」と当時、自前の派閥旗揚げにもがいていた2人の思惑に理解を示して見せた。その時、このセリフが口を突いた。
「YKKは友情と打算の重層構造だ」
小泉は後に「二重構造」とも言うが、最初に口にしたのは「重層構造」だ。98年8月5日付の日本経済新聞政治面に「YKK、友情・打算の重層」と見出しのついた記事が残る。これは「加藤の乱」を抑え込み、上から目線で吐いた言葉ではない。盟友にそっぽを向かれ、総裁選に2連敗した屈辱のどん底で、こう割り切ってみせ、自らに言い聞かせるほかなかったのだ。
確かに『YKK秘録』はあくまで山崎拓の視点であり脚色も多いだろうし、(あえて)書かれていないこともまだ沢山あるのでしょう。 それでもとても面白かったけどね。
安倍晋三や菅義偉にはほとんど触れていないのが興味深いです。 対して二階俊博に対して山崎拓は「端倪すべからざる、だ」と評しています。 続編を期待したいですね。