国交相 自動車の安全・環境規制は貿易の妨げにならず | NHKニュース
石井国土交通大臣は閣議のあとの会見で、アメリカのトランプ大統領が日本の自動車貿易を批判していることについて「自動車の安全・環境規制はアメリカも含めて国際的に基準を調和させる動きが進んでいる。貿易の障害にはなっていない」と述べ、日本の規制が貿易の妨げになっていることはないという認識を示しました。
また、「現在、アメリカがこの点を問題にしているとは認識していないが、具体的な指摘があった場合は対応する」と述べました。
これについては解説が必要でしょう。
例えば国沢光宏という自動車評論家はこんなことを書いています。
トランプ大統領の言う通り日本側は自動車の輸入障壁を無くすべきだ(国沢光宏) - 個人 - Yahoo!ニュース
トランプ大統領が「日本は自動車に対し輸入障壁を設けている」と主張していることに対し、日本政府は「関税ゼロ。安全基準は米国の方が厳しい。環境基準も厳しい。輸入障壁など無い」と言っているけれど、現実が全く解っていないと思う。アメリカからクルマを持ってきてナンバー取ろうとすると、大変な作業である。
例えば排気ガス。アメリカ基準が日本より厳しいのなら、アメリカ仕様に関しては排気ガス試験など不用のハズだ。本来なら工場から出荷された証明書あればナンバー取れるし、書類のある中古車も名義変更や車検継続が可能。なのにアメリカからクルマを輸入した場合、国交省は「排気ガス規制は通っていない」と判断する。
つまり日本側で再計測しなければならないのだった。これには数十万円の費用が掛かってしまうため、簡単に持ってくることなどできない。車体に関しても、安全基準が同じであれば本来ならヘッドライトさえ左側通行用に交換するだけで良い。けれどヘッドライトに留まらず、車検場で様々な注文を付けられることになる。
正規輸入車であっても同じ。キーレスエントリー一つ取ったって「周波数帯が違うからダメ」と全交換を強いられる。今や盗難防止機能とセットになっているスマートキーは、気軽に交換できるシステムではない。しかも他に全く影響与えないほど微弱なのに、だ。電波法に合わせるだけで1台あたり10万円以上掛かるというのだから立派で高い障壁だと思う。
電波法については、海外から持ってきたスマホだって、技適マークがついてなければ日本国内での使用はできません。
全世界で共通して使えるバンド(帯域)が規定されているスマホでさえそういう状況なので、諦めていただくほかありません。
それはさておき、自動車評論家ですらIWVTAをご存じないようです。
国際的な車両認証制度(IWVTA)の実現に向け、国際条約の改正案が国連で合意 - Car Watch
国土交通省は6月28日、国際的な車両認証制度(IWVTA:International Whole Vehicle Type Approval)の創設を盛り込んだ国際条約(1958年協定)の改正案について、国連欧州本部(ジュネーブ)で開催されたWP29(自動車基準調和世界フォーラム)第169回会合において、同改正案が全会一致で合意されたと発表した。(中略)
今後、次回11月に開催されるWP29でIWVTAの実施に必要な手続き規則の最終案の提出を行ない、2018年1月のIWVTAの創設を目指して最終作業に入る予定としている。
VWのディーゼル偽装で少し話題になりましたが、WLTPの導入も国際相互認証の一環です。
JC08モードは2018年10月で廃止、国際基準「WLTP」に順次移行 - MONOist(モノイスト)
国土交通省は2016年10月31日、乗用車の排出ガス/燃費試験に国際基準「WLTP(World Harmonized Light Duty Test Procedure)」を導入すると発表した。シャシーダイナモメーター上で排出ガスや燃費を走行する際、これまでの走行パターンはJC08モードと決められていたが、今後は国連の定めたWLTPに沿った走行パターンに切り替わる。当面はJC08モードでの測定も可能だが、2018年10月から全面的にWLTPに移行することとした。
もちろん全世界規模で相互認証するには長い年月が掛かります。
でもこういうものは2国間交渉で行うものではなく、全世界で協調して相互認証するべきものです。 「米国の基準をそのまま飲め」というのは「日本は米国の51番目の州になれ」と言っているようなものです。