「アップルを意識しすぎず冷静に」 吉岡オーディオ事業本部長が語る「ウォークマン再生」 - 西田宗千佳のRandomTracking
では、吉岡氏は当時の社内の状況を、「一言でいえば、冷静に商売をする状況にはなかった、焦ってしまっていた、ということでしょうか」と語る。
「アップルが作り上げた商品は、やはりすばらしいもの。アメリカのシェアが70%以上となると、敵があまりに巨大になりすぎていた。技術的にどうこうというより、世界中にカルチャーを作っていたところが強い。その中でどうやっていくのかというのは、かなり大きなチャレンジであるのは事実だな、と認識していました。どうも我々は、『アップルに負けた感じ』を、強く意識しすぎていたのかも知れません」
昔、安藤社長は「HDDウォークマンは半年、1年でiPodを追い抜く」とか豪語してましたが、それだけ狼狽していたということなんでしょうね。
そして振り返って冷静にそれを語れるようになったSONYは、これから徐々に巻き返していくんじゃないでしょうか。
社内ではこんなことが言われているという。「アップルのソフトは昨日今日出来たものではない。失敗の積み重ねの上にある。iTunesだって5年かかったんだ。それが『明日にはできる』なんて勘違いするな。一歩ずつやろう」。
この言葉は、現在同社でソフトウェア開発担当上級副社長を勤める、ティム・シャーフ氏の口癖だという。シャーフ氏は、アップルでインタラクティブメディア担当副社長を勤め、QuickTimeを作り上げた人物の一人である。アップルを内情を知る人物の言葉であるだけに、追いかけるソニーにとっては重い一言だ。
冷静に、着実に。基本ではあることだが、ウォークマン復活に必要だったのは、カンフル剤ではなかった、ということなのだろう。とすれば、A800の登場に2年かかったのも、頷ける。結局、技術に魔法などないのだ。
それにしても、ウォークマン復活を指揮した人物がソニエリの元社長というのは面白いね。 海外のソニエリは今、ウォークマン携帯を大々的にプッシュしているので(国内ではブラビア携帯みたいですが)。
そしてAppleはiPhoneで携帯電話に乗り出そうとしている訳でしょ? 吉岡氏は、ウォークマン復活に求められる資質にピッタリの人物ですね。
内容は重複しますが、ITmediaにも記事が。
ITmedia D LifeStyle:「感覚的なよさ」を目指すソニーのオーディオ
つまり、まずは「ウォークマン」というブランドを活かしていこうと決めたのです。ソニー・エリクソンにも「ウォークマン携帯」というジャンルの製品がありますが、ウォークマンという名前を冠することには議論もありました。もうウォークマンという名前は古いという意見もありましたが、結果としては使うことでヒットに結びつきました。その経験からもウォークマンという資産は継承していこうと思ったのです。
(中 略)
外にいた経験があるからこそ見えるというモノもあります。またウォークマン携帯の話で恐縮ですが、“ウォークマン携帯”と名乗るだけで「音楽機能がついた携帯電話」とイメージしてもらえます。そうした理解をオーディオ製品全般に持ってもうこと――ソニーのオーディオがイコール高音質という言葉でつながるイメージを持ってもらうこと――が大切なのです。どんなに良い製品でも、理解してもらうためにゼロから説明をするのはとても大変なことですから。
ウォークマンは”古い酒袋”ですが、同じくらい知名度を持つブランドを作ろうとしたら、宣伝費用がいくらになるか見当もつきませんね。