――トヨタの北米不振の一番の要因はここ数年で大型車シフトしてしまった戦略ミスということになりますか?
私自身日産自動車で製品市場戦略を担当していましたが、それを戦略ミスと言われては担当者の立つ瀬がありません。新たな成長機会求めたフルサイズトラック市場が想定に反して縮んでしまった、ただそれだけのことです。トヨタは幅広い市場セグメントに商品を投入しているので、さらに永続的に成長を目指そうとすると自分たちのプレゼンスが低いマーケットを攻めていくことが必要になります。
トヨタ「タンドラ」が位置する米国のピックアップ市場規模は220万台。「アコード」(ホンダ)「カムリ」(トヨタ)「アルティマ」(日産)といったミッドサイズセダンに次ぐ市場規模です。このセグメントを未開拓のまま放置しておくというのは、トヨタのようなボリュームメーカーとしてはあり得ない選択だと言えます。
日産はトヨタより一足早く4月にフルサイズトラック市場に見切りをつけています。 「タイタン」の売れ行きが悪く、キャントン工場の稼働率悪化が喫緊の課題だったからですが。
トヨタは、インセンティブを積み増して「タンドラ」の販売を維持してきましたが、それも限界だったのでしょう。 フルサイズピックアップを買うような客層は、米国メーカーへの忠誠心が強いですからね。
「戦略ミスではなく市場が変化しただけ」といいますが、成功体験がパラダイムシフトの予見を邪魔したようにも思えます。