ホンダ 福井威夫社長ラストインタビュー! 「自動車産業は100年目の大転換期にある」|NEWS MAKER|ダイヤモンド・オンライン
―廉価版HVはインサイトで実現したが、その後、トヨタ自動車が「プリウス」の価格の大幅引き下げで素早く対抗した。ライバルのこの動きは予想できたか。
いや、われわれの常識ではとても考えらなかった。(事前に得た情報で判断する限りだが)クルマの売価を途中で変更するような戦略は、通常ありえないものだ。
実際に、当社に置き換えた場合、私があのような決断をしても、逆に現場が言うことを聞かないと思う。というのも、新車の価格をあれだけ下げてしまっては、いままでのお客さんの中古車の価格を下げてしまうことになるからだ。旧型車を併売する戦略も理解を超えた。
「社長が判断しても現場が言うことをきかない」というのが面白いね。 高いハードル(「二階に上げてはしごを外す」とか言いますが)は課すけれど、「鶴の一声」とは違うということでしょう。
フィットHVについても言及しています。
―今後のホンダHVの方向性は?「フィットHV」や「CR-Z」など、おおよそのラインナップは発表されているが。
そもそもHVはまだ高い。確かに、インサイトでは“安い”というイメージを持ってくれた人も多いと思うが、われわれは決して安いと思っていない。(中略)
(コストがかかる)大物は、バッテリー、モーター、電子基盤の3つ。たとえば、これらの部品点数をいかに減らすか、効率の良い仕組みをいかにして開発するか、生産数をいかに増やすか。当たり前のことだが、要するに、そういうことだ。(中略)
最初こそHVはイメージで売れたが、いまはもうイメージで売れる時代ではない。だから当面、ホンダにとって難しいのは、フィットだ。フィットは現在のままでも燃費の良いクルマだからだ。フィットHVにチャレンジする場合、ベース車であるフィットも重要なクルマとして残さなければいけないし、うまく両立できる戦略を考えなくてはいけない。
フィットHVの場合は、ボディの空力悪化と車両重量(インサイトより軽くなりそう)で、30km/Lに届くか微妙な感じです。
インサイトがMMCでモード燃費を32km/Lくらいに上げてくる(省燃費タイヤ履かせれば簡単なんですが)可能性もあるので、それとの兼ね合いもありますね。
プラグインHVに対しては、
―近距離は電気自動車として走行し、長距離はエンジンを使用するという充電式HV(プラグインHV)については、ホンダは否定的だったのでは?
確かに、プラグインHVは、商品としてはそれほど適切なものとは思えない。しかし、これが各国政府による政策、補助金や減税措置などの優遇策となる可能性については、考慮する必要がある。特に米国がそうだが、政府の政策で何かしらの補助金などが出るとなると、対応せざるを得ない。政府からプラグインHVに補助金や税優遇が出るとなった場合に、せっかく顧客がホンダ車に乗り換えたいと思っても、ホンダがプラグインHVを持っていないのでは、話にならないからだ。政治的な動きも考えて、どう転んでも良いように準備しておかないといけない。
個人的想いと企業戦略は別ということでしょうか。 朝令暮改がホンダの真骨頂ですからね。
〆はこの質問。
―改めてホンダらしさとは何か。(中略)
つまり、先進創造だ。これは本物でないといけない。“新しい”と言われなくてはいけない。奇をてらわず、中身のあるものでないとダメだ。今回もインサイトという廉価版のHVを出した。クラリティも出した。「ホンダは新しい価値を作ってくれる会社だよね」。これからもずっと、そう言われ続ける会社であってもらいたい。
ホンダくらい「らしさ」を常に問われ続ける会社も珍しいよね。 時にはうざったく思うのでしょうが、ある意味しあわせなことなのかもしれません。