前田新造:「辞めるなよ」と先手を打った上司 | キーパーソン図鑑
89年12月、本社の経営企画部へ戻る。中枢部門だが、部下もいないスタッフ課長だ。仕事はない。部長は「ほかの人の仕事を、よくみておきなさい」と言う。「左遷だ」と思った。定時出勤、定時退社の日々。みんなが仕事をしているのに、「じゃあ、お先に」というのは、辛かった。だんだん心が荒んでいき、ついに「会社を辞めよう」となる。
そんなとき、『イプサ』の開発時代に側面支援してくれた元上司から電話が入る。誘われて、居酒屋で飲んだ。いい機会だから、「会社を辞めます」と告げようと思っていたら、「おい、辞めるなよ」と先手を打たれた。状況を聞いてくれた後、「それなら、部長に『何か、仕事をくれ』と言ってみろ」と言われた。
離れたところからでも、自分のことをみていて、そこまで考えてくれている人がいたと思うと、うれしくて、吹っ切れた。翌日、部長がトイレへ行くのを追いかけて、「仕事を下さい」と直訴する。返事は「やっと、言ってきたか」だった。
ニコンの社長もすごかったですが、資生堂の社長もすごいですね。 こういう人は強いです。