【インタビュー】リコー「GXR」前編―構想から5年のカメラシステム - デジカメWatch
――GXRの生産台数はどれくらいを予定していますか?
福井:月産5,000台で、GR DIGITAL IIIとほぼ同規模です。 (中略)
――GXRは、マイクロフォーサーズ機よりも小型軽量という点を謳っています。ライバルはマイクロフォーサーズ機になるのでしょうか?
福井:システムとしては初めてのものなので、基本的に比較するものは無いと考えています。ただ、市場的に言うと“レンズが交換できるコンパクトなカメラ”という見方ができると思いますので、そういう意味ではミラーレスのレンズ交換式デジタルカメラが比較される対象になるとは思っています。
しかし湯浅(リコー パーソナルマルチメディアカンパニープレジデントの湯浅一弘氏)も申し上げているとおり、我々としてGXRはコンパクトデジタルカメラなんですね。コンパクトデジタルカメラとしていかに機能拡張していくか、コンパクトデジタルカメラの世界をいかに広げていくかを考えているのがこのシステムです。ミラーレスのレンズ交換タイプというのはGXR とは逆の発想で、大きな一眼レフカメラをいかにコンパクトにしていくかという思想だと思うので、考え方としてはまったく違うと思っています。
一眼レフからのダウンサイジング(マイクロフォーサーズ)と、コンパクトカメラからのアップサイジング(GXR)だから、逆方向から同じ場所を目指しているような気がします。
果たして一眼レフとコンパクトカメラの中間点に、ベストバランスのカメラは成立するのか。 はたまた単なる中途半端で高価なカメラになってしまうのか。
他社(特にソニー)からももっとこういう試みが生まれてくると楽しいんですが。
【インタビュー】リコー「GXR」後編―新規ユニットの可能性はあらゆる方向から検討 - デジカメWatch
――GXRはGX200の後継機とのことですが、GX200をブラッシュアップしたいわば「GX300」を希望しているユーザーも多いかと思います。
福井:GXRがこういう形になったので、これまでのGXユーザーの方は思い描いていたGXシリーズのイメージと違うと思ったかもしれません。しかし、RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCを装着してただければ、GXと変わらなく使用していただけます。加えて、GX200で要望のあった高感度のノイズ耐性なども高めています。ですのでGXユーザーには、ぜひGXRを触って欲しいと思います。
――GX200の生産は続けるのですか?
福井:GX200に関しては生産を終了する予定は今のところありませんので、当面販売は続けます。
――RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCは、GX200より画質が良くなっているのですか?
福井:センサーも画像処理エンジンも変わっていますので、その部分でかなり画質は良くなっています。
牧:高感度のノイズが飛躍的に良くなっています。
高感度のノイズがGX200の最大の弱点だったようですからね。 それだけに、「GXのボディ」で新製品を出して欲しかったというユーザーは多いかもしれません。
でもリコーくらいの規模の会社では、リソースが限られますからね。 仕方ありません。
――次にGR LENS A12 50mm F2.5 Macroですが、なぜAPS-Cサイズで50mm相当というカメラユニットを企画したのでしょう?
福井:ユニット交換式という新しいシステムを考えたときに、要望のあったサイズの大きなセンサーを載せようというのがスタートでした。そこでAPS-Cサイズということが決まりました。やはり大きなセンサーを使うことの特徴の1つは“背景のボケを利用して立体感を出す”という使い方だと思います。そうした描写を活かすには望遠系のほうが良いだろうと、35mm相当と50mm相当の2つを考えました。 50mmは昔で言う標準レンズです。使い方によってさまざまな撮り方ができることから、最初に出すレンズとしては有用性の高い50mm相当に決めました。(中略)
――GR LENS A12 50mm F2.5 Macroは、AFの合焦速度が遅いという声が聞かれます。
福井:これはマクロ撮影でのことだと思いますが、このレンズは全体繰り出しなこともあってメカ的に動く量が多いというのが理由の1つです。また性能を取るために、GRやGXに比べると4倍くらいのフォーカス検出ポイントを持っているんですね。そこをチェックしながら合焦させるのでどうしても遅くなる場合があります。合焦位置と現在のフォーカスが近ければさほど時間は掛かりませんが、大きくずれた場合はフォーカスを全部スキャンするため時間が掛かります。
AFの高速化は今後の技術課題ですね。ファームウェアのアップデートも含めて、さまざまな努力をしていきたいと考えています。例えば、単純に速くするだけではなくて、使い勝手の面でAFのスキャン領域をある程度ユーザーが制限して高速化できるようなものなども提案していきたいと考えています。
牧:我々が言っている“コンパクトデジタルカメラの延長”という部分からだと、コンパクト機に比べて遅いという印象があるかもしれません。しかし同等の単品マクロレンズから見れば、決して遅いわけではないと思います。それに、実焦点距離33mmで7cmまで近づけるマクロレンズはなかなかありませんよ。
そうは言っても、遅いものは遅いですからね。 処理能力を上げるとかして、何とかしてほしいです。
――GR LENS A12 50mm F2.5 Macroでは、手ブレ補正機構の搭載を見送っています。
福井:やはりサイズとの兼ね合いからですね。センサーシフト機構は、大きさ的に実装が難しいのです。
――レンズシフト式の手ブレ補正はどうでしょう?
福井:我々としてはこれまでセンサーシフト式を採用しているので、レンズシフト式を採用する方向性は無いですね。2つの方式を常に追いかけていけるかというと、それは厳しいですから。ただ、今後のカメラユニットには何らかの方式で手ブレ補正機構の搭載は進めて行きたいとは考えています。
牧:レンズシフト式にすれば、小さくなるというものでもないのです。レンズの光軸方向のサイズは有利になるかもしれませんが、筒が大きくなってしまうといった問題が出てくると思います。
個人的には、ある程度高感度であれば、手ブレ補正はなくてもOKです。 あれば越したことはないですが、性能第一ですから。
――次に出るユニットは28~300mm相当という「CX2」と同じレンズと搭載したユニットになります。CX2と同じ部分、異なる部分はどこですか?
福井:基本的にレンズはCX2と同じものになります。撮像素子はその時点で最適なものを使う予定ですので、CX2のものとは変更になる可能性があります。
牧:CX2は完結したカメラなので絵作りもその中でチューニングしていますが、新ユニットはGXRに合わせた統一感のある絵作りになります。
――この新ユニットはいつ頃発売になりますか?
福井:2010年のできるだけ早い時期に出したいと思います。開発は順調です。夏前を目標にしています。
ということは「GXR貯金」が貯まる頃には、新ユニットは出ている訳ですね。
――GXRとユニット間の通信仕様は公開するのですか?
福井:規格化して公開するということは、現時点では考えていません。しかし、“一緒にやりましょう”というメーカーさんがあれば拒むものではないので、一緒に世界を広げていきたいですね。いくつかのメーカーさんにはGXRに興味を持っていただいており、リコーがどういった考えでやっているのかを知りたいとのことで打診は受けています。ただ、具体的な計画はまだ何もありません。 (中略)
――ユニットのロードマップは公開しないのですか?
福井:次のユニットが出る辺りで、なんらかのものが必要になるのかなとは思っています。ただ我々としても、しっかりした計画と技術的な裏付けを取ってから発表させていただきたいのです。安易に発表して、結局できなかったということではいけません。ですから、この点に関しては少し時間を頂きたいというところです。また、初めて出すシステムですので「我々としては次はこうだ」という考えはありますが、それをユーザーに押しつけてしまうのも違うと思っています。市場の意見を聞きながら調整していきたいところです。
打診したのはどこのメーカーだろう? シグマだったりして。
一眼レフを持ってない、富士フィルムも可能性がありますね。