なぜ「世界の王さん」には皆がついていくのか | 職場の人間関係学
ホークス監督時代に、FA権を手にした城島健司が、大リーグへ行きたいといってきた。城島は監督になったとき高校からはいってきた新人で、捕球やリードはめちゃめちゃだったが、打力を評価して使い続けリーグ屈指の捕手に育て上げた。監督就任から5年目でようやくリーグ優勝することができたのは、守りの要である捕手の城島が一人前になったからだった。それまで、王は球場で卵を投げつけられ、マスコミにたたかれ、中洲では飲むこともできなかった。その肩身の狭い自分を解放してくれ、このあとホークスの黄金時代を一緒に築いていこうという大事な仲間がチームを離れたいというのだ。監督としては困る。しかし引き留めるどころか、「大いに頑張って、また帰って来いよ」といって送り出した。
井口資仁の場合は、球団フロントが前年更新した契約で、「希望する時点で大リーグへ行くことができる」という特約項目を認めていたため、7年目でポスティングシステムによる大リーグ行きとなった。このとき王は腹が立った。城島はFAという筋道を通してのものだったが井口は、フロントが監督の手の届かないところで特約をつくっていたからだ。王は、「野球と球団を愛していないやり方だ」とマスコミに正論をぶつけた。
小久保裕紀が前代未聞の「無償トレード」で巨人へ移籍したときもそうだった。当時、球団上層部が経営面や人事面でごたごたしていたこともあって、中内正オーナーが大学の後輩である小久保のために、と独断で決めたものといわれた。選手会は反対して優勝旅行に行かない騒動になった。王は「四番を無償で出すとは異例すぎる」と球団のやり方を批判した。そういういきさつがあって出て行った小久保がボロボロになって巨人から帰ってきた。王は、「よその飯を食ったのはいい経験だったな」といって迎え入れた。
あの野村元楽天監督ですら、王さんには感服するほどですからね。
本当の意味で現代に生きる「偉人」であって、真似しようと思ってもできるものではありませんが。