「上から言われて」やってくる「敵」

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『被写体』は、あのひとの夫 ~「上から言われて」やってくる「敵」。不条理な闘いの結末は?:日経ビジネスオンライン

長男の幼稚園の入園日は、こんなものではなかった。まさに自宅を一歩出るとそこは、押し寄せる記者たちに取り囲まれ、まさに戦場。クルマで幼稚園まで向かう間、信号に差し掛かると、
 
〈止まろうとする車に、ぶつかるようにカメラマンが前後から突進してきて、揺れる車にストロボを浴びせる〉
 
〈子供が泣き出した。妻が大丈夫よとなだめても、怖い怖いと言い、泣き声は次第に大きくなっていった〉
 
著者はクルマを降り、やめてくれと叫んだ。しかし騒ぎは収まるどころか、開いたドアの隙間から車内に片手でカメラを突っ込み、後部席にいた妻と子供を撮ろうとする。
 
混乱状態のなか、とうとう著者はカメラマンを殴ってしまう。そして、入園式に出ることをあきらめ、自宅に引き返した。

すごい話だね。 山口百恵はすごいと思ったけど、三浦友和もすごいわ。

これには後日談があります。

幼稚園の入園式の日にカメラマンを殴ってしまったことを、三浦さんは日が経つほど、後味のわるい出来事として記憶していく。三年が過ぎたある日、新幹線で殴った相手と再会する。声をかけたのはカメラマンのほうだった。
 
〈その男性は、自分のせいで入園式に出席できなくなり、それがずっと気になっていた。お詫びしたかったが、方法も見つからずにいた。今日、偶然、三浦さんを見かけ思わず声をかけた。/本当に申し訳ないことをした、という内容のことを、とつとつと語った。/私は間の抜けた返答しかできなかった〉(中略)
 
行き過ぎた取材に、三浦さんが直に対面し、申し入れをすると、返ってくるのは似たような言葉ばかり。「上から言われたから来た」。あるいは「読者が望んでいるから」。どれも、自分は気がすすまないんだけど、と免罪する言葉。言い訳である。
 
三浦さんはいう。
 
〈いったい、この「上」っていうのはなんだ。「いや、僕も本当はこんなことはしたくないんだけど、上から言われてるんで」。何百回このセリフを聞かされたことか。そのさぞかし立派な上の方が、デタラメの記事や行き過ぎの取材で抗議した時に、その下の者にすべて責任を押しつけて自分は目がとどかなかっただけだと言うのを知っているのか〉

なんだか戦中の日本軍みたいですね。 「命令だから」と行なった行為が、戦犯として追求されるようなものです。

自分はこういう「上意下達」がダメで、組織人には全く向いてません。 ある意味で卑怯ですが、いつでも会社の施策に「No」と言える状態に、自分を置きたいと思います。

被写体
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三浦 友和
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5 取り返しのつかない罪
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4 闘う男・三浦友和