揺らぐトヨタ神話、「コスト」と「拡大」優先が裏目に | Reuters
昨年12月15日、米高速道路交通安全局(NHTSA)のメドフォード局長代理ら3人の米政府高官が愛知県豊田市のトヨタ本社を訪れた。事故が相次いだトヨタ車の安全性について、オバマ政権からの厳しい警告を直接、トヨタ本社の幹部に伝えるためだ。(中略)
メドフォード氏と2人のNHTSA高官はまず、100人の幹部とエンジニアで満員になった同社本社の会議室で、米安全規則を改めて説明。その後、別室に移り、トヨタの品質保証の責任者である横山裕行常務、お客様品質部の宮本真志部長ら少人数の幹部と面会した。NHTSAによれば、同氏らはトヨタ側に対し、不具合を起こした車種への対応が遅すぎると指摘し、もっと素早く、効果的なアクションをとるよう強く求めた。
「その時点でわれわれは協議が深い意味を持っているとは予想していなかった。既にフロアマット問題に対応していたからだ」。佐々木真一副社長はメドフォード氏らとの会談をこう振り返る。
例の米当局の怒りに対して、火に油を注いだ一件ですね。
こうやってみると、北米トヨタが今まで通りNHTSAを懐柔できると事態を甘く見て、トヨタ本社に正確な状況を打ち上げてなかったのだろうと思いますね。
NHTSA幹部が豊田市まで乗り込んできた時点でも、のほほんと構えていたのがよくわかります。 まさかここまで態度を硬化させているとは思ってもみなかったのでしょう。
直接の危機対応として、不具合があった車両のリコールが効果的だとしても、今回の事態を招いた根本的な原因はまだ見極められていない。エクセレントカンパニーとして内外でゆるぎない評価を受けてきたトヨタ自動車に、いま何が起きているのか。
同社内外から出ている指摘に共通するのは、同社の競争力の源泉となってきた品質管理にほころびが生じているのではないか、という点だ。日本の若者の自動車離れや国内市場の低迷で、海外生産の拡大は同社にとって一層重要になっている。一方、コスト削減のための非正規雇用の拡大は、トヨタを支えてきた熟練工気質の劣化を招く。(中略)
ある大手商社の自動車部材担当者は「2006年に当時の渡辺捷昭社長が品質の徹底を最優先事項に掲げたのはすでに品質への危機感があった証拠」と振り返る。しかし、トヨタは、その後の好景気で、世界各地に拠点を展開し、生産規模の国際的な拡大に走った。
渡辺前社長は購買担当役員だったので、拡大する現地生産に合わせた部品の現地調達の増加や、部品共通化と調達先絞り込みによるリスク増大は予見していたハズです。 ことあるごとに「兵站が伸びきっている」と言ってましたから。
でも、奥田-張と続いた拡大路線にブレーキをかけることは出来なかったですね。
そういう意味で昨年、創業家出身の豊田章男社長が登板したのは、大きく舵を切るには看板が必要だったということなんでしょう。
ただヘタをすれば、豊田喜一郎のように「悲劇の社長」になってしまう可能性もありますが。