【カーマルチメディア・インサイダー】無料接続は正義のため・・・ホンダ今井 武インターナビ事業室長 | レスポンス自動車ニュース(Response.jp)
----:エコがリンクアップフリー実現を後押しした、と。
今井:エコアシストを利用すると、実用燃費が平均10%向上する。これが証明されたのです。インサイトでエコアシスト機能を用いているオーナー 5000人の半年間の実用燃費を調査したところ、平均燃費が向上していました。
エコアシストを用いて、エコドライブをしっかりやると燃費に効く。インターナビでは渋滞を回避するルートを的確に出すことによって、これも燃費が上がる。両機能によりインターナビは実用燃費向上に約10%貢献するということが、改めて証明できました。
メーカーとして、クルマの燃費を10%向上させるのがどれだけ大変かわかっているので、通信ナビで燃費が向上するのなら無料にしましょうということですね。
とはいえ、それを実現させるには社内の調整がかなり大変だったようです。
今井:通信モジュールの標準搭載自体は前々から私の夢だったのですが、これまでは端末コストや通信コストの課題がありました。高級車に標準搭載している他社(レクサス)と違い、我々はインサイトやフィットといったクラスにまで搭載していきたいと考えていましたから。ですから、「標準搭載化する」と決断ができたのは実は最近なんですよ。
----:具体的にはいつ頃でしょうか。
今井:9か月前ですね。インサイトが発売されて、エコアシストなどインターナビによる実用燃費向上効果がはっきりと見えたタイミングです。このデータがでたことで、開発を担当する社内のメンバーから「だったら、通信を標準装備にしようじゃないか」という声があがりました。
----:もともとテレマティクスの理想として今井さんは通信機能を標準搭載したいと考えていた。そこにインサイトで実用燃費向上に効くというデータがでたことで、スポーティにエコを楽しみたいCR-Zでのリンクアップフリー実現になったのですね。
今井:そうです。インサイトというステップがあったからこそ、リンクアップフリーを実現することができました。つまり最初はビジネスモデルありきではなかったのです。とりあえずは正規ディーラーでの車検を通信料永年無料にする事でCRM的な効果が見込めるという営業判断をすることができ、開発と営業の両方から「やってみようじゃないか」という声がそろって今回のリンクアップフリーが実現したのです。
おそらくディーラー車検を条件としたのは、ホンダ社内で「通信無料」の企画を通すためだったんじゃないかと思います。 ホンダ自体に何かインセンティブがないと、単なる持ち出しになってしまいますからね。
とはいえ、なんでまた事実上倒産してしまったウィルコムを足回りに使うことにしたんでしょうか。 もちろん従来から通信モジュールとして使っていましたが、経営不安の情報も流れていたと思うのですが。
----:まず今回のリンクアップフリーは、従来のように通信契約を回線事業者であるウィルコムと結ぶのではなく、ホンダと契約する形になっていますね。
今井:そうです。形としては、我々の提供するサービスの中に通信回線が含まれるという形になります。
----:回線卸売りを受けて通信料込みのサービスを提供する。他の事例で見ますと、セコムの「ココセコム」やAmazonの「Kindle」などが近い。テレマティクスサービスと通信契約をセットで提供するという点では、大きな方針転換をされたわけですね。ところで、なぜ今回の回線事業者としてウィルコムが選定されたのでしょうか。
今井:ウィルコムは過去から我々のサービスに協力していただいていて、インターナビの通信需要がどのようなものか 100%ご理解いただけていました。どの時間帯が混むかだとか、どのように通信を使うかを知っていただけているのですね。ですから、卸売価格の交渉において、インターナビの(通信の)使い方や需要パターンにあわせて、納得できる内容の料金を提案していただけました。
----:テレマティクスは需要パターンが、携帯電話や他の組み込み機器と大きく違いますから、それに適した料金体系を持ってこれるかどうかが重要です。その点でウィルコムは、先行していたからこそ、最適な価格提示ができたわけですね。
今井:そうですね。ホンダとウィルコムの契約は「1台あたりの月額課金」という形になっています。ここもポイントで、通信契約はお客様(ユーザー)ではなくクルマに紐付いていますから、例えば(クルマ)のオーナーが変わっても、通信料無料の適用条件を満たしていただければ、リンクアップフリーのサービスは提供されます。
へー。 じゃあ中古車でもホンダのディーラーで車検を受けるなら、通信料金は無料なんですね。
ユーザーがウィルコムと契約するのではなく、ホンダと契約するということですから、通信の足回りをウィルコムから他のキャリアに変更することになっても、ユーザーとしては気にする必要はなさそうです。
----:適用条件というのは、正規ディーラーで車検を受け続けるということですね。
今井:ええ、そこがもうひとつのポイントです。リンクアップフリーの永年無料というのは、新車購入時にインターナビを装着していただいて、なおかつ正規ディーラーで車検を受けていただく。これが条件になっています。
----:インサイトに比べて、CR-Zはカーナビ(インターナビ)のパッケージオプション価格が4万円ほど高くなりました。通信モジュール代および通信料を初めの3年間はカーナビの価格に、それ以降の通信料は車検代金に含まれるということでしょうか。
今井:いいえ、違います。カーナビの価格や車検代の中に、通信料分を上乗せしているわけではありません。リンクアップフリーの利用料は、クルマ1台とかカーナビ1台の価格に含んだのではなくて、"ホンダのお客様になっていただくトータルの費用"として見ています。
----:単純なコスト積み上げではない、と。
今井:そうなんです。クルマやカーナビの価格に(新車購入後)3年分の通信費用を上乗せしたわけではありませんし、その後の継続条件である「正規ディーラーで車検を受ける」というところにしても、ディーラーにお支払いいただく車検料金にリンクアップフリーユーザーのみ通信料を上乗せして価格を上げるといったことはありません。リンクアップフリーでかかる通信コストは、お客様ではなく、ホンダが負担するコストという考えで提供させていただいています。
----:企業が負担するマーケティングや販売のコストに含まれていると。
今井:そのとおりです。サーバーからカーナビまでの通信料も、ホンダが負担すべきインフラコストに組み込んでしまったわけです。
そうは言うけど、じゃあインターナビの4万円値上げはどこから来たんだろうね?
本当に使ってもらいたいなら、市販ナビに価格でも負けないように頑張らないとね。