マツダが低燃費を究めれば、リッター40kmも夢じゃない?:日経ビジネスオンライン
人:それはもう数え上げればキリがないくらいにたくさんあります。代表的で分りやすいところが圧縮比向上。ポンプロスの低減も大きく効いていますが、これは一般の方には正直分かりにくい。それから機械抵抗も3割くらい下げてあります。(中略)
人:1つはカムにローラを着けたこと。滑りよりも転がりの方が抵抗が少ないですから。でもこれは他社でも、もう既にやっていることです。ウチが今までやっていなかっただけで……。
あとはピストンリング。ピストンリングは本来ギュッと張ってシリンダーにへばり付いて、ガスが抜けないようにするのと、シリンダー内にオイルの膜を作る役目があるのですが、その外に張る力をうんと落としました。ピストンリングの抵抗をものすごく落としたんです。そのままの形で張る力を弱くすると、普通は隙間ができてオイルが抜けちゃって、オイル消費がどんどん増えてしまうのですが……。
F:どのようにしてそれを防いだのでしょう。
人:ピストンリングの丸さを常に保つということです。ピストンリングはヘッドボルトをぐっと締めたら、圧力が加わって変な形に歪んでしまう。だから日本のある会社なんかは、本当のヘッドじゃなくて、ダミーヘッドをいったん繋いで、ぐっとボルトアップ(ボルトを締めて)、それから丸くする加工をしています。締め付けた時に変形しちゃうから、わざわざ一旦ダミーでやっているんです。
我々はそんな“二度手間”を掛けていない。初めから丸くなるようにCAEを使ってタグチメソッドを取り入れて、どうやったら変形を抑えることができるかシミュレーションしながら作り込んできました。
スカイアクティブになるMMC前のデミオでも、ボアの真円度はとても高いらしいですね。 聞くところによると、フィットの1/5以下だとか。
他にも興味深い話があります。
人:だからそういうコンサルティング会社の人なんかがウチに来たら、「過給器をつけたダウンサイジングなんておたくら一体何をやっているの。意味が分からない」と言って、ボコボコに論破してやるんですけどね(笑)。
F:あはははははは。ナイス!人見さんは過給器を付加したダウンサイジングに関しては懐疑的なんですね。実際に燃費はうんと良くなっているようですが。
人:コストが高くなるだけで、燃費は我々が進んでいる道の方が絶対よくできると確信しています。次にもしSKYACTIVの進化型としてターボをつけるなら、トルクのためではなく、リーンバーンの領域を広げる、つまり空気を供給するためにつけますね。リーンバーンにしたら燃費は良くなりますから。どんどん燃料を薄くしたら、そのうち自分で空気を吸う能力がなくなるじゃないですか。そこで過給器が効いてくる。
4気筒を4気筒でダウンサイジングとか、3気筒あたりでチョロっとというのはやりません。しかしV6を4気筒にダウンサイジングして同等の馬力を出すというのはやります。これはコスト的にもかなりリーズナブルな選択になるんです。V型はヘッドが2つ、カムシャフトも4本もある。だから、やっぱり高いですから。
F:V6を直4ターボで。
人:そう。直4ターボでダウンサイジングをして、走りを維持しながら燃費をよくする、それはやります。4気筒を4気筒でダウンサイジングしたって、コストを掛けたわりには燃費の改善するレベルって大したことないですから。
F:うーむ。ハッキリおっしゃいますねぇ。
人:向こうのメーカーだけでなく、これから日本のメーカーも続々と過給器によるダウンサイジングをやろうとしていますよね。でもねえ。あれはねぇ……。例えばね……(このあたりは具体的なメーカー名を挙げられてかなりガチなお話をされたのだが、諸般の事情により割愛させて頂きます)。
人見氏は、自動車業界の池田信夫って感じだね。 風貌もちょっと似てるし。