TPPと野田総理の態度のわかりにくさ:日経ビジネスオンライン
二枚目の俳優なら、迷っている横顔に味があるぐらいな解釈も可能だろうし、思い惑うパティシエや思案に暮れるバーテンダーなんかも、それはそれで魅力的かもしれない。でも、職業的な政治家にとって、遅疑逡巡は致命的な失策だ。なんとなれば、彼らのなりわいは、決断を代行するところにあるからだ。
その意味で、政治家はサッカー選手に似ている。
ペナルティエリアにおいて、不決断は誤った決断よりも悪い。
パスとシュートのいずれが正しいのかは、神のみぞ知るところで、つまり、誰にもわからない。
が、最悪の決断だけは常にはっきりしている。それは、決断しないこと、すなわち、パスを出すべきなのかシュートを撃つべきなのか迷っているうちに囲まれてボールを奪われる事態だ。枠を外したシュートであれ、届かないパスであれ、逡巡の結果としての無意味なボール保持よりは数段マシなのだ。
ゆえに、野田総理は決断せねばならない。
サッカー選手出身の政治家というと、釜本邦茂が参院議員をやっていたことがありましたね。
1995年7月23日、第17回参議院議員通常選挙で自由民主党から比例区で出馬し当選。その後、暴走族に金品を渡して、票の取りまとめを依頼したことが判明したが、訴追されるに至らなかった。(中略)
1998年、日本道路公団の関連会社で、高速道路用プリペイドカード「ハイウェイカード」販売に関する特別背任事件が発覚。一連の不正販売に釜本の妻が経営する会社の関与が明らかになる[28]。(中略)
2001年7月29日、第19回参議院議員通常選挙で自由民主党から比例区で出馬し落選[29]、これ以後は政界から退いている。
...それはさておき、TPPです。
厄介なのは、この問題にわかりやすい妥協点が無いところだ。(中略)
が、TPPには、妥協点が無い。というのも、参加と不参加の間には、有効な立ち位置が存在しないからだ。強いて言えば、「付帯条件を山ほど持ち込みながらの参加」「途中で離脱する構えを見せながらの半身の参加」「未練たらたらの不参加」といった感じの選択が無いわけではないが、それらは、どっちにしても、良い結果に結びつかない。
内角に速球を投げ込むのか、さもなければ外角にカーブを落とすべきなのか、選ぶべき結論はふたつにひとつだ。中間点は無い。
というよりもこの場合の中間点は「ド真ん中にハーフスピードの棒球を投げ込む」という最悪の選択としてしか存在していない。
無論、内角の速球を弾き返されて三遊間を破られることもある。外角のカーブにバットを合わされて一塁線を抜かれる可能性もあるだろう。結果がいずれのサイドに転ぶのであれ、マウンドに立つ投手は、どちらかを選ばなければならない。はっきりしているのは、ド真ん中に及び腰のストレートボールを投げ込むことだけはなんとしても避けなければならないということだ。
今回は、結論を先送りにすることもできない。
ボールカウントが、1ボール1ストライクなら、あるいは1球外して様子を見ることも可能だろう。
が、状況は、3ボール2ストライクで、しかも満塁だ。安易なボール球は許されない。野田さんは、どのタマを投げるにしろ、思い切り振りかぶって、全力で投げこまなければならない。
そりゃサッカー選手にピッチャーをやらせる方に無理があるというものです。