入社1、2年は「良き社畜」として騙され続けよ。 で、最後に1回だけ裏切ればいい 人気ブロガー 藤沢数希 聞き手:ライフネット生命保険副社長 岩瀬大輔|対談:入社1年目の教科書|ダイヤモンド・オンライン
岩瀬 最初の1年で学んだビジネス・パーソンとしての基礎素養はありますか?
藤沢 与えられた仕事をとにかく一生懸命やることです。そして、上司にどうやって気に入られるか。それが1年目のすべてだと思います。(中略)
岩瀬 どうして粗末に扱われたんですか。
藤沢 言われたことがすぐできないからですね。何も教えてくれない上に、やれって言われてできないとすごく怒られる。最初は本当に辛かった。
しかも、僕は研究者の道を捨てて、金融機関に就職していたので、最初の数ヵ月でドロップ・アウトしたら、このまま一生「落伍者」のレッテルをはられて社会の底辺で生きていくしかないと思いつめていたので、逃げ道もない。もう、上司に好かれる以外に、生きる道がないんです。
「ブラック企業」と紙一重ですね。 でも自分の能力をストレッチするには、こういう環境が一番なのかもしれません。
そんな状況を生き抜くにはどうすればいいのでしょうか?
岩瀬 その頃、心がけていたことは何ですか?
藤沢 とにかくね、一生懸命やることだけですよね、言われたことをとにかく。
岩瀬 余計なことを考えず。
藤沢 考える余裕もありませんね。半年ぐらいしたら、言われたことはすぐパッとできるようになったんですよね。それで上司がだんだん信頼してくれるようになった。最初は、理不尽な要求を次々としてきて、出来ないとすごく怒られて、それが辛くて辛くてしょうがなかったんですけど、だんだんむずかしい指示であればあるほど、それが快感になっていったんですよ。1年ぐらい経つと、上司が指示を出す前から、次にどんな指示が来るのか完全に先読みできるようになった。指示が来る前から「はい、もう出来てます」みたいな。
上司は僕のことが可愛くなったので、いろいろとこの業界でのキャリアや市場の分析で、本になんか書いていない、本当に大切なことを腹を割って話してくれるようになりました。それらは今でもとても役に立っています。
こうなってくると、上司の仕事もはかどるし、お互いに信頼関係もできますから、僕たちのチームはすごく生産性が上がって、その分野で国際的に高く評価されるようになっていったんですよ。
筋トレというのは筋肉を痛めつけて、その回復過程で筋繊維を太くするそうですが、まさにそんな感じですね。
これってやっぱり若いうちじゃないとできないことだろうと思います。
藤沢 ロジカルシンキングだかなんだか分かりませんが、指示されたことに対して理詰めで、これは間違っているなんて言う部下はやっぱりダメなんです。上司がバカなことを言ってもね、バカを承知で終電まで残って作業して、ちゃんとやって見せてくれる人が可愛いんですよ。
岩瀬 似たような話で、僕、「死んでもやれ!」と言われたことがあるんです。かつての職場にいた人の言葉です。「俺たちからすると、賢いかどうかはどうでもいいんだよ。頼んだことを絶対やってくるヤツが可愛い」って言われたんで、同じですよね。
藤沢 大企業だと賢い人はいっぱいいるから、希少価値はないんですよね。恋愛とキャリアは同じです。この人、と決めたら、1年ぐらいは騙され続けて、相手の完全な信頼を得る。そうすると相手も腹を割って、本当に大切なことをいろいろ教えてくれる。キャリアで言えば、それはマニュアルなんかに書いていない、本当に大切なノウハウだったり、恋愛だとそれは本当に大切な絆になったりします。
確かにそうなんだろうけど、やっぱりできないなと思うのが、自分の限界ですね。