天然ガスが恒久的に原発を代替できるこれだけの理由:日経ビジネスオンライン
マスメディアやネット・ブログなどでは、太陽光発電や風力発電などの導入が本格し、いずれ大半の原発、あるいは化石燃料も含めて既存のエネルギー源の大半を代替できるというような議論もよく見かける。だが、それは既に筆者が様々なところで述べたように原理的に不可能であり、エネルギーの専門家で可能だと思っている人はまずいない。
その具体的な理由をここでは繰り返さないが、要すれば、日本は国土が非常に狭くて人口密度が非常に高く、またその国土の67%が森林傾斜地であり、国土面積当たりの経済規模、経済活動密度が北欧などとは比較にならないほど高いので、原理的に出力密度(地表面積当たりの出力)が非常に低い再生可能エネルギーを主軸にすることが不可能であるということだ。(中略)
太陽光発電や風力発電に関しては、日が照り、風が吹かなければ発電できないので、見かけの発電容量と実際の発電可能量に非常に大きな格差があることに要注意だ。前者は設備能力の約1割、後者は2割しか発電できない。例えば、「日本の太陽光発電設備の合計が原発6基分に相当する見込み」という記事は、実際の発電能力は0.6基分と読み替える必要があるが、果たしてどこまで一般の人が理解しているだろうか?
二酸化炭素排出の増加なしに、リーズナブルなコストで、かつ確実に、大量に、速やかに原発を代替する方法は、天然ガス・コンバインドサイクル発電(天然ガスを燃焼させてタービンを回し、排気ガスを利用して蒸気でタービンを回転させる複合発電)による、旧型石炭火力発電所を主とした発電効率の悪い旧式火力発電所の代替(同じ二酸化炭素排出量で2~3倍の出力を得られる)と、天然ガスによる分散型コジェネレーションしかない。
自分がエコウィル(家庭用分散型コジェネレーション)を導入する理由がまさにそれです。
でも太陽光発電も導入するつもりですよ。 太陽光発電の出力は不安定ですが、ピーク電力の削減にはつながると思うのです。
冬場(我が家は北風が強い)用にも風力発電が導入できないか、とか思っちゃいますね。
将来的には、再生可能エネルギーが全需要の1割くらいを占めるというのが理想ではないかしらん?
でも、本当に天然ガスに頼って万々歳なんでしょうか?
しかし、その場合に日本が世界一高いLNGを購入し続けていることが大問題となる。
現在の日本のLNG・天然ガス購入価格は、平均で百万Btu(英国熱量単位)当たり16ドル以上である。シェールガス革命が進行中の米国の天然ガス価格はわずか2.5ドル、欧州の天然ガス価格平均は8~9ドル、ドイツがロシアから長期契約で輸入している欧州では割高な価格が10~11ドルで、いかに日本が飛びぬけて高い価格で調達しているか一目瞭然だ。
さらに、ドイツやイタリアなどは購入価格が既に日本よりはるかに低いにもかかわらず、ロシアなどに対し、欧州平均価格より高い天然ガスはこれ以上購入できないとして、現在、長期購入契約の改定を求めて仲裁裁判に訴えている。
この世界一高いLNGの購入を3.11後、特に菅総理のストレステスト発言後、日本の電力業界がさらに一挙に拡大せざるを得なかった。このため、日本のLNG購入額は2011年全体で、前年比1兆3000億円増となった。日本が石油危機以来、30年ぶりに経験した貿易赤字額の半分以上にも相当する莫大な金額に上った。
今年は、輸入額はさらに大幅に増加する。昨年は、中国や韓国など、日本と同様にアジア太平洋地域のLNGに依存する諸国にも、日本の電力業界による高価格購入の急拡大の悪影響が波及し、これらの国から傍迷惑であるとの非難を受けた。
そういえば、東京電力のサイトにこんなページがありました。
○現在、世界の天然ガス市場は、大きく分けて北米、欧州、アジアに分かれており、パイプライン網やシェールガスの生産など、それぞれ市場環境や需給状況が異なります。短期的には、アジアではLNG需要の急増により、域内のLNG供給力だけでは需要を満たすことができず、もともと欧米向けのLNGをスポットLNGとしてアジアに仕向けています。この場合、価格のベースは基本的に欧州向けと同じですが、輸送距離の差により、産地から遠距離のアジア着価格は割高となっています。現在はLNG船の不足により運賃が高騰していることも価格差に影響しています。したがって、アジアという市場において日本だけが高値のLNGを購入しているわけではありませんし、電力会社固有の問題でもありません。
○また、LNGの購入に当たっては、当然、これまでも他の電力会社やガス会社と共同し購入するなどにより調達価格の低減に努めてまいりました。化石燃料がほとんど存在しない我が国において安定的にLNGを取得するためには、現在の長期契約を基本とする購入は有効であると考えています。
○「震災の前から電力会社を中心とした日本勢が、このLNGを『高値買い』し続けている」とありますが、確かに現在のLNG価格を世界的に比較すると、ヘンリーハブ価格が最も安く、その次に安いのが欧州で、アジアは高くなっています。しかし、過去10年で見れば、アジアが常に高かったわけではなく、日本勢が「継続的に」LNGを高値買いしているとの記述は事実と反します。(別添グラフ参照)
※ヘンリーハブ…米国の主要なガス集積地。この地点における価格はニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引され、米国天然ガス価格の指標となっている。
○「(シェールガスで)先行する米国では劇的に値段が下がり、いまや日本の輸入価格の6分の1ほどで流通している」とありますが、米国で価格が急激に下がったのは米国内でシェールガス等の非在来型ガス生産が急増し(2008年頃)、それが発達したパイプライン網によって市場に供給されたことが要因です。したがって、国内に天然ガス資源やパイプライン網を持たず、売り主に対する牽制材料が少なく、輸入に頼らざるを得ない日本との単純な比較はできないと考えます。また、日本に天然ガスを輸入するためには、液化および輸送のコストが必要であるという条件の違いにも留意することが必要です。
○現在、原子力発電のほとんどが停止し、LNGマーケットがタイト化している状況においては、LNGの売主の姿勢は強硬であり、当社はそうした厳しい状況の中で更なる価格引下げに鋭意努力しており、現在、欧米天然ガス指標価格にリンクした値決め方式などを含め、価格の多様化に向けて複数の売主と協議を行っています。なお、過去ヘンリーハブ価格が常に安かったわけではなく、仮に今後高騰した場合には、ヘンリーハブ価格リンクのLNG価格も連動して上昇することにも留意すべきと考えます。
要するに「自分達は精一杯努力している」と言いたいようですが、これじゃLNGの購入価格を引き下げることなんか出来そうにありませんね。