中国は目下、レアアースを巡る国際貿易紛争の矢面に立たされている。2012年3月、日本、米国、欧州連合(EU)は「中国がレアアースの輸出を不当に制限している」と主張して世界貿易機関(WTO)に共同提訴した。中国は乱開発の防止や環境保護を理由に、これに反論している。(中略)
江西省贛州(ガンチョウ)市は、レアアースの乱開発による環境汚染が最も深刻な地域の1つだ。中央政府の複数の省庁からなる共同調査グループが今年4月に発表したリポートによると、市内の302カ所のレアアース廃鉱山に積み上げられた残土は1億9100万トンに上り、破壊された森林面積は9734ヘクタールに及ぶ。膨大な残土は薬剤で汚染されており、その処理には70年もの年月がかかるという。(中略)
だが、この繁栄は深刻な環境破壊という代償の上に築かれた。龍南(ロンナン)県、定南(ディンナン)県、全南(チュエンナン)県は贛州市内の3大レアアース産地で、中でも龍南県の重希土類*2は世界一の埋蔵量と品質を誇る。その龍南県では、レアアース採掘に伴う森林破壊面積が1777ヘクタールと、県全体の森林破壊面積の約2割に達している。
中国政府が外国メディアに取材をオープンにしないから、実態が伝わらないんじゃないのかな?
どうやら松木渓谷よりもっと酷い自然破壊が続いているようです。
8月中旬、本誌(新世紀)記者はかつて年間30トンのレアアースを産出していた龍南県の足洞(ズートン)鉱区を訪ねた。そこで目撃したのは、レンガ色の土と黄白色の岩盤が露出した無残な禿げ山の姿だった。禿げ山は鉱区の奥に向かって延々と続き、周囲の青々とした山林との落差が異様な雰囲気を醸し出していた。
昨年8月、贛州市は中央政府から割り当てられたレアアースの採掘枠を使い切り、市内の全鉱山に対して採掘停止を通知した。この通知は今も解除されていない。だが採掘停止から1年が過ぎても、足洞鉱区の禿げ山には草もほとんど生えていない。(中略)
一般的な鉱山と違い、イオン吸着型鉱床のレアアースは電荷を帯びたイオンの状態で粘土状の鉱物の表面に吸着している。鉱床の見た目は粘土そのもので、採掘は容易だ。しかも、一般的な薬剤を使った原始的な方法でレアアースを簡単に分離できる。まさにこうした特徴ゆえに、贛州では極端な乱開発が広がったのである。(中略)
ある統計によると、沈殿法では1トンのレアアース酸化物を得るために最大2000トンもの残土が発生するという。これらの残土にはレアアース分離に使われた薬剤が残留しており、周辺環境に影響を及ぼしている。
「公害の克服」という近代化の過程を十分に経ることなく経済発展をしてしまった悲劇ですね。
むしろ汚染防止技術を持つ外国企業に開発を許可したほうが良かったのではないかと思います。
とはいえ、政府も全く対策を講じていないわけではない。龍南県では2011年に800万元(約9850万円)余りを投じ、足洞鉱区の廃鉱山に試験的な植林を実施した。具体的にはユーカリと芝を植え、廃鉱山の植生を徐々に回復させようという試みだ。ユーカリは土壌中のアミノ基に対して比較的強い吸着作用があるとされる。しかし現地に足を運んでみると、植林地の緑は依然としてまばらだった。案内してくれた住民によれば、多くのユーカリの苗木が根づいていないという。
仮に環境修復に巨費を投じても、実際にどれだけ効果が上がるか分からないという悩みもある。「レアアース開発による森林破壊、土壌汚染、水源汚染などの実態は、まだほとんど分かっていない。中国には大規模な環境修復プロジェクトの成功事例もない」と、ある環境修復の専門家は指摘する。また、別の専門家は次のように語った。
「環境破壊の修復には長い年月がかかるが、政治家や役人は5年で交代してしまう。数十年後のことなど請け合えるはずがない」
こうして砂漠化が進行して、日本に降る黄砂の量が増えるのでしょう。