「強い米国企業」がいる市場は安定している

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なぜコマツは底堅く、シャープは大赤字なのか  編集委員 西條都夫 :日本経済新聞

もうひとつはやはり米国企業の経営規律だ。シェアをいたずらに追い求めず、利益をしっかり確保するのが米国流。ゆえに米国企業が主導権を握る市場では価格競争が起こりにくく、市場全体が安定する。今のデフレの時代でも、「建機の世界では今でも毎年数%の値上げを実施している」と関係者はいうが、これも「キャタピラーの傘」の下にいたおかげである。
 
逆に米国企業が駆逐された市場では何が起こるか。米国のテレビメーカーは日本勢が追い落としたが、それと同じ現象が攻守ところを変えて日本と韓国・台湾勢の間で起きている。業界全体として価格を維持しようという機運は乏しく、泥沼の安値競争のなかで弱い順に脱落していく。そのプロセスの中に今のシャープの大赤字がある。(中略)
 
一方、同じ電機市場でも「強いアメリカ」が健在の市場は底堅い。ゼネラル・エレクトリック(GE)が強い発電設備や、IBMが主導権を握る企業向けのITサービス市場は収益が安定し、大きなブレはない。
 
これは偶然ではない。米国企業が利益重視の原則に沿って事業を選別した結果、変動の激しいボラタイルな市場から撤退し、安定感のある市場への「選択と集中」が進んだのだ。
 
先行き不透明な中で、どの事業をやめてどこに集中すべきか悩む経営者も多いだろう。その際の手がかりの一つが「強い米国企業」の存在である。現に数年前までは散々の決算だった日立製作所は事業ポートフォリオをGEモデルに近づけることで、復活した。「米国はお手本」というのは経営の世界では今も一面の真実である。

と考えると、北米自動車市場でデトロイト・スリーが存在感を持っているのは、日本のメーカーにとっても僥倖であるということになりますね。