生産年齢人口は減るのに、失業率が高止まりする理由

人口が減るのに街は失業者であふれる!? 「雇用貧乏国」ニッポンの厳しすぎる未来|人口減少 ニッポンの未来|ダイヤモンド・オンライン

今までも見てきたように、これから先、日本の人口が減っていくと、いろいろと困った問題が起こるようになる。中でも心配されているのが「働く人が減ってしまうこと」だよ。
 
中学校を卒業する15歳から、定年を迎える65歳までの人数を「生産年齢人口(せいさんねんれいじんこう)」と言うんだけど、今後はこの人口がどんどん減っていくとされている。15年後には今よりも12.7%も少なくなってしまう見込みだ。
 
でも、本当に労働力は不足するんだろうか?
 
じつは労働力は不足したりしない、という予測がある。それどころか人が余り、仕事にあぶれる人がどっと増える可能性が高いんだよ。

それですよ! その理由がずっと知りたかったのです。

「人口オーナス」の定義については、こちらの記事を参照してください。

まず、生産年齢人口が減るスピードを見てみよう。2010~2025年の生産年齢人口の減少率は、年率0.9%と予測されている。
 
ところが、これを上回るスピードで進みそうな指標がある。「平均労働生産性上昇率(へいきんろうどうせいさんせいじょうしょうりつ)」だ。ちょっと長い名前だけど、労働の量に対してどれくらい生産できるかを表すものだよ。工場の機械化やロボット化などを進めたりすることで、上がる指標だ。
 
2004~2008年の平均上昇率を見ると、1.19%。今後もこのスピードで上昇するものと仮定すると、生産年齢の減少率0.9%を上回って進むことが考えられる。これなら、生産年齢人口が減ってもどうやらカバーできそうだね。
 
ただ、困ったことがある。不足分をカバーできる分、就職できない人たちがあふれてしまうことだ。
 
つまり、失業問題は、生産年齢人口が減ってもこのままでは解消される見込みがない。それどころか、このグラフ以上に深刻なものになる可能性もある。

生産年齢人口が減るよりも労働生産性の上昇が早いから、失業者が増えるってこと?

確かに日本のホワイトカラーの生産性は、アメリカとかに比べてかなり低いと聞いたことがありますが、かといってIT化とかでそんなに生産性が上がっているとも思えないんですけどね。

たとえば、2025年の国内の市場規模(いろいろなモノ、サービスの売り買いの額の大きさ)は、今より1割減るとされている。人口そのものが減るだけじゃなく、年金暮らしのお年寄りなど、買い物をひかえる人が多くなるからね。
 
しかも今後は、家電製品や衣類など、いろいろなモノがますます海外から輸入されるようになる。安い海外製品に押されて、日本の製品はだんだん、人気がなくなってしまう――なんてこともおおいに考えられる。そうなると、国内にある工場は今以上に、人を雇わなくなってしまう。
 
ただでさえ、今の日本のメーカーは海外に工場を移し、現地の人びとを積極的に雇っているからね。この動きは、国内の市場規模が小さくなっていく以上、今後も活発になっていくはずだ。

産業空洞化は分かるんだけど、それが労働生産性とどういう関係が?


なぜ生産性を高めるほど経済は没落するのか (プレジデント) - Yahoo!ニュース

「労働生産性」とは、労働者1人当たりのアウトプットのことだ。「付加価値額」を労働者数で割ったものが労働生産性となる。
 
労働生産性を上げるには、分子である付加価値額をブランド向上などの努力で増やすか、分母である労働者の数を機械化などで減らすという方法がある。ただし、前者は容易ではない。このため結果的に、「生産性を向上させる」=「人員削減を進める」という単線的な考え方が広まってしまった。
 
この問題を理解するには付加価値額について正確に知る必要がある。付加価値額とは、企業の利益に加え、企業が事業で使ったコストの一部を足したものだ。
 
企業の利益が高まれば付加価値額は増えるが、最終的に収支がトントンでも、途中で「地元」に落ちる人件費や貸借料などのコストが多ければ、付加価値額は増える。
 
なぜ利益だけでなく、地元に落ちるコストも付加価値に算入するのか。
 
地域経済全体で見れば、大きなプラスになるからだ。地域経済が元気になれば、結局巡り巡って自分の業績も伸びる。江戸時代の商売人は直感的にこのことがわかっていて「金は天下の回り物」と言った。自分が使ったお金は誰かの儲けに回り、その儲けがお金として誰かに使われることで、自分の儲けに戻ってくる。これこそが、「経済感覚」である。

なるほど。 工場を海外に持っていけば「地元(日本)に落ちるコスト」が減るので、「付加価値額」が下がり「労働生産性」も下がるのかな?

確かに残業ゼロ、ボーナス減額で可処分所得が減った結果、国内消費が減って企業の業績が悪化するという「負のスパイラル」というのはありますね。

あれ? でも「平均労働生産性上昇率」は高いんだよね? うーむ、よくわからん。

例を挙げよう。図版に7つの産業を並べている。このうち、付加価値率の最も高い産業はどれだろうか。
 
正解は7番の「サービス」が最も付加価値率が高く、一番の「自動車」の付加価値率が最も低い。「ハイテク=高付加価値」と思いこんでいる人は多く、講演でこのクイズを行うと、ほとんどの人が間違える。実際には、多くの人間を雇って効率化の難しいサービスを提供しているサービス業が、売り上げのわりに一番人件費がかかるので、付加価値率が高くなるのである。

「人件費がかかる=付加価値率が高い」なの?
よしんばそうだとして、労働者1人当たりで割った「労働生産性」はどっちが高いんだろうね?

そのサービス業ですが、最初の記事によるとこんな心配もあるようです。

さてそうなると、製造業の仕事を失ってしまった人たちや、働きたいのに働けないでいる人たちはどうするだろう?
 
心配なのは、サービス業などに失業者が殺到する可能性だ。
 
サービス業は、人の力が必要な「労働集約型(ろうどうしゅうやくがた)」の産業といわれている。だから、一定の雇用は今後も必要とされるだろう。だけど同時に、正社員が少なく、パートやアルバイトで働く人たちが多い分野でもあるよね。
 
その分、お給料の相場は高くない。今後、こうした分野に「ほかに仕事がないから」と働き手が集まれば、日本人の賃金の水準はますます下がっていくかもしれない。

付加価値率が高いから良い産業という訳でもないようです。

まだ腑に落ちていないので、今後もこのシリーズは続きます。