--福島第一原子力発電所で放射性物質を含む汚染水の問題が続いています。なぜ対応が後れているのですか。
姉川:汚染水の問題というのは、メディアにたくさん書かれましたから、世の中には知られているけど、(原発事故)当初からこれはなかなか手ごわい問題だという認識はありました。米スリーマイル島での原発事故は当然、我々の道しるべになっているんですよ。
事故当初、3月、4月の時からスリーマイルの収束に関わった方など国外の方が来ておられて、「この水の問題というのはたいへん難しい問題になるよ」と。最後は(放射性物質の1つである)トリチウムを放出していいかという問題だって、一般の方にご理解いただくのは難しいチャレンジになりますよ、という話はありました。
4月から問題になったのは3つ。1つは地下貯水槽から(汚染水が)漏れてしまったこと。それから海っぺりの方に流れている地下水に乗ってトリチウムやベータ線核種が検出されているということ。3つ目はタンクが漏えいしたということです。
なるほど手ごわいなとは思っていますけれども、想定外と思っている感じではないです。
だったらその時点で地下ダムを計画・建設開始していれば、今日こんなことになっていなかったんですけどね。
民主:馬淵氏11年6月、東電に「遮水壁設置求めた」- 毎日新聞
東京電力福島第1原発の汚染水問題を巡り、民主党の馬淵澄夫選対委員長は18日の党会合で、首相補佐官をしていた2011年6月に東電の武藤栄副社長(当時)と会談した際に「遮水壁(設置)は遅滞なく進めるということを確認した」と改めて指摘し、会談内容を明記した文書の提出を東電側に求めた。
会合で馬淵氏は、武藤氏との会談翌日の11年6月14日に粘土遮水壁設置の計画を記者発表する予定だったが、東電側が「1000億円の債務が加算され市場が混乱する」として発表を見送るよう要請したと説明。さらに、武藤氏との会談で、発表はしないが設置を進める確約を得たと語った。
もちろん東電は債務超過になって、追加の融資も受けられなくて破綻していたかもしれませんが。
で、「そんなことを今さら言っても現場の士気が上がるわけではないだろう」と言いたいようです。
--汚染水問題に追われる現場のモチベーションが下がっています。
姉川:我々は一生懸命事故の収束をやりたいと思っているんです。でもしばしばたたく人がいる。ブーイングばっかり言っていたらチームは勝てないんです。
内部では監督やコーチが頑張ろうぜと言っているけど、みなさんは観客であったり、スポーツ記事ライターだったりする。その時になんだこれというふうなことばかり言われていたら、私も(クルム)伊達公子(選手)みたないなことを言いたくなってしまいますよね。我々としては頑張っていこうぜという気持ちでいるし、どうやったら盛り上がるかなと。現場の苦しさだってもっともっと楽にしてやりたいと思いますよ。(中略)
--ブーイングはいかがなものか、ということですか。
姉川:いや、いかがなものかというのはちょっと言い過ぎかもしれません。サポーターでもブーイングしますから。結局、人は三振したらブーイングして、ホームラン打ったら拍手するというのは変わらんと思うから、三振しても拍手してくれとか、黙っておいてくれというのは無理だと思います。
ただ、チームが優勝してほしいと思っているんだったら、いたずらにブーイングのほうを強調するのは損だよと、国としては。ということはサポーターの人たちは、どこかで心得ていると思うんです。
でも、東電に対しては、それを心得ていないし、心得ていないように誘導しようと、そういうほうがいいなと思っておられる方もいらっしゃるような気がして、それは不思議なことだなと。
サッカーで例えるのなら、サポーターからの信頼や声援を得るには結果を出すしかないんですよ。 あるいは態度で示すとか。
もし東電が「(償却に関する法律が出来たなら)保有する原発は全て廃炉にします。二度と再稼働はしません」と宣言したら、たぶん東電を応援しようという人はすごく増えると思いますよ。 出来ないでしょうけどね。
もう一つあるとしたら、例のアンダーコントロール議論ですよ。これも程度問題であることはみんな知ってるわけじゃないですか。
ちょっと例えが悪いので、ごっちゃにするのはよくないかもしれないけど、放射能がゼロになるということは、この地球に住んでいる以上あり得ないことです。だって、原発事故がなくてもゼロじゃないですから。
だとすると、もとの状態と変わらないレベルになっていたら、(汚染水)漏れはゼロにはなっていないかもしれないけれども、その影響度合いとしては、ゼロというふうに言えるというのは、私は安部総理がおっしゃっているのは当たっていると思うわけです。
ところが、多くの人はうそをついている、(汚染水が)漏れている以上はアンダーコントロールではないと。総理はうそを言った、そういうふうに言われると、何を言っているのかなと。
そのことによって福島の状況がちょっとでも良くなるのであろうかと。日本国の状況がちょっとでも良くなるんであれば、人を危険にさらしているようなことがあるんだったら、メディアとしては大衆の番人として、危険なものは危険だと言うのは価値があると思いますよ。
でも、オリンピックが来るのは危険ですよ、韓国の人はお寿司は食べないほうがいいですよ、福島産のものは流通に乗せないほうがいいですよと、そんなことを言いたいんですかと。
あそこの外海は自然の状況と変わらないぐらいになりました。それは東京電力が頑張っただけではありません。海って膨大な量があって、希釈されたという効果も大きいと思います。
でも、結果としてそれぐらいの影響まではどうやらこうやらこぎつけることができた、そのことを総理がアンダーコントロールまでたどり着いたと言っているのに、大勢でもってそれに反論していて、ましてや総理がうそをついたと言い立てることって、一体誰の利益のためにやっているんですかと。
「希釈されるからOK」というんだったら、海水浴場でオシッコしても大丈夫という論理と変わりません。
でも大腸菌と違って放射性物質は生体濃縮されます。 10年後に本当に大丈夫なのかは、まだ誰も分かりません。
--汚染水対策に道筋がついていないのに、もう収益化のほうに頭が行っているんじゃないかと映った人もいます。
姉川:そのように言われる方がいるけど、その人は腹の底では全てを理解した上で聞いていますよね。メディアの方がそんなにものが分かっていないとは私は思っていませんから。例えば、道筋がついていないというんだったら、汚染水の問題というのはあまたの問題の中で手ごわい1つではありますけど、ワンオブゼムです。一番手ごわいのはデブリ、壊れてしまった燃料を取り出すという問題です。
その論法でいえば、あれを取り出すという道筋がついていないのに申請をするとは何事だ。もっと言えば、あれが取り出せていないのに、申請をするとは何事だという言い方はできるわけです。そういうことは40年かかるというふうに我々はロードマップを出していますから、40年間はもうやるなということですよね。
その一方で、柏崎の安全対策は、防潮堤はつくりました、プールはつくりました、何々ポンプを設置しました、消防車買いました。そのときには何も言わないのに、申請した途端に言ってござるというのは、もうわかっているのに言っていないんだな、このタイミングでそのことに関して苦情を言われているんだなというふうにしか私には見えません。
福島第1の所員の就労環境や生活環境を整えるためにはお金がいるんです。収入を得ることに関しては、利益を追及しているんだというような言われ方をしますか。
適切な事業運営によって、相応の利益を得ることに反対する人はいないんじゃないでしょうか?
でも現在の東電の苦境の中心にあるのは、福島第一をはじめとする原子力発電です。 その原発を使って利益を追求するというのは、博打で作った借金を返すために博打にのめり込むようなものです。 覚せい剤中毒者が、覚せい剤を買うカネ欲しさに売人をやるようなものです。