かつて大手電力にとっては原発こそが競争力の源泉だった。電力業界の長男坊の東電と次男坊の関西電力は、いずれも原発を数多く保有する。一方、三男坊の中部電の原発事業は小さく、震災前から中部電幹部は「電力自由化で負けてしまうのではないかという恐怖感が常にあった」と話していた。
だが、原発事業が小さかったがゆえに、火力発電のビジネスモデルを研ぎ澄ましてきた。火力発電は燃料費がコストの8割を占めるほど大きいため、燃料調達のノウハウが事業採算性を大きく左右する。そこで、東電に次ぐ調達規模を誇るLNG(液化天然ガス)では、他社に先駆けて契約パターンの多様化を進めてきた。世界の電力大手の一角を占める仏EDFとは、石炭のトレーディング事業を手がけており、拠点はシンガポールに置いている。
環境が変わったことで、昨日までの弱みが強みになるということですね。
適者生存が世の理とはいえ、一寸先に何があるか分かりません。
電力ムラのトップから発送電分離の尖兵へ転じた東電は、「電力ムラの裏切り者」なわけですが、「電力業界の暴れん坊」こと中部電とはピッタリの組み合わせでしょう。
中部電が描く成長戦略は、海外事業と域外事業。中部管内の人口増などに大きな期待ができない今、地域独占に安住せず、成長性は人口が増え続ける東電管内と海外に求めようというわけだ。(中略)
中部電が東電との新会社は、国内での老朽火力の更新のほか、海外での発電事業にも手を広げていくことを表明している。つまり、独エーオンに代表される電力のグローバルプレーヤーのビジネスモデルを標榜しているのだ。
世界各国で燃料を調達し、トレーディングをしながら安価で条件の良い燃料を手中に収め、世界各国で発電事業を手がけるというビジネスモデルは、欧州の大手電力が自由化に直面したときに選択したモデルそのもの。収益性の低い送電事業や料金回収などに手間のかかる小売り事業を手放し、燃料や発電で収益を稼ぐというのが、電力会社にとっての勝ちパターンだからだ。
大阪ガスも合流して3社連合になるとさらに面白いですが、それ以上に東電にフラれた東京ガスがどう動くのかが興味深いです。
本業の都市ガス自由化への対応(業界再編)が最優先だと思うので、電力に関しては中国電とJFEや神鋼など諸派を糾合することで新電力としての存在感を出していくんじゃないかと思います。