ホンダ「i-DCD」リコールの中身

ホンダのリコールを考える:日経ビジネスオンライン

お恥ずかしいことに、最初のリコールが発表された2013年10月には、中身をよく見もせずに、きっとソフトウエアの不具合なのだろうと思ってそのままにしていた。というのも、さっき書いたように、今回のハイブリッドシステムの制御が複雑なことを知っていたからだ。ところが、今回5回目のリコールを発表する際に、ホンダが開いた説明会に出席して、改めて過去のリコール内容を復習してみると、案に相違して、単なるソフトの不具合ではなく、ソフトとハードが複合的に絡み合った事象が起こっているということが分かった。

なかなか興味深いです。

その中身ですが、

ところが、今回の不具合はまさにこの7速DCTで起きた。先ほどから、変速比を切り替えるときには、歯車の噛み合わせを変えるのではなく、使う歯車を、軸と結合したり離したりして選択すると説明してきた。この、軸と歯車を結合する機構にも一種の歯車が使われている、ただし、駆動力を伝達する歯車の歯が外向きなのに対して、軸と歯車を結合する歯車(表現がややこしくて申し訳ない)は、歯が横向きに噛み合うようになっている。乱暴なたとえだが、王冠を単純化したような形を想像していただければいい。この王冠のような形の歯車が向かい合っていて、結合の時には両者の歯が噛み合うのだと思っていただきたい。
 
この二つの王冠のような形をした歯車の片方がハブ、もう片方がスリーブと呼ぶ部品にそれぞれ形成されている。軸側に取り付けられていて、スライド可能なのがスリーブ、動力を伝達するための歯車の根本に固定されているのがハブだ。2013年10月にホンダが国土交通省に届け出た最初のリコールは、このハブとスリーブがうまく噛み合わない場合がある、というものだった。どうしてうまく噛み合わないかというと、本来は、山と谷が噛み合わなくてはならないハブとスリーブで、山と山がぶつかってしまう場合があるというのだ。確かにこれでは噛み合うことができない。そこでこのケースでは、ハブとスリーブがうまく噛み合わない場合に、モーターでスリーブを回転させて位置をずらしてから噛み合わせるように、制御プログラムを変更した。

理屈は分かるんだけど、なんでそれが開発段階のテストで露見しなかったのかが疑問です。
開発中の部品と量産部品とで何かが違ったのか? おそらく量産品では当り付けをしていなかったので、スリーブの動きが悪かったのではないかと思います。それでもテストはしていたと思いますが。

ところが、2013年12月に、ホンダはフィット ハイブリッドで2回めのリコールを届け出る。このときのリコールは、変速機の制御プログラムのリコールと、i-DCDの不具合に起因する「サービスキャンペーン」がセットになっていた。サービスキャンペーンというのは、リコールや改善対策を届け出るほど深刻ではない商品性や品質などの改善項目をユーザーに通知して修理・改修する制度で、国土交通省の通達に定義されており、その実施にあたっては、メーカーから国土交通省への通知が義務づけられている。
 
このときのサービスキャンペーンでは、前のリコールで改善したハブとスリーブの噛み合わせで、まだうまく噛み合わないケースが発生する可能性があるというもので、さらにプログラムを書き換え、よりスムーズにスリーブとハブが噛み合うように改善したという。
 
ところが、この改善が3回めのリコールにつながってしまう。2回めの措置でスリーブとハブの噛み合わせを改善したのだが、ごく稀に、スリーブをスライドさせるためのフォークという部品がスリーブを強く押しすぎてしまうため、フォークが損傷する場合があるというのだ。そこで、さらにプログラムを改善し、フォークに損傷のあるものは良品に交換する措置を取った。この3度の改善の後は、i-DCDに起因する不具合は発生していないという。

「発進出来ない!」という不具合は、かなり致命的なので急いでソフトで対策したのでしょうが、結果的にテスト不足をさらに露見してしまったということですね。
本来なら最初のリコールの段階ですぐに販売を中断して、代車を出すくらいのことをするべきだったんだと思うのですが。