トヨタはVWの不正を知っていた

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トヨタもVWの不正に抗議していた:日経ビジネスオンライン

トヨタ自動車が数年前から、独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車の排ガス性能に疑問を持ち、欧州の規制当局に取り締まりを要請していたことが「日経エコロジー」の取材で明らかになった。
 
背景にはディーゼル車の開発において、VWと同じような燃費や走行性能を求めると、排ガス性能が発揮できなかったことがある。競合他社のデータと比べてもVWが不正ソフトを使っていなければ説明できないデータだったという。(中略)
 
以前から同業他社はVWに疑いの目を向けてきた。ディーゼル車のエンジンや排ガス技術は基本的に大きな差がない。それにも拘わらず、燃費や走行性能で差がついているならば、疑問を抱かざるを得なかった。

ライバル車を購入して彼我比較するのは日常的にやってますからね。 競合他社で気がついていたところは多かったのでは?

ところでこの記事には重要な示唆があります。

下のグラフをご覧いただきたい。企業ごとのかい離率のグラフだ。かい離があるのはもはや前提である。ポイントは全社平均のかい離率から各社がどの程度の差があるかだ。試験以外のリアルワールドでは基準値の40倍のNOxをまき散らしていたと報じられたVWだが、カタログ燃費と実用燃費のかい離率は他社に比べて小さい。毎年の全社平均値より下回っているのは、VWグループと小型車が主力の仏フィアットと仏プジョーシトロエングループ(PSA)だけだ。この対象車はディーゼル車以外も含まれるが、欧州で走行しているクルマを対象としたため、ディーゼル車が多いと見られる。
 
実際、これまでVWは実燃費の良さを売りにしてきた。VW日本法人のホームページでも、他社と比較しながら実燃費の良さをアピールしている。
 
これは基盤とする欧州市場の特長がありそうだ。欧州の自動車事情に詳しいコンサルタントは「欧州の顧客は自動車の性能の厳しく、実燃費へのプレッシャーが強い」と話す。その中でフォルクスワーゲンは排ガス性能を犠牲にしてでも、実燃費を向上させようとした構図が浮かび上がる。

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そう考えると、Tier2Bin5対応の北米だけでなく、Euro5時代の欧州でも不正ソフトを使ったディーゼル車を販売していた理由が理解できます。
ところでフィアットも乖離が小さいけど大丈夫かな?

VW規制逃れ、なぜ簡単には許されないほど「悪質な不正」なのか? (Business Journal) - Yahoo!ニュース BUSINESS

 誤解を避けるべきは、問題のエンジンはEuro5と呼ばれる09年に実施された欧州排気ガス規制に準拠した比較的古いエンジンであるという点だ。現在のEuro6に準拠するエンジンを搭載するモデルには、法律と環境規制に適合しているとVWは説明している。
 
米国の排気ガス規制は「Tier2Bin5」と呼ばれ、要求されるNOx排出量は0.04グラム/kmと、欧州Euro5の0.18グラム/km、現行のEuro6の0.08グラム/kmと比べ極端に厳しい。同時に、米国の軽油に含まれる硫黄成分は15PPM以下と、日欧の10PPMと比較してかなり甘い。

Euro6より厳しいTier2Bin5をEuro5世代のEA189エンジンでクリアするというのはどう考えても不自然ですよね。

巨大企業VWを悶絶させた米環境NPO「ハチの一刺し」|山田厚史の「世界かわら版」|ダイヤモンド・オンライン

VWは不正を認め「リコール」に取り掛かるというが「リコールが始まれば騒ぎは一段と大きくなる」と日本のメーカー関係者は警戒する。二重ソフトを封印するには「認可を受けたソフト」に統一するしかない。だがこのソフトは排ガスを抑えるため走行性能を無視している。馬力は出ないから、期待する快適なドライブにならなず、ユーザーは不正を実感するだろう。損害賠償請求が多発することは間違いない。費用負担に経営は耐えられるのか。企業の貯金ともいえる利益剰余金は14年12月で712億ユーロ(約9.6兆円)と潤沢だが、本拠地の欧州に飛び火は避けられず、経営危機はこれから現実味を増すだろう。

マジでこれほど興味深いことはないですね。 不正ソフトなしのエンジンの燃費やパワーがどれだけ悪化するのか調査しようと、世界中の研究者は手ぐすね引いて待っていると思います。

スズキの嘘つき『レーダーブレーキ』(30日) | 自動車評論家 国沢光宏

VWのディーゼル不正の件、どうやら燃費のためにやったと考えている人がいるようだ。おそらくNOx触媒についてあまり知らないのだと思う。2006年あたり、ホンダも日産もアメリカでディーゼルを売ることをホンキで考えており、様々な開発を行っていた。両車ともNOx触媒で厳しい規制値をクリア出来るメドを付けており、メディアに対しても「2009年に売る!」。
 
その際、NOx触媒を使うことによる燃費低下は4%以下だと明言していた。NOx触媒、還元のため短時間濃い燃料を吹くのだけれど、そいつが4%低下の理由です。また、排気ガステストモードだけ大量のEGRをするからパワー落ちる、という人もいるようだけれど、そんな幼稚かつ見え見えなことをしないで十分に規制値をクリア出来る実力を持っている。

まあ見てみよう。

EPA、無効装置の判定試験を追加すると各メーカーに通告 - クルマ - 日経テクノロジーオンライン

米環境保護局(EPA)は2015年9月25日、ドイツVolkswagenグループの排ガス規制不正回避問題に関連し、各社のディーゼルエンジン搭載モデルが「Defeat Device(無効装置)」を搭載していないかどうかを確認するため、追加試験を実施すると自動車メーカー各社に通知した。追加試験は、EPAが選定した任意の車両で、通常の動作および走行条件で行われる。
 
この試験は、これまでEPAで行われてきた自動車排ガスデータ(EDV)や自動車燃費データ(FEDV)といった標準的な排出量試験サイクルに、新たに追加される。試験の時間と走行距離も追加され、これまでより長くなる。この試験で使う車両は、連邦規則40 CFR 86.1836に規定されている通り、自動車メーカーが提供しなければならない。

中長期的には試験そのものが見直されるでしょうが、まずは不正検知の試験を追加するようです。

VW問題 英は119万台対象 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の英国法人は30日、VWのディーゼルエンジン車の排ガス規制逃れ問題で、英国での対象車が約119万台に上ると発表した。
 
同問題の対象車は世界で約1100万台で、国別ではドイツ約280万台、米国約48万2千台が明らかになっている。英国内のブランド内訳は、VW本体が約50万8千台、高級車アウディが約39万3千台などとなっている。

英国も多いですね。

VWのディーゼル不正、対象エンジンが拡大…1.2/1.6Lも該当 (レスポンス) - Yahoo!ニュース

今回のスイス道路交通局の発表では、2.0TDIだけでなく、同じく4気筒の「1.6TDI」、3気筒の「1.2TDI」も対象車に。この2エンジンも、2.0TDIと同じEA189型を名乗り、フォルクスワーゲングループの幅広い車種に搭載されている。
 
全世界でおよそ1100万台が対象になる今回の問題。スイス道路交通局は、「スイス国内では、約13万台が影響を受けるだろう」とコメントしている。

まだまだ底が見えないですね。