あえて言う「消費増税再延期は正しかった」 | 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

察するに多くの企業が、「来年春の増税はどうせ延期になるだろう」と、タカをくくっていたのである。5月14日には日本経済新聞が、5月25日には読売新聞が朝刊一面で「首相、増税延期へ」との報を打っている。つまりメディアも盛んに「同調圧力」を送っていた。世論調査を見ても大多数が増税に反対しているし、いくら軽減税率の対象になるといっても、増税となれば新聞の部数は確実に減りますからなあ。

でも「報道ステーション」などのニュースで街頭インタビューを見ると、「安倍さんは必ず上げますと言ったのだから約束を守ってほしい」とかいう意見が多くてびっくりしちゃうんですけどね。
有権者のみなさんって、「増税やむなし」という理解ある方が多いのね、と。 それともマスメディアによる情報操作なのかな?

まあ「やむなし」と考える人が、増税後も同じように消費してくれるかというとそうではないので、増税すれば消費低迷で景気は悪くなり「安倍政権が悪い」ということになるんでしょう。
そもそも景気が低迷しているのは外部環境の影響もあるけれど、消費税を8%に上げた影響が大きいわけで、それは「アベノミクス」(というものがあるとしたらだけど)の政策でもなんでもないです。

正直に言うが、2014年の増税の際に筆者は「影響は軽微」と楽観していたし、そのようにこの欄でも書いていた。この点に関しては、増税を不安視していたぐっちーさんや山崎元さんの方が正しかった。夏場になって、ようやく「こりゃマズイ」と考え直した次第である(「ヤバい日本経済」、本当はイケてない? 2014年8月15日 )。 
 
あの当時、増税楽観派の論拠は「消費税による増収分7.5兆円のうち、補正予算5.5兆円分が還元されるのだから、差額の2兆円くらいは吸収できるだろう」であった。今から思えば、時間軸を欠いた見方であった。実際に消費総合指数の推移をみると、2014年の増税から既に2年以上を経たというのに、消費はなおも2013年の水準に戻っておらず、だいたい2%くらい下回っている。

日本人の増税アレルギーというのはものすごいなと思うのが、昨年の軽自動車税の引き上げですね。
たったあれだけの増税で、右肩上がりだった軽の販売が一気に落ち込みましたからね。
消費税も「8%から10%のたった2%のアップ」と考えていると影響を過小評価することになります。

待て待て、それが正しいとしたら、増税なんて永遠にできないではないか、という声が聞こえてきそうだ。まさにその通り。欧州ではVAT(付加価値税)の増税が普通に行われ、景気へはそれほど影響を与えていない。なぜ日本でだけ、これだけ消費を冷やしてしまうのか。そこが問題である。
 
日本の消費者は、将来の収入には上方硬直性があって、自分は限られた金額の中で生活していかなければならない、と思い込んでいる。それは錯覚かも知れないのだが、そういう誤解をするのも無理からぬところがある。①まず20年くらいにわたって物価は上昇していない。②ところが給料も増えておらず、今後も増える見通しが乏しい。③社会保険料の負担増などにより、可処分所得は確実に減っていく。④さらに「意図せざる長生きリスク」などにも直面せざるを得ない。
 
こんな風にデフレマインドが定着している中においては、増税はイコール消費縮小に直結してしまう。かくして2度目の増税を恐れるかのように、消費マインドは委縮してしまった。1997年の3%→5%の時と併せて、国民の中に消費増税に対する抜きがたい「トラウマ」が出来てしまった。
 
2019年秋に消費税の再増税に挑戦するのであれば、何よりもこのトラウマを乗り越えなければならない。そのために必要なのは、とにかく賃金を上げることであろう。

個人的には「薄利多売」の商売をやめて、適正な利潤を乗っけた商売をするように転換するべきではないかと思います。
その結果、ビッグマックが1500円になるかもしれないですが。