BizPlus:コラム:中島孝志氏「社長の愛した数式」第68回「カルロス・ゴーン氏、お前もか――新・日産リバイバルに必要なワークシェアリングの数式」
1999年の日産の経営危機を、工場閉鎖や系列切りというコストカットを断行して見事乗り切ったゴーン式企業再生術を賞賛した経営者も少なくないでしょう。しかしゴーン氏のカリスマ経営がまさに、いまの日産の苦境を生んだ主因だったのではないかと思われます。
それを裏付ける数字があります。それは日産の配当利回り、配当性向の高さです。(中略)
ちなみに配当利回りを2月16日の株価終値で比較してみましょう。
トヨタ4.62%、ホンダ3.91%に対し、日産は13.94%と突出して高いのがわかります。
配当性向では、2008年3月期末で比べると、トヨタ25.67%、ホンダ26.01%、日産33.81%とこちらも高いです。
そこまでやっても、株価が上がらないことが悩みの種なんですよね。
でもそれは当たり前のことです。
筆頭株主のルノーは発行済株式の44.3%を占める大株主です。そしてゴーン氏は2005年4月からはそのルノーの経営トップでもあります。09年1月からは欧州自動車工業会会長という公職も兼務しています。つまりゴーン氏はルノーのほうばかりを見て、日産社長として仕事をしている、のではないでしょうか。
日産の高配当政策は、日産からルノーへの上納金を厚くすることを意味することにほかなりません。「とっても親孝行な会社」なのです。ルノーもここ数年、業績が低迷していますから、日産から上がってくる収益には大きな期待を込めるのは当然です。(中略)
現在の日産の格付けは格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)で、投資適格ギリギリのトリプルBプラス(BBB+)です。
一般の株主の為に配当を厚くしている訳ではなくて、日産の利益をルノーへ送金するためにやっている訳ですから。
V字回復以降の日産が上げた利益が、そのまま開発費へ回っていれば、エコカーなどの開発の遅れもかなり取り戻せていたでしょう。
投資家も馬鹿じゃないので、当然将来性を厳しく見ますし格付けも低くなるわけで、社債の利回りも高くせざるを得ず、資金調達コストが上がるわけです。 日産が公的支援を叫ぶのも分かるような気がします。