消費税を上げると、ほんとうに景気は悪くなるのか?

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景気は本当に「持ち直して」いるのだろうか?:日経ビジネスオンライン

私が「なぜ消費税でなければならないのか」という記事を書いた時にも多くの方がコメントにそう書いていらっしゃいました。このコラムで私が書いたのは、消費税増税やむなしという議論です。所得税を上げるよりは消費税で上げた方がいいという議論を展開したのですが、読者コメントのほとんどが消費税増税には反対でした。その理由の1つが消費税を上げると景気が悪くなるというものです。景気をこれ以上悪くしていいのか、1997年に消費税を上げて景気が悪くなった経験を忘れたのか、こういう声がとても多く寄せられました。
 
これは非常に大事な議論です。では、1997年に何が起きたのでしょうか。

自分も批判的な記事を書きました。

とはいえ、「所得税を上げるよりは消費税で上げた方がいい」という趣旨自体は賛成です。 低所得者層への配慮があれば、という条件付きですが。

1997年4月から消費税が3%から5%に上がることが分かっていれば、普通であれば消費税が上がる前に買っておこうと考えるでしょう。特に自動車や住宅の場合です。
 
実際、消費税が上がる前は経済がものすごく成長しました。今のうちに買おうという人がいろいろなものを買ったからです。ところが4月を過ぎたらその部分が全部なくなってしまって、経済がものすごく落ちました。従って、消費税を上げた途端に経済が大失速したというのは事実です。間違いありません。統計でも確認されています。ただ、問題はだからといって景気が悪くなるかどうかです。
 
これは1年後に買おうと思っていたものを今、買っただけの話なので、タイミングがずれただけとも考えられます。従って、前倒しで買ったことによって長い間、景気が悪くなることはないはずだというのが一般的な考え方としてあります。

それは机上の空論であって、生産能力以上にはモノは売れないし、売れなくなったからといって、従業員や生産設備を急に削減する訳にはいきません。

食料品とか、買いだめしててもいずれはまた買わなければならないものはともかく、「今年の夏服は去年ので済ませよう」など、生活必需品でなければ需要が消失してしまう場合だってあるのです。
消費者のマインドが理論通りに動くのなら、経済学者も苦労はしませんよ。


消費税が上がるのは不可避だとして、問題は「上げるタイミング」です。

しかし、1997年には景気が悪くなっていますから、やはり消費税を上げたために景気が悪くなったという結論になります。これについては非常に多くの論争がありますが、私は景気が悪くなったのは、消費税を上げたせいではないと思うのです。つまりこの時は消費税を上げましたが、アジア通貨危機や金融の大混乱がありました。これらによって景気が悪くなったというのが真相ではないかと思うのです。消費税を上げ、アジア通貨危機が起き、金融混乱が起きた。3つのことが一度に起きたので、どれが本当の原因か分からない。この論争は、今後も続くでしょう。

自分は橋本内閣当時、消費税アップに賛成でした。

でも結果的に、バブル崩壊から回復しつつあった景気を腰折れさせたのは確かです。 さらに予見が難しかったとはいえ、アジア通貨危機や金融システムの信用不安で、恐慌の瀬戸際までいってしまいました。 あとから考えると、あのタイミングで上げるべきではなかったのだと思います。
政治は常に結果責任ですから、橋本内閣の責任は免れないでしょう。

現在の経済状況は、1997年当時と似ているように思います。 「100年に一度」の経済危機から立ち直りを見せていますが、火種はまだ残っています。 経済的アクシデントが発生する可能性は高いですし、二番底や三番底に落ち込む危険性もかなりあると思っています。 こういうときに消費マインドに冷水を浴びせるような政策は取りづらいでしょう。

それでも上げざるを得ないのなら、買い控えが起こりづらいような方法で上げていくしかないのではないでしょうか?