第85回 ホンダ・フィットシャトル クルマで感じる憂国ニッポン! - トレンド - 日経トレンディネット
正直、フィットシャトルに乗った後、少し悩んでしまった。確かに良く出来ているし、性能、装備、実用性の割に絶対に安い。使い勝手も間違いなくいいし、エコ性能も高い。だが、他国の大衆車、そのほかとあまりに目指しているもの、頑張る方向が違う。(中略)
トヨタ「プリウスα」に乗った時も思ったが、シャトルに乗ると、今の日本の経済状況の厳しさ、発想の貧困さに気がつく。昔のような、バブル期のようなヤンチャな夢はないのだ。日々生活するのがやっと、今の生活をキープするのがやっと。身の丈、既にある範囲、想像できる範囲で、人より目立たずリスクなく楽しもうという発想が思い浮かぶ。(中略)
かく言う私もそれは一緒なのだ。日々生活するのがやっとの部分があり、昔のように、より高くて旨いものを食べようという発想ではなく、同じ値段でよりいいもの、より安全なもの、あるいは1割増しの値段で2~3割のメリットが得られるもの、そういうものを探す発想になっている。
基本はコストパフォーマンスの向上にしか興味がないのだ。より大きく稼いで、より大きく楽しむ…そういう山師的発想がほとんど消えている。
そんな縮小傾向であり、マイナス発想の時代にウケるクルマ、それがフィットシャトルであり、プリウスαなのだろう。どこからみても良く出来ているし、作り手も頑張っているし、+αもある。だが、夢はない。なにはなくとも絶対欲しい! 借金しても欲しい! という類のものでは決してない。
良くも悪くも、今のニッポンで求められる現実的なファミリーカー。それがこういうクルマなのだと私は思う。
「政治家のレベルは国民のレベル」 といいますが、それは自動車においても同じことが言えると思います。
それに、バブル以前の世代による自動車評論は、もはや有効ではないんじゃないのかな?
それはさておき、「課題先進国」である日本は、他国より17年も早く「失われた10年」に突入し、デフレ、少子高齢化、巨額な財政赤字など、まさにオン・ザ・エッジを突き進んでいます。
もしユーロが崩壊したら10年後の欧州でも、いまの日本車みたいなクルマばかりになっているかもしれませんよ。 良し悪しは別にしてね。