揺らぐ「日本車キラー」 現代自への消えない疑念 :日本経済新聞
燃費表示問題を巡る現代自の一連の対応も、疑念を生む要因になっている。まず、米メディアの関心が薄い大統領選直前に水増し表示をEPAと現代自が同時に公表した点だ。現代自は「問題発覚後すぐに対応した」とし、一部の韓国メディアには「大量リコール(回収・修理)の対応が後手に回ったトヨタとは違う」と現代自を持ち上げる論調さえあった。
実は現代自の燃費表示が疑わしいことは米消費者団体のコンシューマー・ウオッチドッグが以前から繰り返し指摘してきた。EPAによる調査結果の公表や補償専用サイトの立ち上げ、米主要紙へのおわびの掲載などを同時に行うには「最低でも数週間の準備が必要だったはず」(米自動車関係者)との見方もある。本当に「すぐに対応」した結果だったのか疑問が残る。
現代自は当初、燃費問題は北米だけとしていたが、そうではないことが判明した。韓国の知識経済省は11月20日、韓国内のカタログ燃費を事後検証した資料を発表。12年に検査を受けた21車種のうち、6車種で実際の燃費が3%以上低かったことが発覚したのだ。6車種のメーカーは独BMW、現代自と起亜自、ルノーサムスン自動車、韓国GMと4社が韓国製。韓国内でも以前から燃費水増し表示が横行していたようだ。
この問題が最初に報じられたのは、昨年の12月です。 公式に認めたのは今年の11月。 タイミングを図っていたのは間違いないでしょう。
トヨタの場合は安全問題だったので余計に追求が厳しかったのは確かですが、今回の問題も「単純ミス」で許してくれるほど米国は甘くないと思いますけどね。
そして、米自動車業界で最大の疑問とされたのが、現代自が水増し表示の原因と説明している「プロセス上の誤り」があったとする燃費測定試験の中身だ。
「コーストダウン」と呼ぶこの試験。平らな直線道路で時速80マイル(約128キロ)まで加速した後にギアをニュートラルにして、9マイルまで減速した際の燃料消費などを測定するという比較的単純なものだ。自動車大手のエンジニアは「この試験では燃料1ガロンで0.5マイルの誤差でもめったに出ない。現代自が最大6マイルもの誤差を見逃すはずがない」と疑問視する。(中略)
「熾烈な燃費競争に研究開発力が追い付かない焦りがあったのではないか」。ある業界関係者は水増し表示問題の背景をこう指摘する。(中略)
ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド技術、車体の軽量化、空気抵抗の少ないボディ形状、燃焼効率の良いエンジン――。燃費性能の向上には自動車メーカーの総合的な技術蓄積が左右する。将来の技術のタネをまくより、目の前の売れる車をいかに展開するかに力を入れてきた戦略が現代自の急成長を支えたことは間違いない。しかし、自ら仕掛けた燃費競争のなかで発覚した今回のずさんな燃費表示問題は、研究開発軽視路線の代償といえる。
デザインは買ってくることができますし、車体設計もリバースエンジニアリングでかなりレベルを上げられます。
でもパワートレインは技術をコピーするのが難しいです。
現代自が陥ったのは、技術面での「兵站の伸び」だったのかもしれませんね。