今回のドイツの視察で気づかされたことが2つあります。
一つは、再生エネ電力の急激な拡大によって、既存の大発電会社が想像以上に弱っていることです。特に化石燃料による発電施設を持つ発電会社は、規模に関係なく苦しい経営を強いられています。
詳しい説明は避けますが、最大の原因は、いわゆる「メリットオーダー効果」によるものです。簡単に言うと、毎日の電力が電力市場でコスト(限界費用)の安い順に買われるという事です。当たり前のことなのですが、この結果、コストがゼロか極端に安く優先給電が決まっている再生エネ電力から市場で売られ、コストの高い石油や天然ガス発電所の稼働率が極端に落ちる現象が進んでいます。これでは、ほぼ9割以上を化石燃料で発電している大手の4大発電会社はたまったものではありません。軒並み赤字に陥り、経営の危機を招いています。
市場主義からいえば安い電力から使われるのは当たり前ですが、どうやって実現しているのでしょうね?
メリットオーダーとは - エネルギー - 日経テクノロジーオンライン
メリットオーダー(merit order)とは、様々な種類の発電所を発電コストの安い順に並べたものを指す。このときの発電コストとは、経済用語で言うところの「限界コスト※」であり、主として火力発電所の燃料コストが相当する。1日の中で刻々と変化する電力需要を満たすには、発電コストの安い発電所から順番に運転することが最も経済的であるため、電力会社は特別な理由がない限り、メリットオーダーによる発電を行う。実際のメリットオーダーの並びを見ると、まったく燃料費の掛からない水力発電や風力・太陽光・地熱発電が最初に置かれ、続いて原子力発電が来る。火力発電はその次であり、燃料種別や発電効率により細かな順序が決まるが、おおまかには石炭火力、ガス火力と続き、最後に重油火力の順番となる。
卸電力市場で取引される訳ですね。
それはさておき、
九電ショックを見ると、今回、ドイツで感じたことがぴったりあてはまります。どういうことかと言うと、既存の電力会社の危機感です。再生エネの拡大は、先行するドイツで、化石燃料に頼る電力会社の死活問題に発展しています。
それは、どんなに巨大な企業であっても変わらないものです。ドイツを代表する4大発電会社はいずれも大きな赤字を抱え、その中の一つエーオンは化石燃料と原子力発電部門を切り離すことを昨年末に発表しました。また、間接的な話として、別の発電会社がドイツから撤退を検討していると聞きました。
そう考えると、日本の電力会社の動きも良く分かります。企業ですから、彼らも生き残りに不安を感じ始めているのです。必死の抵抗が九電ショックとして表出したとも言えるでしょう。
再エネの買い取りが増えれば、自分たちが発電して販売する余地が少なくなる訳ですからね。 前門の電力販売量減少、後門の再エネ増大で、既存電力会社の危機感はものすごいものでしょう。 「再エネが増えると原発を動かす余地がなくなる」とかちっぽけな問題ではなく、存続していけるかどうかの話ですから。