削減できる排出量の計算で用いる原単位(単位発電量当たりの二酸化炭素排出量)として、火力平均(火力発電の平均値)を用いるか、あるいは全電源平均(全電源の平均値)を用いるか。いずれを採用するかで、解は全く異なる。例えば、環境性能を競い合う、ガス会社のコージェネシステムと、電力会社のヒートポンプ給湯器という、両者がそれぞれに扱う製品について見た場合、仮に火力平均を採用すればコージェネシステムに有利となり、電力会社にとっては面白くない。
この試算条件については、火力平均の採用を主張するガス業界と、全電源平均を採用する電力業界とが対立し、どちらも一歩も譲らないでいた。両者の言い分ともにもっともであり、“神学論争”とまで呼ばれ、誰も判断を下せないままに棚上げされていたような状況であった。
熱の有効活用を推進するためには、二酸化炭素の削減効果を正当に評価する指標が必要となる。よって、政府主導の下で議論を進める中で、コージェネシステムの導入によって得られる省エネや、二酸化炭素の排出量削減効果を試算する際には、火力平均を用いるべきではないかという方向にまとまりつつあった。
エコキュートが本当に環境に良いかどうかを紐解くと、やはり火力平均が実態に即しているという気がしますね。
で、震災を受けてどうなったのかというと、
そして、本年1月、総合資源エネルギー調査会総合部会の下に、「天然ガスシフト基盤整備専門委員会」が設置され、天然ガスシフトに関する議論が再開した。
震災以前から、長きにわたって検討を続けてきた積み上げがあるにもかかわらず、委員会では激しい論争が交わされた。ガス協会に便宜を図るための検討委員会ではないのかと、電気事業連合会や石油連盟からは、昔のままの論調で猛反発があった。
この電力 vs ガス vs 石油の対立構造って、なんだか銀行 vs 証券 vs 保険とよく似てますね。
素人からすれば、一緒にやればいいじゃん?と思うんですが。
こうした中で議論を重ね、ようやく6月に報告書がまとまった。天然ガスシフトを実現するためのインフラ整備について課題を明示し、コスト負担を含めた官民の役割分担などが整理された。
これまで各事業者が、ガス需要の高い地域を中心に整備してきたために、天然ガスパイプラインは分断状態となっており、LNG基地も点在しているような状況にある。これを全体最適化させる方向で、国が整備基本方針を策定し、グランドデザインを示した上で、広域なパイプラインネットワークを構築していくことを目指す。(中略)
広域なパイプラインネットワークが構築されるということは、各ガス事業者が管轄を超えて、その沿線の需要を獲得しにいけるということを意味する。現在、全国に200以上ものガス会社が存在するが、総売り上げの9割程度が上位7社によって占められているという。つまり、小規模のガス会社が無数にある。今後は、こうした地元の小規模なガス会社が、大都市の大手ガス会社とうまくアライアンスを組みながら、事業を展開していくことが重要になるであろう。
そしたら都市ガス事業者ごとの料金格差も少なくなるかな?
民間主体でやるとしても、補助金は出した方が政府としても関与しやすいでしょう。
バラマキ政策にお金を使うよりも、スマートグリッドやパイプラインなど「国の根幹」に関わるインフラ構築に使ってほしいですね。
家庭においても、天然ガスを利用した燃料電池などのコージェネシステムが導入され、併せて屋根に太陽光発電システムも設置されれば、ガスと電気、熱の有効利用を総合的に促すシステムの構築が進む。その結果、より多くの余剰電力を生み出せるようになるので、電力小売りが自由化されれば、その売電量の増加による経済効果は一気に膨らむ。
家庭部門では、これまでオール電化に対する優遇措置がとられ、その導入が一気に進んだ経緯がある。安価な夜間電力を最大限に活用することで、電気料金を低減できるメリットもあったが、ガスが閉栓され、その供給が完全に遮断される事態も招いてしまった。
天然ガスシフトは、コージェネや自然エネルギーなど分散型電源のメリットを最大限に生かせる環境をもたらす。そして、電力システム改革を加速させ、新たな市場の創成や、新しい価値を提供するビジネスの創出を、強力に推し進める役割を担うのである。
これからは分譲マンションでも、1棟あるいはエリアで大規模コジェネを備えるものが出てきそうですし、新規分譲の宅地でも可能かもしれません。