「車体編」の予定はありません。
今回もmotopubのパーツカタログから見ていきます。
JA44(K88)のヘッドカバー(#1)はフィン付になりました。 デザインのためか、冷却性能確保のためかは不明です。
新しいクロスカブ(JA45)だとエンジンむき出しになるので、デザイン性が理由かな?
こちらはJA10(KZV)。 CZ-i 110(KWB)やWave110i(KWW)とほぼ共通です。
ガスケット(#2)やボルト(#3)が同じなので、JA44のヘッドカバーをJA10やJA07に流用することも可能かもしれません。
JA44のシリンダーヘッド(#1)もフィン付きになりました。 ヘッドガスケット(#4)も型番が変わっています。
O2センサー(#9)がケーブル直付けなのは最近のトレンドですね。 コストダウンかな?
JA10の方はインシュレーター(#5)が付く部分の高さが低いように見えます。 インシュレーター自体はJA44もJA10も同じです。
シリンダー(#1)も側面の冷却フィンが増えました。 そのぶん部品価格が上がっていますが。
往年のビッグフィンヘッドを連想しますね。
JA10のシリンダー(#1)はツルンとしています。 掃除がラクだし水冷エンジンみたいだし(笑)、これはこれでいいと思うんですけどね。
カムシャフト(#2)が変更になっている以外は変わらず。 バルブスプリングはダブルです。
ちなみにJA10のカムシャフト(#2)はKZV-J01で、カムスプロケットの取付方法が11M Wave110iと同じです。
JA07と09,10M Wave110iはKWW-740です。
カムチェーン廻りはけっこう部品が変わっています。 テンショナーアーム(#3)、プッシュロッドヘッド(#8)の型番が変わってますね。 ガイドローラーA(#9)が大きくなっているように見えます。
新設されたカムチェーンガイド(#11)はともかく、ガイドローラーB(#12)とボルト(#13)には個人的に強い衝撃を受けました。
プッシュロッドのヘッド(#8)なんて、エコノパワーの12Vカブ以来変わってなかったんじゃないかな? 何が変わったのか興味深いですね!
ガイドローラーB(#11)がオイルポンプの駆動軸(#12)を回すのも、50ccから110ccまでのカブに共通する基本構造でした。 数少ない例外を除いては。
ではJA44はオイルポンプをどうやって駆動しているのか? それはクランクシャフトからドリブンギヤ(#5)を介して直接駆動しているのです。
Wave125iなど125cc系エンジンではおなじみですね。 でも110ccまでのエンジンではあまり例がありません。
先ほどの「数少ない例外」とは、Wave110(とマニュアルクラッチのNICE110)です。 「i」が付かない昔のWave110ですね。 ジョルカブに支那エンジン積んで遊んでいたのは、もう10年以上前になるんですね。 懐かしいな。
JA10の方にはオイルストレーナー(#5)がありますが、JA44にはありません。
クランクシャフトのR側ベアリングの外側にオイルポンプのドライブギヤ(#6)がノックピン(#9)で固定されます。 ベアリングはC125のような「高精度タイプ」ではないようです。
ピストン(#3)とリング(#2)もフリクションロス低減のために変更になっています。
Wave110ではC100EX(49.5mm)からクランクのストロークを拡大(55.5mm)するためにオイルポンプの駆動軸を取り払ったのですが、JA44のストロークはJA07から変わらず55.6mmです。 あえて駆動軸を取り払う必要性は感じられません。
推測ですが、オイルフィルターの追加などJA44で潤滑系統の強化がされていることを考えると、オイルポンプ駆動軸の支持穴(ベアリングもメタルも入ってない、アルミ材で直に駆動軸を支持している)が弱点と認識されてシャフトが廃止になったのではないかな?
自分のWave110iもオイルポンプ駆動軸の支持穴がすり減ってガバガバになりましたから(井上ボーリングでブッシュを入れて修理しました)。
JA10のベアリングはWave110iと同じです。
JA44のRクランクケースカバーは、何と言っても「まともな」オイルフィルターの新設が大きいです。
C125ではシフトスピンドルの支持にニードルベアリングが追加されていましたが、JA44にはありません。
オイルレベルゲージ(#8)が挿しやすい形状になっています。
でもその他の部品はあまり変わってないので、もしかしたらJA44のRクランクケースカバーをJA10やJA07に移植することも可能かな?
と一瞬思いましたが、ガスケット(#3)にオイル通路がもう一つ増えているので、たぶん移植はムリだと思います。
Rクランクケースのドレンキャップ(#9)のところにストレーナー(#5)が設置されています。 今までのストレーナーだとRクランクケースカバーを開けないと交換できなかったので、整備性は向上するのでしょう。
Lクランクケースでは、オイルストッパープレート(#3)にガスケット(#4)が追加されています。
久しぶりにエンジンを掛けたときにカムチェーンの音が煩いことがありますが、あれはプッシュロッドのチャンバーからオイルが抜けるからじゃないかと思っています。
JA44で追加されたガスケットは、チャンバーからのオイル抜けを防ぐためかもしれませんね。
Lクランクケース(#2)のK09は、マレーシアやインドネシアなどの13M Wave110iです。
ワンウェイクラッチはウェイトセット(#3)が変わっているくらいです。
いや、クラッチダンパーラバー(#12)もJA10から変わってますね。
JA44でもうひとつ変化点がありました。 オイルポンプの駆動ギヤが増えた代わりに、カラー(#13)が無くなりました。
二次側クラッチもアウター(#2)とカラー(#4)が変わっているくらい。 C125のようなヘリカルギヤではなさそうです。
クラッチプレート関係はJA10から変わっていませんね。
クラッチスプリングが2種類あるのは何故でしょうね?
スターターギヤはドリブンギヤ(#1)が肉抜きされています。 ちょっとカッコイイかも(外から見えませんが)。
スターティングクラッチアウター(#3)のK79って何だろう?と調べたら、南米向けのXR190でした。
というかフライホイールとスターティングクラッチアウターって別部品なのね。 ここを分解したことはなかったわ。
フライホイール(#1)とステーターコイル(#2)が変わっています。
見た目では分かりませんが、JA10から点火タイミングや発電能力が変更になっている可能性があります。
スターターモーター(#1)はJA10と変わっていません。
ところでWave110i(上図)だとスターターモーターのブラシ(#4)だけでも発注できるんですが、カブはモーターASSYで交換なのかな?
タイで売ってるスーパーカブ110もパーツカタログを見たらASSY交換のようでした。
トランスミッションでは、メイン(#1)とカウンターシャフト(#2)が変わってますね。
意外にもギヤについてはJA10からの流用のようです。 歯車でのギヤ抜け対策はもう手を尽くしたということでしょうか?
JA10でもメインシャフト(#1)と、メインの2ndギヤ(#5)と4thギヤ(#9)に設変が入ってますね。
自分のWave110iにはJA07用のギヤ抜け対策キットを組み込んでいますが、ほぼ満足しています。 減速中のダウンシフトをあまり行わないというのもありますが。
シフトドラム(#4)にはベアリング(#18)が追加されています。
ストッパープレート(#5)はJA10と同じです。
シフトドラムのフリクション低減が狙いですが、その目的もギヤ抜け対策だろうと思います。
キックギヤはKWBなんですね。
JA10にはKWW-740という部品があるんですが、何でKWBに戻ったんだろう? 単に調達の問題?
以上、JA44における変化点を駆け足で見てきました。
エンジン号機はJA10Eで変わっていませんが、かなり細かいところまで手を入れて(骨格は同じでも)新エンジンと言っても過言ではないように感じました。
実はタイやマレーシアで販売されているスーパーカブ110(K76)のエンジンは、従来のWave110iと共通のままです。 オイルポンプの駆動方法や、オイルフィルター/ストレーナー、シフトドラムのベアリングなども変わっていません。
シリンダーヘッドカバーやシリンダーの側面もフィンがなくてのっぺりとしています。
つまり日本のスーパーカブ110は、日本のうるさい顧客(笑)のために特別な作り込みを行ったエンジンを載せているのです。
使用環境や使われ方は東南アジア諸国の方が遥かに過酷だと思いますが、日本のユーザーの声を聞いて対策を施したんでしょうね。
今後、これらの対策が全世界の110ccエンジンに水平展開されていくのかは、正直よく分かりません。 部品の互換性が無くなったりコストアップする要因になるので、もしかしたら日本と海外で枝分かれして日本のカブ用エンジンがガラパゴス化することになるのかもしれません。