四国ツーリングの検証

※この記事は 2025年 3月16日に書いています

2021年に書いた「ベスト&ワーストツーリング」という記事で、堂々のワーストワンに選ばれた「四国ツーリング」。
なぜあのようなツーリングになってしまったのか、もう少し掘り下げて今後の教訓としたい。

◇ 問題点はなにか

「ベスト&ワーストツーリング」の記事では以下のように指摘している。

ワースト1になった四国ツーリングは、もう寒い時期(9月末)なのに貧弱装備で真夜中の木曽路走行、徹夜でも時間通りに着けない無謀なルート設定で友人Hとの待ち合わせ時間に大幅に遅れる、キャンプ場の事前調査が不十分で夜中に香川を彷徨う(高知では風呂に入れず、奈良でもキャンプ場ではない?ところで野営)、目的地だった別子銅山は大雨で見学を断念、など、悪いところが全部出たようなツーリングだった。

つまり、

1.不適切なルート設定
2.待ち合わせに大幅に遅れた
3.キャンプ場の事前調査が不十分だった
4.天気予報を無視して計画を立てた

の 4点だ。


◇ 2011年当時の状況

個々の問題点について原因を探っていく前に、当時の状況についておさらいしておきたい。

ー 日程について

3/11に起きた東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故の影響で、電力需給のバランスが崩れてしまい、大口需要家は輪番停電を受け入れた。
それにより変則的な勤務カレンダーとなり、木~日までの 4連休が何度か発生した。
9/29(木)~10/2(日)はその最後の 4連休だった。

ー 機材について

バイクは 1月に買ったばかりの Wave110i。
2007年夏にトランザルプの調子が悪くなってから行ってなかったが、2011年の GWからツーリングに復帰した。

8月連休の「北海道ツーリング」の反省で、9/25(日)にガラケーからスマホに機種変したばかりだった。
当時はまだ 3G(CDMA2000)で、ちょっと山の中に入るとすぐに auは圏外となった。

充電用のシガーソケットは eTrexへの給電があったので 4月にバイクに取り付けてあったが、出発当日に充電用の microUSBケーブルを買っていることでも分かるようにまったくの準備不足で、アプリも含めて使いこなしていたとは言い難い。
バイクにスマホを取り付けるホルダを着けたのは 2012年の GW前だった(そのホルダはツーリング中に脱落して行方不明になった)。
走行中に GoogleMapsの画面を見ながら走ることはできなかったので、eTrexの地図を頼りに走っていた。

ー 自分自身について

当時の年齢は 44歳。 すでに立派な中年だったが、今の自分(58歳)から見ればまだ気力も体力もそれほど落ちてはいなかった。

2011年は以下の 6本のキャンプツーリングに行っている。

5/2~5   新潟・長野ツーリング(2泊)
6/16~18  鳥海山ツーリング(2泊)
7/14~15  御嶽山ツーリング(1泊)
8/12~19  北海道ツーリング(5泊)
9/8~9   高ボッチ高原ツーリング(1泊)
9/28~10/2 四国ツーリング(3泊)

このなかで愛知以西に行ったツーリングは「四国ツーリング」のみだ。

愛知以西に行ったのは 2007年以前まで遡っても 2007年に友人Hと行った「紀伊半島・四国ツーリング」や 2006年の「北部九州ツーリング」があるが、トランザルプで高速道を走っているので参考にはならない。
2002年の「第一回西日本トランザルプ・ミーティング in 戸河内」は夜行だが、これも中央道経由だった。

静岡までのツーリングを含めても 2006年の「R152ツーリング」(友人Hと御殿場で待ち合わせ)や「くのわき親水公園キャンプ」(鳴沢から興津に抜けた)や 2002年の「初キャンプツーリング」くらいか。
2000年夏に下関の実家まで往復自走したが、あのときも亀山までは高速道で行ったと記憶している。
1993年GWには滋賀県までツーリングに行っているが、往路は中央道経由だった。

「一般道を使って東海道方面へ行ったツーリング」という括りでは、1988年、89年に浜松に住んでいた同期のところに遊びに行くのに、友人Hと R1(箱根新道経由)で金曜日の仕事終わりに夜通し走ったことまで遡る必要がある。
つまり原付二種に乗って下道(特に東海道経由)使って愛知以西へツーリングに行く経験値が圧倒的に不足していた。

ー 友人Hについて

当時は CBX250Sに乗っていた。 「北海道ツーリング」でセルモーター不調で始動困難になったが、その後ブラシを交換して復調している。


◇ 目的地設定までの経緯

過去のメールを紐解いてみる。 まず 9/17(土)に友人Hへ 4連休のツーリングについて打診している。

Sent: Saturday, September 17, 2011 12:53 PM
Subject: 4連休の予定
 
◯◯どの
 
ニュータイヤの感触はどうだった? 皮むき出来たのかな?
そろそろ4連休の予定について考えなければならないんだけど、秋雨前線が下りてくるんじゃないかと心配なんだよね。
天気が悪いんじゃ、行く気が萎えるし。
 
個人的なプランとしては、
A. 東北リベンジ
B. 四国うどん&かつお
を考えています。
出発は、9/28の夜21時の予定。 プランAなら盛岡まで、プランBなら岡山の宇野まで一気に行きます。

プランAは、盛岡のあとは酸ヶ湯、男鹿と泊まって帰ります。
プランBは、高知まで行ってから香川に戻り、フェリーで和歌山に渡ったあと奈良に泊まって帰ります。
香川にいる知り合い(陸自勤務)が来年3月にはまた転勤らしいので、どちらも天候が良ければプランBになると思います。

天気が悪ければ、関東周辺で1~2泊のキャンプという可能性もあります。
◯◯君は連休をフルには使えないんだっけ?

プランAというのは「北海道ツーリング」で岩手県でキャンプできなかったのが心残りだったから。
夜行で盛岡までというのも「北海道ツーリング」で実績があるし、翌 2012年の「東北リベンジツーリング」でも実行しているので無謀というわけではない。

プランBは高知のひろめ市場で明神水産のかつおのたたきを食べたいという動機だが、「岡山の宇野まで」とあるように初日は岡山でキャンプするつもりだった。
このときはまだ岡山県、香川県、奈良県で宿泊をしたことがなかったので、経県値を上げようと考えたのだ。

9/24(土)に友人Hからメールが来ている。

2011/09/24 22:15
件名: 経県値
 
どうもです。
 
自分もトライしてみました。
生涯値ですが、こんな感じになりました。
 
やはり、キャンプ・ツーリング先としては白、黄色の県が目標ですね。
四連休は、初日の用事をパスできましたので、28日のミッドナイト・ランから同行できます。
 
関東の天気が良ければ、やはり10月1日の夕方には東京に着いていなければなりません。


ここで友人Hは「10月1日の夕方には東京着」が必須と明言している。 「3日間しか使えない」というわけだ。

自分は 2011年 6月に次のような記事を書いている。

三泊四日でどこ行こう? - Still Laughin'

経県値といえば、近畿地方にも泊まったことがない県があります。 奈良県と岡山県(これは中国地方か)です。 あ、あと香川県もだ。
 
実は五月連休で遠征に行こうかと考えていました。 初日に奈良県の月ヶ瀬付近、二日目に岡山県玉野市あたりのキャンプ場に泊まって、宇高国道フェリーで高松に入ってうどん喰って...とか。
ほんとは高知に行って鰹が食べたいのですが、ちょっと厳しいだろうなぁ。

1泊や 2泊では行けないところ、2007年以来行っていない四国に行きたいという気持ちがあったのだと思う。
最後の 4連休だし、たとえ天気が悪くてもまだギリギリ寒くなる前のこの機会を逃したくなかったのだと思う。

この時点では 3日めに四国上陸という「3オン」で考えている。 それだと 3泊4日では埼玉県まで帰ってこれないが?
いずれにせよ四国へ行くためには 3泊4日をフルに使ってツーリングする必要があるが、3日間しか使えない友人Hのスケジュールとは相容れない。

だが 9/27(火)に来た友人Hからのメールによると、彼も四国行きには意欲的だった。

2011/09/27 13:30
件名: 4連休の予定
 
どうもです。
 
私は四国に賛成です。
経県値の観点から、香川県でぜひキャンプしたい。
住友別子銅山にも行ってみたいな。
淡路島にも寄ってみたい。
 
ところで、本州と四国を結ぶ橋は、どれも原付は走行禁止の様だけど、フェリーとか代替手段はあるのかな?
橋の通行料とフェリーの料金が同じくらいなら、フェリーを使うのも賛成。その方が面白い。
 
28日夜を走り通せば、29日中に香川に入り、キャンプできるね。
30日は住友別子銅山を見て淡路島経由で本州入り。
行けるとこまで行ってキャンプし、1日は朝早くから走れば夜には川崎へ着くでしょう。
 
1日の関東の天気が悪くて花火大会が中止なら、東海のどこかでもう一泊キャンプかな。
四国以外なら福井・石川でキャンプ、天気が悪くて関東限定なら茨城でキャンプ、が希望です。
如何でしょう?

この計画だと 9/29(木)にどこかで落ち合ってキャンプして、9/30(金)に別子銅山を見たあとは別行動になる。 3泊4日で同行するのが 24Hもないなら、それはもう「一緒にツーリング」とは言い難い。
自分の第一の失敗は「スケジュールが合わないのでジョインするのはやめよう」と言わなかったことだろう。
だが 2007年にうどん屋巡りをした再現を期待していたのかもしれない。


◇ ルート設定は適切だったか?

出発当日の昼前に友人Hからメールが来た。

Sent: Wednesday, September 28, 2011 11:16 AM
Subject: とりあえず
 
旅支度をして出社しています。今日は定時退社日なので、多分すぐに出発できると思います。
どこに行くか、どこで落ち合うか決めましょう。

今日出発するのに、目的地もランデブーポイントもまだ決まってないとかあり得ないっ!?
これが第二の失敗。
 
昼休みに返事を書いた。

2011/09/28 12:49
件名: マジすか
 
◯◯塾は午前中で終わりました。
4ヶ月大変でしたが面白かったです。

自分は帰って犬の散歩して、飯喰って風呂入ってから出るので、早くても21時の出発になります。
長距離の夜間走行でもあるし、現地集合にした方がいいんじゃないかと思います。
仮眠を取りたいタイミングも違うだろうし。
 
一泊目を香川として、フェリーで行くのか高速(◯◯君だけですが)で渡るのか。
フェリーで行くなら、フェリー乗り場で待ち合わせるのが確実かなと思います。 その場合、和歌山か宇野か。
それとも明日の朝10時くらいに、名古屋から大阪の間でランデブーポイントを設定するか。
 
個人的には諏訪湖から木曽路(R19)を下っていくつもり。
和歌山へ行くなら伊良湖から鳥羽に渡る。 その先が長いんだけどね。
岡山へ行くなら土岐市からR21で琵琶湖へ出て、琵琶湖大橋を渡って京都の北側を迂回して岡山へ入ろうかと。
 
◯◯君のプランは?

和歌山(南海フェリー)経由か、宇野(宇高国道フェリー)経由かも決まっていないなんて、それこそ「マジすか」だがそれは一旦置く。

6月の記事の「3オン」は刻みすぎとしても、このメールでは 1泊めが香川県になっている。
なぜこうなったのか不明だが、友人Hのスケジュールとの妥協点として「1オン」に変更したのだろう。
後年の 2017年に自分はこんな記事を書いている。

四国は北海道と同じくらい遠い - Still Laughin'

埼玉から徳島県・香川県までの距離は青森県に行くのと同程度ですが、下道だとフェリーを使わなければならないので、実質的に函館上陸と同じくらいの難易度があります。 フェリーの航路、本数が多いのが救いですが。

この記事では和歌山ー徳島の南海フェリーを使う前提になっている。 宇土ー高松の宇高国道フェリーだと遠回りになって不利になるだろう。
今から思えば「2オン」で四国上陸というのが現実的なスケジュールだと思う。

メールにもあるが、出発当日まで職場で研修を受ける予定があって、有休を取ることはできなかった。 当時はまだ半日有休の制度もなく、フレックスタイム制でもなかったので定時上がりだ(友人Hも同様)。
義務である犬の散歩は仕方ないにしても、飯と風呂は省いて早く出発すべきだったのではないかと思うが、長距離ツーリングに向けてコンディションを整えたかったのだろう。 実際、その後 10/1(土)まで風呂には入れなかった。

当時はまだマイマップが使えなかった(使うようになったのは 2015年以降)ので、詳細なルート検討が行えなかった。 そもそも GoogleMaps自体も 2012年のGWから使い始めたくらいである。

木曽路ルートで行くことにしたのは、前述のように東海道ルートに馴染みがなかったからだ。
2011年に御嶽山ツーリングや高ボッチ高原ツーリングで R20や R19を走っていたことも大きかった。
アプローチは異なる(R254内山峠~R141和田峠)が、今でも木曽路ルートで近畿方面へ行くこともある。
そう考えると木曽路ルートが決定的に間違いだったとは言えないが、気温が下がった真夜中に走ることを考慮すると明るくて走りやすい、コンビニやマックなど休憩ポイントも多い東海道ルートの方が集中力も保ちやすくてベターだったと思う。 

R1には自動車専用道路のバイパス(箱根新道、静清バイパス、藤枝バイパス、浜名バイパス)が多いというのも不安材料だった。
京阪神の都市部を避けて琵琶湖から姫路まで山の中を走ったのもロスだったかもしれないが、初めて尼崎から姫路までの R2を走ったのが 2024年の GWだったといえば、その苦手意識が分かると思う。


◇ 待ち合わせ場所への到着が遅れた原因は?

ツーリング中の友人Hとのメールのやりとりは、当時の auのキャリアメールで行っていたようで、今は記録が残っていない。

四国ツーリング(初日) - Still Laughin'

ちなみに友人Hは、旅支度をしてから出社したそうで(彼もバイク通勤)、19:40にそろそろ出発するとメールが入っていた。
彼とは岡山県宇野のフェリーターミナルで落ち合う予定。

とあるから、さすがに出発前に待ち合わせ場所は決めたようだ。
ただ待ち合わせ時間については決めていない。 いつ到着できるのか予測できなかったからだ。

時刻友人H自分
19:40自宅(川崎)を出発
21:51 自宅(日高)を出発
01:41マックでコーヒー休憩R20富士見峠通過
02:19 塩尻のマックで休憩(40分)
03:07蒲郡で休憩塩尻のR19セルフで給油
04:33名古屋でリポD飲むR19道の駅大桑で仮眠 1時間
06:00道の駅あいの土山(甲賀市)で休憩R19で岐阜県に入る
07:44高槻で通勤渋滞にはまる可児市明智駅付近のR21を走行中
09:38神戸で朝マックR21で大垣市を通過
13:26岡山市着。墓参りへ亀岡市でR372に入る
15:29福山での墓参り完了姫路でR372から県道397号へ
17:58宇野港に到着岡山ブルーライン君津IC通過
18:52 宇野港に到着

友人Hが宇野港へ直行すれば 14時には着いていたことだろう。 自分が着いたのは 19時だったので 5時間遅れたことになる。
出発自体が 2時間遅れだったので、行程での遅れは 3時間。 出発地の差が 1時間あると考えると、ロスは 2時間というところだろうか?
仮眠を取って道の駅大桑を出発したのが 05:46。 GoogleMapsのナビによるとそこから宇野港までは 497kmで、所要時間は10~12時間らしいので、16時~18時に到着したことになる。

2018年の「小豆島・四国ツーリング」では半日有休を取って 18:09に自宅を出発し、東海道ルートを経由して 11:12に姫路港に着いている。 そのペースなら 14時に宇野港に着けたかもしれない。
つまり友人Hより 1時間半早く出発してようやく宇野港に同着できたことになる。 出発が2時間遅れた時点で少なくとも 3時間半の遅れは決定的だった。
それも静岡で R1に入るまでの効率の良いルートをいくつも研究し、R23名豊道路の使い方や、R25名阪国道を通れないハンデを補うなど 7年分の経験値をフル活用しての話だ。
2011年の経験不足の自分が東海道ルートを走ったとすれば、1時間くらいロスして木曽路ルートとあまり変わらない到着時間になったかもしれない。


一方で友人Hのペースの速さも予想以上だった。
もちろん 250ccだったので自動車専用道路のバイパスを走れたというのもあるが、後年 125ccに乗り換えてからも何度もペースの速さに驚かされた。
アベレージが速いのはもちろん、信号待ちではすり抜けて先頭から発進するなど、高い強度の走行を持続できる。
対する自分はよほど酷い渋滞でなければすり抜けはしないので、基本的にクルマと同じペースだ。 ペースが 5%違ったとすると、 20時間走れば到着時間は 1時間違ってくる。
出発時間が早かったことも含めて「3日間しか使えない」という影響があったのだろう。


前述のように待ち合わせ時間は決めていなかったので、「到着が遅れた」が「時間に遅れた」とは思っていない。
出発が遅れたのも「飲み会で飲みすぎて朝寝坊して遅れた」などではなく、 21時になるというのも予め伝達済みだった。
ルート選択ミスによる回り道のロスはあったが、どこかに寄り道してロスしたわけではなく最小限の休憩でほぼ走りっぱなしだった。
走り出してからリカバリーできることはほとんどなく、全ては出発前に決まっていた。
自分からは友人Hが「先走り」しているように見えた。

自分が犯した最も大きな間違いは「待ち合わせ場所を宇野港にしたこと」だと思う。
すれ違いを防ぐために、ふたりとも必ず通過する場所で待ち合わせることにしたのだが、先着する友人Hにキャンプ場で設営して待っていてもらうべきだった。
そうすれば後述する「深夜の迷走」も起きなかっただろう。
このツーリング以降はキャンプ場での待ち合わせを徹底している。


◇ キャンプ場の事前調査が不十分だった

これは香川での「深夜の迷走」だけでなく、高知や奈良でのキャンプも含めての話。
2011年当時はまだツーリングマップルに頼るところが多く、はちのすを使い始めたくらい。


◇ 天気予報を無視して計画を立てた

これも全くその通りで、反論の余地はない。
9/26(月)に書いた「4連休にどこ行こう?」という記事を読むと、行き先を決めあぐねているのが分かる。
これで「◯◯地方は天気が良い」とかなら「そっちへ行こう」となったのだろうが、週間天気予報では「今週末は全国的に天気が悪い」となっている。
あれから「雨が降ったらすべて台無し」と思い至ったので、今ならツーリングは中止しているだろう。