技術企業の本分

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ITmedia D LifeStyle:パナソニックが語る“フォーマット競争後”のBD戦略

「例えばDVDを振り返ると、その初期は6ミリ貼り合わせなど、本当にできるのか? といった疑問もありました。実際、2層DVD-ROMは現実には製造できないと言われていたんです。しかしその後、次々に問題を解決して現在に至っています。では、DVDはダメな規格だったんでしょうか? もちろん、違いますよね」
 
「技術的なハードルを克服してこその技術企業であり、製造メーカーの本分だと思います。難しそうだからといって、最初から自分でハードルを下げては良いものはできません。無謀なチャレンジは良くありませんが、解決できる見込みがあるからこそ、BDを推進しました。この考え方は間違っていなかったと思います」

どこまでが無謀かはなかなか難しい問題です。 元々の設計が無理な構造だと、あとから色々とネガが出てきます。 自然の摂理に逆らうような設計は、素性が悪いんですね。

でも技術開発を突き詰めていくと、必ず二律背反する課題が出てきます。 そこで「無理を通せば道理が引っ込む」とか「二兎を追う者、一兎も得ず」と諦めたり日和ったりするか、両立させるためにブレークスルーする技術を開発するのか。

東芝は、1層あたり15GBを超える記録容量と、ROM複製やドライブ製造の低コスト化は両立しないと考えました。 そこで、そこそこの容量とそこそこのコストで作れるHD DVDを作りました。
記憶容量は圧縮フォーマット次第でどうとでもなるし、レコーダーとしてはこれからはHDDが主流で、光ディスクに残す人は少数派だと。

HD DVDが妥協の産物なのか、ベストバランスだったのかは、いまだによく分かりません。
でも個人的にはやっぱり、「志が低い」という印象が最後まで付いてまわりましたね。 東芝は日本を代表する総合電機メーカーで、エアコンの省エネ化など数々の二律背反する課題を技術で克服してきた企業なのに。 そこが寂しいなと思いました。


フォーマット戦争は、結局コンテンツの配給元で決まってしまったような感がありますが、量産効果によるコストダウンも大きかったように思います。
仮にROM複製やドライブ製造のコストが倍違っても、BDがHD DVDより倍以上売れれば、製造コストの差なんて無視できるレベルになります。 HD DVDが桁が違うくらい低コストであるか、勢力がBDと均等であれば、もう少し勝負になったのでしょうが。

東芝のHD DVDプレーヤーは北米で低価格で販売されていましたが、それはインセンティブによるもので製造原価は決して安くなかったようです。
ROM複製コストにしても、同じタイトルでBD版よりHD DVD版が安いなら、消費者もHD DVDを選んだかもしれません。 でも1枚あたり$1違わない程度では、差をつけても選択する理由にはなりません。 東芝は「コンテンツの配給元にとって、複製コストの差は大きい」と言っていましたが、そんなの消費者には関係ない話です。


ビデオ戦争として、ベータvsVHSや、レーザーディスクvsVHDなどがよく引き合いに出されます。
アライアンスの勝利としてはベータvsVHS、技術の勝利としてはレーザーディスクvsVHD(ビデオじゃないけどMDvsDCCもそうかも)なんでしょうが、最大の勝因はどれだけ消費者の方を向いていたかじゃないかと思います。
消費者を見切ったりコンテンツの配給元の方を向いた時点で、HD DVDの命運は決まっていたのかもしれません。