ワーナーの「BD一本化」の陰にサブプライム問題

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2008 International CES:Warnerの「BD一本化」決定、景気後退が後押し - ITmedia News

「われわれは概して不況に強かった」とWarner Bros. Entertainment Groupのケビン・ツジハラ社長はラスベガスで開催の年次展示会CESでの取材で語った。
 
「だが、第4四半期にはガソリンの値上がりが売り上げに影響し始めた。当社の製品は衝動買いされるものと考えられているため、影響が出始めている」(同氏)
 
ツジハラ氏は、Warner Bros.は景気後退前に、DVD規格戦争をめぐる消費者と小売業者の混乱を迅速に解消する必要があったと語った。

フォーマット戦争が続いた方が競争が促進されるという考え方もありますが、景気後退でその時間的猶予がなくなってきたということなんでしょうね。
消費者の財布のヒモが堅くなる前に普及させなければ、ずっと離陸しないままということになりかねません。

東芝がしばしば公言してきたように、HD DVDが「コストと速さの勝負」を実践できていれば、また違った展開に持ち込めたのかもしれませんが。 本当に2007年に北米で180万台出荷できていればね。
そういう意味では、東芝はBDに負けたのではなく、時間との競争に負けた「タイムオーバー」ということなのかもしれません。


【CES】なぜWarner社はBlu-ray支持に回ったのか,2007年の次世代DVD戦争を総括する - デジタル家電 - Tech-On!

だが,説明したとおりBlu-ray DiscとHD DVDの勢力は拮抗しており,当分は決着がつきそうにない。Warner社は,自らがどう動けば規格が一本化できるかを考えたに違いない。答えは簡単だ。Blu-ray Disc陣営に属する映画会社の多くがHD DVDになびかない以上,自らがBlu-ray Disc陣営に飛び込んで流れを変えるしかない。
 
実際Warner社は,HD DVD陣営に最も大きなダメージを与えるタイミングでBlu-ray Disc陣営の支持を表明した。すなわち, 2008 International CESの直前での発表である。HD DVD規格の推進団体であるHD DVD Promotion Groupは,CESで予定していた記者会見を中止せざるを得なくなり,そのことがHD DVD陣営の動揺ぶりを世間に知らしめることになった。

意図的に「HD DVD陣営に最も大きなダメージを与えるタイミング」を取ったというのは、ちょっと穿ち過ぎのような気がします。 もちろん、自らの選択がどのような影響を与えるのか、ワーナーは十分分かってのことですが。
通常のDVDプレーヤーをも下回る価格でプレーヤーを売り、無料クーポンでソフトの装着率を引き上げても、BDに届かないというHD DVDの限界を見極めたタイミングが、昨年の年末商戦だったということなのでは?


西田宗千佳のRandomTracking 「ワーナー」と「薄型」で踊るCES - マーケット状況と新技術から見る2008年の動向

では、ワーナーはなぜBDを選択したのか? 松下電器・パナソニックハリウッド研究所(PHL)所長の露崎英介氏は次のように語る。「とにかく、各社ががむしゃらにがんばって、年末商戦でたくさんのプレーヤーとソフトを売った結果でしょう。通年、すべての月でHD DVDに対し2:1と勝利し続けたことが大きな要因です」。
 
ソフトの販売数は、昨年8月から11月まで、BDが月平均50万枚。HD DVDは、おおよそ30万枚が販売された。ところが、この勢いは12月に入って一気に加速、BDは倍の月100万枚を超える結果となった。そしてさらに、こう続ける。「次世代ディスクについては、スタジオ側がとにかく熱心。DVDの時には、ハードメーカーのリードに『ならやってみれば』という感じでついてきた印象ですが、今回は、販売店やバイヤーに、スタジオ側も積極的な働きかけを行なっています。それだけ、DVDビジネスの収益性が鈍り、次を模索する流れが強かったということでしょう」。
 
(中 略)
 
こうなった以上、変な綱引きは止めて一刻も早く実ビジネスを始めたい。そんな意識がワーナーに「チェックメイト」をかけさせる理由になった、と考えるのが良さそうだ。BDAブースの賑わいを見ると、「決断によって消費者の目をBDに向けさせる」という作戦は成功しているように感じられる。

このあたりの分析が一番的を得ているような気がします。


過去にもVHDのように淘汰されたフォーマットはあります。 その多くはハード、ソフトとも新製品が出なくなり、徐々にフェードアウトしていきました。 そして消費者はそのレガシーを抱えていかなければならない訳です。
DVDの「プラス・マイナス戦争」や、次世代CD(DVD-AudioとSACD)の競争は、明確な決着はつきませんでした。 DVDの場合はコンボドライブの普及で(ユーザビリティーに混乱を残したまま)解決され、次世代CDはニーズが少なく普及には至りませんでした。

次世代DVDの場合、ほとんどのBDドライブがDVD(カバー層0.6mm)もサポートしているので、HD DVDをサポートすることは技術的に不可能ではないでしょう。 しかしBDにとってはコストアップ要因になるだけなので、サポートしないでしょうね。 将来、東芝が独自にHD DVDもサポートするBD製品を発売する可能性はあるかもしれません。

ITmedia D LifeStyle:ワーナー、BD選択の理由

取材を受けていただいたのは、ワーナーホームビデオ上席副社長でワールドワイドの高解像度メディアマーケティングを担当するドリンダ・マルチコリーナ氏。まず、ワーナーがBDのみを選ぶという判断を下すに至った理由を伺ったところ、以下の3つの要素すべてが理由になったと話した。
 
* ソフトウェアの売上は北米でBDが60%、英国で70%、日本では95%以上を占めた
* 再生可能なハードウェアの数は、北米でBDがHD DVDの4倍、日本では10倍に達した(PS3を含む)
* 北米において12月、BDプレーヤーの方が100ドル高いにもかかわらず、2倍の数が売れた
 
これらの情報をクリスマス商戦明けからまとめ、それを基に検討を行った結果、消費者が明確にBDを選んだという結果が出ているのだから、映画スタジオも1つのフォーマットを選ぶ時期だと判断した」という。1月3日には判断を下し、東芝やマイクロソフト、それにBD関係各社にも連絡を行い、4日にはニュースリリースを作成。夜になってニュースを発信した。

「データが物語っている」ということなんでしょう。