経済学とビッグスリー救済

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
  • ハッシュタグ:

やっぱりおかしいビッグスリー救済:NBonline(日経ビジネス オンライン)

部分均衡というのは、他の部分は変化しないと仮定して、変化した部分だけを見る考え方で、経済学ではできるだけ避けるべきだとされています。これに対して、他の部分への間接的な変化も考慮して全体としての影響を考えるのが一般均衡的な考え方です。ビッグスリーが破綻すると250万~300万人の雇用が失われるというのは、典型的な部分均衡の考え方なのです。
 
なぜなら、ビッグスリーが消えてしまうと、全米の47.7%分の需要がそっくり消え、それに関係する雇用もまたそっくり消えてしまうと仮定しているからです。まず、ビッグスリーが破綻したとしても、その生産がそっくり消えることはないでしょう。出直してある程度の生産を再開することは可能でしょうし、設備やブランドが他の企業に買収されるかもしれません。また、仮にビッグスリーの生産が完全になくなったとしても、その分の需要は他のメーカーの生産によって埋められるはずですから、雇用がそっくり消えてしまうということもあり得ない話です。

「雇用がそっくり消えてしまうということはあり得ない話」かもしれないけど、デトロイト・スリーへの需要が他メーカーにそっくり移るというのもあり得ません。 米国メーカーのクルマしか買わない・買えないという人も多いでしょうからね。

それに、デトロイト・スリー消滅で減った雇用が、外国メーカーの現地工場の雇用増で埋め合わせられるかと言えば、これまたNoです。

数の上でもプラスマイナスゼロにはなりませんし、デロトイトで失業した人に「あんたの代わりにインディアナで雇用が生まれたよ」と言われても、なんの慰めにもならないでしょう。
日本メーカーにとっても、UAW加入のデトロイト・スリーの労働者を雇うくらいなら、ズブの素人を雇った方が数段マシです。

需要や雇用は、経済学の数字の辻褄合わせほどには、流動性が高くありません。