急速充電 VS バッテリー交換 EVをめぐる暗闘

電気自動車の「十字軍」!? 三菱重工・米ベタープレイスが教えてくれた エコカー“オールジャパン”体制の大いなる課題|エコカー大戦争!|ダイヤモンド・オンライン

そして3人目。三菱重工業取締役副社長執行役員・福江一郎氏 「皆さん、こんにちは。さて、なぜ三菱重工? それは後に説明しますが…」と前置きをして、しばし祝辞が続いた。だがその直後、かなり「ドギツイ発言」が飛び出した。
 
「今回、(EVタクシーの)バッテリー交換式の実証試験を行ううえで、様々な障害があった。大手自動車メーカーは必ずしもバッテリー交換型を快しとは思っていない。これまで三菱重工とベタープレイスはいろいろな大手自動車メーカーにバッテリー交換型(に対応する量産型電気自動車)をつくってもらおうとしたが、難しかった。将来はバッテリー(パックとしての)標準化を進めて、リース事業を考えたい。また大容量の電力貯蔵としてスマートグリッドの重要な構成要素としても注目している。また来年早々、弊社バス(=三菱ふそうのバス)でも、都市バスとしてバッテリー交換型の実証試験を始める。今後は、三菱重工とベタープレイスが(電気自動車業界の)『十字軍』となって、バッテリー交換型の普及につとめたい」。
 
欧米メディアも多数詰め掛けたマスコミ向け発表会で、よくぞここまでズバっと言い切ったものだ。これはまさしく、東京電力が規格推進し日系大手自動車メーカーが同調している急速充電器の協議会「CHAdeMO」に対する公開挑戦状である。その後、筆者を含む経済メディア等数人との囲み取材時に同氏は「急速充電は蓄電池の寿命を短くするのが問題だ」と語り、バッテリー交換式推進派としての立場をさらに強調した。

身内の三菱自さえ説得できていない状況で、他のメーカーにお願いしたって通じるわけもないでしょう。

でもなんでここで三菱重が出てきたのでしょうか?

ここは、EV関連ビジネスの米ベンチャー企業、ベタープレイス社(本社カリフォルニア州パロアルト市)が「世界初のバッテリー交換式EVタクシープロジェクト」と称する実証試験のマスコミ公開の場である。運行は日本交通と協力し、車輌は3台の日産「デュアリス」電気自動車改造タクシー。「搭載するリチウムイオン二次電池は米A123システムズ社製だ。(中略)
 
IHIは2009年10月30日、米蓄電池ベンチャーのA123システムズ社(本社マサチューセッツ州ウォータータウン市)とリチウムイオン二次電池の事業についての業務提携を発表した。このA123 システムズ社については本連載でも、米EVベンチャーのフィスカーオートモーティブ「Karma」や中国・上汽集団「E1」への搭載などで度々紹介してきた。今後、スマートグリッドを念頭に、自動車、住宅、業務用などで、IHIと連動した幅広い事業展開が期待されている。(中略)
 
そして、本稿の主役である三菱重工は、「定置式を念頭とした」(三菱重工担当者)角型のリチウムイオン二次電池や、同電池を使用したハイブリッド・フォークリフトを販売している。
 
また同社は2009年6月3日、「エネルギー・環境事業統括戦略説明会」を開催している。そのなかで、同社既存の機鉄(化学プラント等)、冷熱(冷凍機等)、汎特(エンジン、ターボチャージャー、フォークリフト等)、船舶、原子力、原動機(発電技術)の各部門に「横串を指す」カタチで、エネルギー・環境事業統括戦略室を新設すると発表した。同社ウェブ上で公開された当該資料の後半には「地産地消型のスマートコミュニティ」と称し太陽光発電、陸上風車、洋上風車、電力貯蔵、エコハウス、水力発電、さらにEV(電気自動車、電気バス)と ”EV関連事業(電池交換)”というイメージ画が添付されていた。

A123とは競合関係にあるけれど、ベタープレースとは協力するということなんでしょうね。

EVタクシー発表時の囲み取材で福江副社長はここ数年の苦労を吐き出すかのように、一気に本音を披露した。
 
「日産も元々、バッテリー交換式で(リーフなどの新規電気自動車の開発を)進めてきたが、途中から方針を変更した」
 
「現在弊社は日産やルノーと(蓄電池関連の技術で)関係はない」。
 
「電池容量20kwh程度の電池パック(今回のEVタクシーは同17kwh)を規格標準化したい。電池のセルは、(今回のEVタクシーは米 A123システムズ社製だが)、弊社製を含めた規格標準化を進める。弊社が進める電気バスは今回公開している電池パック(に近いカタチで)複数搭載する計画だ」。
 
「自動車メーカー側は、電池パックの規格標準化によって、車側を(電池パックの形状や搭載方式に)合わせることを嫌がる」。
 
「このように実証して、バッテリー交換型の利便性をアピールすれば、(同形式の)普及は進むと思う。コストについても、スマートグリッド用の電力貯蔵として予備蓄電池を活用すれば、蓄電池ステーション全体のコストして安く出来る」。
 
「(北京ショーで発表のあったバッテリー交換型電気自動車の)北汽集団や奇瑞汽車(Chery)とは技術的に直接関係はないが、(彼らの事業方向性には)賛成だ」。
 
「(バッテリーの世界標準化のキーファクターは?との問いに)大きな生産量で最初に走った者が勝つ。現状ではリーフがスタンダード化の可能性があるが…」。
 
つまり三菱重工としては「いま、自ら走り出す」ことで、世界標準化というビジネスチャンスに賭ける作戦である。

個人的には急速充電もバッテリー交換も、根本的な解決にはならないと思うけどな。