人件費をカットし値下げ競争をするのは、苗を育てない農業のようなもの

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急接近:藻谷浩介さん このままでは財政破綻、内需拡大図れ - 毎日jp(毎日新聞)

日本経済低迷の原因をマクロ経済学上のデフレではなく、現役世代人口の減少による購買力不足と喝破したベストセラー新書「デフレの正体」(角川書店)。著者の藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役は「内需拡大へ若者の給料を増やすべきだ」と訴える。
 
--著書で日本経済の病根はマクロ的なデフレではなく、現役世代の減少を背景にした「ミクロ経済学上の値崩れ」と分析されました。
 
◆ 「90年代のバブル崩壊後、日本経済は長期低迷している」とよく言われるが、単純化し過ぎている。例えば、日本の輸出額は90年に41兆円だったが、07年には84兆円まで増加し、02~07年は「戦後最長の景気回復」を記録した。その後、世界的な不況に見舞われたが、10年の日本の輸出は67兆円と、バブル期の1・6倍の水準に回復している。注目すべきは、1996年度をピークに減少に転じた小売販売額が景気回復期も減少傾向を続けるなど、内需縮小が止まらないことだ。景気と連動しない形で内需が縮小しているのは、15歳から64歳までの生産年齢人口(現役世代)が減っているからだ。現役世代が減り、個人消費が減退した結果、車や家電などが供給過剰となり、値段が下がるミクロ経済学的な値崩れが起きている。(中略)
 
--問題認識が間違っているから、有効な対策が打てていないというわけですか?
 
◆(中略)年齢別人口の波への適応が必要な時に、国に景気対策ばかりを求めても、状況は改善しない。そればかりか、日本人の加齢で納税の主役の現役世代が減っていくことを考えれば、このままでは日本の財政は確実に破綻に向かうだろう。人口減少国が経済力を維持するには、(子育てやレジャーなどに消費意欲が旺盛な)現役世代の賃金を上げて、内需活性化を図るしかない。賃上げで1人当たりの購買力が高まれば、消費が増え、日本経済の縮小均衡に歯止めがかかる。そうなれば、企業は売り上げを維持でき、納税額も上がって、財政破綻も防げる。
 
--現役世代の賃金は上昇どころか、ベアなしやボーナス削減などで低下し続けています。
 
◆ 企業は、団塊世代の大量退職で人件費が浮いているはず。その分を若い世代の賃金引き上げに回すべきだ。新規雇用を絞り、浮いた人件費を商品の値下げ競争に回すような行動は、苗を育てない農業のようなもので、自分で自分の首を絞めるだけだ。最近は国内市場を見限って、急成長するアジアなどに収益を求める日本企業も多いが、中国を含めた各国も5~20年後には現役世代が減少に転じて、程度の差はあれ日本と同様の問題に直面する。結局、日本市場で食べられる企業しかアジアでも生き残れなくなるだろう。日本は伝統的に「若者が我慢して、高齢者に手厚くする」傾向が強いが、現役世代の所得が減少し続けては、社会保障制度も支えられなくなる。高齢化加速と現役世代の減少の衝撃が日本全体に及んでいるわけで、国や企業、国民は一致してその衝撃を和らげるように動くべきだ。

同じコストダウンでも、イノベーションによるものと人件費カットによるものがあります。
生産性向上の担保なしに、安易に人件費カットに走る会社が多いですからね。 自動車メーカーも例外ではありません。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
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