現代自の生産ラインが長い理由

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:
  • ハッシュタグ:

井上久男の「ある視点」(3):品質向上はトヨタが“反面教師”――“企業風土に見合った経営”を徹底する現代自動車 - @IT MONOist

現代自動車が好調な理由について、日本の報道ではよくドルなどに対してのウォン安による為替差益が挙げられているが、実はいま、ウォン高の傾向にある。2010年の連結決算の期間中、ドルに対して8%、ユーロに対しても14%のそれぞれウォン高となっている。それでも好業績を維持できたのは、車の骨格となるプラットホーム(車台)の共有化などコスト削減も同時に遂行したことによるものだ。(中略)
 
前述したように、現代自動車の快進撃の理由を、日本国内では、「為替」や「マーケティングの上手さ」ととらえる向きは多い。それに加えて大幅な値引き販売によるシェア獲得を理由に掲げるメディアもある。現代自動車製の車は「安かろう、悪かろう」というイメージが日本ではいまだに持たれている。確かに、日本では1980年代に北米で品質問題を起こし、一時的に撤退した印象がいまでも強い上、販売が伸びない日本市場からは撤退したため、プレゼンスが低いことも影響しているのだろう。
 
ただ筆者は、為替やマーケティング技術だけで現代自動車を見ていてはその成長の源泉はどこにあるのかを探る上で方向性を見誤ると感じている。本質的な原因をもっと追究すべきだと考える。

ある企業が成功しはじめたときに、「あれは一過性のもの」と見過ごしてしまうと、気が付いたときにははるかに先行されているということがあります。
現代自や日産の躍進と、トヨタ、ホンダの凋落はかなり以前から既に始まっていたのでしょう。

カギは現代自の新しい生産システムにあるようです。

ポイントが2点ある。それは
 
1.熟練度合いの高い多能工に依存しない方式
2.モジュール化の推進
 
である。(中略)
 
現代自動車では作業者はカイゼンをしなくてよく、指示された単純な仕事をこなすだけだ。
 
その代り、カイゼン専門の担当者を工程外に置き、そこにエリート人材を起用した。このために、「リモートコントロール方式」も採用した。1つの生産ラインに300台近いビデオカメラを設置し、不具合が発生すると、カイゼン担当者がリプレイして作業をチェックし、問題の原因を突き詰めていく手法だ。(中略)
 
さらに、自動車産業では工程数を減らし生産ラインの長さを短くすることが効率性を高めていくための常識的な手法と位置付けられているが、現代自動車はこれも否定した。逆にできるだけ工程を細分化して工程数を増やすことで仕事を単純化し、1人の作業者が複雑な仕事をしなくて済むようにした。現代自動車の1ラインでの工程数は日本メーカーの約2倍の300工程近くあるという。
 
仕事を極力単純化することで、言葉が通じにくく、しかも初心者の外国人労働者の指導もしやすくなった。これが新興国など海外工場の生産性を高めることにもつながったとみられる。こうした手法は、現代自動車がグローバル化を推進する上での大きな「武器」となったようだ。

これはすごくよくわかります。

日本のメーカーでは期間従業員であっても、正社員と同様に他機種が流れるラインで複数行程が出来るようにトレーニングします。 海外の工場であっても同様です。

でも当然ながらトレーニングに掛かる労力は大きいです。 タイくらいまでならなんとかなりますが、それよりリテラシーの低い国ではかなり大変です。 よって工場の生産台数の立ち上がりスピードが遅くなります。
マレーシアでさえ、朝、大雨が降ると出社しない工程者が続出しますから。

ラインの短さを競うのも同様です。 日本や先進国で通用した成功体験を、新興国に持ち込もうとしたのが日本メーカーの敗因ですね。