もはや手遅れ? 「危険水域」突入のイタリア

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「危険水域」のイタリア、生き残る唯一の道はECBの支援 | Reuters

イタリアの10年国債利回りは9日、7%をあっさり突破、「危険水域」に突入した。イタリアを救うには、欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の支援が必要になるが、ユーロ圏当局者は「支援計画はない」と明言しておりイタリア支援が実現するのか不透明だ。(中略)
 
どちらにしても、もはや手遅れかもしれないとの見方もある。多くのアナリストは、イタリア国債の売りはもはや歯止めがかからない状態になっており、ユーロ圏の解体につながる可能性もある、と考えている。
 
ギリシャやポルトガルなどの、経済規模が比較的小さい国がユーロ圏から離脱することは、あり得る話かもしれないが、域内で3番目に大きい経済を持つイタリアが離脱するというのは、想像も及ばない事態だ。 
 
イタリアの国債利回りは、ECBの買い支えがなければ、もっと上昇していたはずだ。しかし、イタリアを救済しようとすれば、ECBは今よりもさらに本格的な措置をとる必要に迫られ、「最後の貸し手」という役割を負うことなるが、ECBはこれまでのところは抵抗している。
 
イタリアの公的債務は1兆9000億ユーロと、世界で4番目に大きい。資金ニーズは、EFSFとIMFだけでは満たすことができない。

オリンパスよりこちらのほうが心配ですね。

なかには「心配ない」という人もいます。

記者の目:ギリシャ危機と欧州の行方=斎藤義彦 - 毎日jp(毎日新聞)

欧州連合(EU)の共通通貨ユーロの危機が続いている。危機はあと数年は収まらないだろう。しかし、これは「瀬戸際」でも「土壇場」でもない。なぜなら、EUもユーロも決してなくならないからだ。「EUがギリシャをユーロ圏から離脱させる」という俗説も間違っている。EUもユーロも極めて政治的に作られた産物で、それを堅持するEU首脳の政治的意思は固いからだ。その意思を軽視するとEUの姿を見誤る。(中略)
 
ギリシャの救済策を巡る国民投票提案(後に撤回)には私も驚いた。ギリシャには自らEUを出る法的権利はあるが、EUの首脳は怒りながらも決して「出ていけ」とは言わなかった。ギリシャを追い出すのは最も安直な手段で、それができるなら最初からやっている。万一、離脱させればイタリアまで危機が「感染」しかねない。それは合理的でないと判断している。(中略)
 
「危機」というと欧州諸国が困窮しているように聞こえるが、ドイツは好景気で、戦後最高の税収を記録した。ユーロが下がり輸出競争力が上がったドイツはもうけている。“欧州のパトロン”ドイツが、富を南欧に振り向け救済する余裕はある。シンクタンク欧州政策センターのヤニンク研究部長(ドイツ人)は「国民には不人気だが、ユーロで恩恵を受けているドイツが主権を渡して統合を進めるしか解決策はない」と話す。
 
さらにEU首脳は、最後はなりふり構わぬ「暴力的」ともいえる手段に訴えると推察する。10月末の首脳会議で独仏がギリシャ債務の半分の棒引きを銀行側にのませた。英米メディアによると、説得は脅しに近かった。債務の完全帳消しや銀行国有化にまで踏み込む可能性は十分にある。
 
首脳会議の記者会見でEU議長国ポーランドのトゥスク首相は将来のユーロ導入を断言した。傷だらけのユーロの導入を、危機の絶頂で説く指導者がいる。欧州の政治的意思は単純な経済の常識を超えているのだ。

「債務の完全帳消しや銀行国有化にまで踏み込む」ようでは、いくらユーロが残ったとしても他の国からしたら「勝手にやってろ」という話になるのでは?


社説:伊首相辞意表明 これ以上の混乱許すな - 毎日jp(毎日新聞)

一方、ギリシャ危機がイタリアへと波及した責任はイタリア以外にもある。ユーロ圏の”盟主”といえるドイツが、ギリシャなど債務危機に陥った国の救済で損失をかぶる覚悟を十分見せなかったことが特に大きい。政府が大胆な救済策を打ち出さず、民間銀行にギリシャ支援の負担を強いたのは、やはり失敗だった。
 
破綻した場合の影響がギリシャの比ではないイタリアに火の手が及んだ以上、もはや既定路線の対応では間に合わないだろう。自ら支援を必要とするようなイタリア、スペインの2国が、全保証枠の3分の1を担う現行の欧州金融安定化基金にどれほど信用力があるだろうか。
 
その信用力を補うため、IMFなどユーロ圏外の資金をもっと取り込もうという動きになってきた。だが、通貨ユーロを共有する国々で最大限のリスクをとるのが大前提だ。確かに、ギリシャやイタリアなど個別に見れば財政状況は危機的だが、ユーロカ国を一つとみなすと、債務残高も単年度の財政赤字も、日本や米国より軽いのである。
 
イタリアの問題はユーロの根幹を揺るがしかねず、今度こそ手遅れは許されない。当事国はもちろんだが、ドイツ、フランスもかつてない決断を迫られている。

そのフランスにさえ、延焼しそうな火の勢いです。

〔焦点〕仏国債への投資家心理が徐々に悪化、過剰債務国の利回り水準に収れんするリスク | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters

欧州中核国債券市場に対する投資家心理が徐々にフランス国債を排除する方向に進んでおり、仏国債の利回りは、トリプルA格付けの維持を投資家に確信させられない限り、欧州域内の過剰債務国の利回り水準に収れんしていくリスクをはらんでいる。
 
フランス経済は基本的に南欧諸国の経済よりも強固であり、国内総生産(GDP)に対する債務比率はユーロ圏の平均を下回っている。またフランスの国債市場ははるかに流動性が高い。しかしイタリアがユーロ圏債務危機の泥沼に足を踏み入れた現在、一部の投資家は、フランスが危機連鎖の次の犠牲者になるとみている。
 
投資家の最大の懸念は、フランスの銀行セクターが抱える、ユーロ圏でもずばぬけて多い6000億ユーロ超のイタリア、スペイン、ギリシャ国債へのエクスポージャー(国際決済銀行=BIS調べ)だ。エイゴン・アセット・マネジメント(運用資産2500億ユーロ)の金利責任者、ジェラルド・モアマン氏は「中核国への危機連鎖は既にフランスで明白になっている」と指摘。「多くの投資家がもはやフランスを信頼しておらず、エクスポージャーの処分を望んでいる投資家もいる。われわれの顧客の一部もフランスから距離を置こうとしている」と語った。同氏は200億ユーロの資産運用を任されている。

既にデクシアが解体されましたが、フランスの場合は民間銀行の健全性が心配されている訳ですね。 もし救済しようとすれば、フランスの財政も痛みます。
サルコジが欧州金融安定化基金(EFSF)を銀行への資本注入に使えるよう主張したのも理解できます。