過去の名車に「名」を借りて

自動車メーカーの「らしさ」とは?:日経ビジネスオンライン

正直、このクルマの実物を見た時、私は戸惑った。「86」はかつて、「カローラレビン」や「スプリンタートレノ」と呼ばれたトヨタのスポーツカーの型番「AE86」が名前の由来だ。記者が小学生のころ、近くに住む大学生が乗っているのを見て、あこがれたものだ。だから、目の前にレビンやトレノが蘇っているものと勘違いした。実際にはレビンやトレノとは異なるスポーツカーがスポットライトで輝いているのだから、戸惑ったのである。
 
こんな話を知人にすると、彼は偶然にも、昔レビンに乗っていたと言う。では、今回の「86」を率直にどう思うか?と聞いてみた。
 
「やっぱり、違うよね」
 
新しい「86」は恐らく、かつてのレビンと比べれば走りの性能は段違いに良くなっている。優れたスポーツカーだ。だが、私のような団塊ジュニアの世代にとってみれば、どうしても青春時代に輝いていた往年の名車と比べてしまう。どちらが優れているというわけではない。かつて、あこがれたクルマが目の前にない。それだけのことだ。(中略)
 
往年の名車の輝きを取り戻したい。自動車メーカーの思いはよく分かる。国内市場の縮小に円高という逆風に苦しむ状況にあるからこそ、過去をなつかしむ気分も出てくるのかもしれない。
 
しかし、新しい「86」は私のように過去のレビンを知る人にとっては、やはり「違うクルマ」だ。そしてこれから、運転免許をとる若者はかつてのレビンを知らないだろう。レビンだからと言って、売れるというわけではない。「トヨタらしさ」を訴えるのに過去の名車を持ち出すのは、私には少々押し付けがましく思えてしまう。

要するにコンセプトが違うのに、名前だけ借りてきているのが気に食わないようです。

AE86の場合は「ファミリーカーのスポーツモデル」です。 コンポーネンツや価格帯もカローラの域を出るものではありません。 よって、若者でも手が届いたのです。

「ハチロク」は新規に純粋なスポーツカーとして開発されました。 購買ターゲットも、売価から言えば金を持ってて子供が手離れする40代半ばの「バブルさん」あたりでしょうね。

単なる感覚の問題なのは間違いない。しかし、メルセデス・ベンツのブースにはベンツらしいクルマが並んでいる。アウディもポルシェもそうだ。日系メーカーの幹部にこの話をすると、「やはり欧州メーカーは、特にデザイン面でうまくブランドを作り上げていますよね。『ミニ』とか『ビートル』は、いつの時代もそれっぽい格好をしているね」と、私と同じ感覚を持っているようだった。

欧米メーカーは露骨に名車を「リメイク」しますね。

日本人の開発者は真面目なんで「そんな懐古趣味はイヤだ」と考えて、名前だけ借りて似ても似つかないクルマを作るのです。 ユーザーはそんなもの望んでいないのに。

ホンダが発売予定の「N」では、独りよがりの拘りは捨てて、N360のイメージ通りのクルマに仕上げてもらいたいですね。