効率を突き詰めれば、進化が止まる

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Business Media 誠:ちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か(5):「最近の若者はダメ」というが、本当にそうなのか

ちきりん:だから私は、今の若い人たちが海外に行かないのは好奇心や行動力がなくなったからではないと思ってます。さまざまな情報を手に入れて判断した結果、自分なりに考えてお金と時間を有効に使っているのでしょう。(中略)
 
よく「時代が変わる」と言いますが、こうした変化こそ“時代が変わる”という意味に思えます。その変化には「良い・悪い」はなくて、一概に「海外旅行をしない若者はダメ」とも言えないと思います。
 
中田:なるほど。「今の若い人たちが海外に行かなくなった。内向き志向だ」と言われていますよね。だけどちきりんさんの話を聞いていて、今の若い人たちは「結論を持っているのかも」と思いました。
 
つまり「そこへ行かなくても分かっている」という結論。その結論というのは、日本のほうが快適で日本のほうが食事がおいしい。

「苦労は買ってでもする」とか「百聞は一見に如かず」というのは通じないようです。

確かに海外の情報は、25年前と比べても格段に入ってくるようになりましたからね。
昔は『なるほど!ザ・ワールド』のような海外事情を紹介するテレビ番組が多かったですが、2000年以降は下火になりました。 この間『なんでもワールドランキング ネプ&イモトの世界番付』を観て、すごく懐かしく感じましたもん。

でも若者が海外に行かなくなったのは、単純に「そんな余裕がない」からだと思いますが。

中田:僕は、人から本を薦められるということがものすごく好きなんです。特に目上の人から本を薦められることが。(中略)
 
先輩から薦められた本の中で、面白いものもあれば、全く面白くないものもあった。それでも先輩から薦められた本だから読むわけで、自分の関心だけでは絶対に手に取らなかった本なわけです。面白くないけど、目上の人に薦めてもらった以上、我慢して読む。
 
ちきりん:なるほど。でもそれは多くの若者にとっては「馬鹿げた時間の使い方」に見えるかもしれない(笑)。我慢して読んで、得られるものもあるんですか?
 
中田:結果、「オレには全く面白くなかったけど、この本を『面白い』と感じる人が世の中にいるんだ」「そうした思考回路はオレにはないけど、他人にはあるんだ」といったことが分かること。それが僕にとって、ものすごく勉強になりましたね。もちろん薦められた本の中で、「なるほど」「面白い」というものもたくさんありました。
 
ちきりん:おもしろいですね。今の若い人とは全く違います。今は、本もネット上のレビューを読んで「あ、この本、オレには合わないな」と判断すれば読まないし、加えて「このレビュアーはオレに合う、合わない」まで判断する時代になってます。「この人の勧める本ならオレには合う」というように、自分に合ったキュレーターを探す時代です。わざわざおもしろいと思えない本を読んで視野を広める、という感覚はあまりないかも……。(中略)
 
中田:いつの時代も変わらないことは、自分の実体験プラスアルファーということなのではないでしょうか。私たちの時代は不完全な情報に対し、現場に足を運んで、自分の目で見て確かめたかった。自分が経験して、そのことについて語りたかった。なぜならば、そこに結論が出ていたわけではなかったから。しかし今はネット上に「いい結論」「悪い結論」があふれている。
 
それでも実体験プラスアルファーは必要なのだと思う。実体験がベースにあるので、人の情報というものが生きてくる。僕はあまりノウハウ本は好きではありません。なぜならノウハウ本を書いた人が一番、そこから学んでいると思うから(笑)。
 
ちきりん:ハハハ。それはその通りですね。

25年前も「マニュアル君」というのはいましたが、今の若者は効率を求めてもっと進化しているのでしょう。

でも自分の好みや関心以外のものと触れ合う機会を排除していくと、おそらく成長は遅くなると思います。 環境への過剰最適化と同じです。
生命進化の過程でも、偶然の出会いに頼る部分は多いですから。