重要なのはロードマップそのものより、未来を見る努力と開発姿勢

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使えるロードマップと使えないロードマップ - 産業動向 - Tech-On!

多くの読者の方々にとってロードマップという言葉は特に目新しい言葉ではないだろう。テクノロジーロードマップという言葉や手法は新しいものではなく、随分以前から多くの企業で使われているからである。ところがそれらは、企業レベルでコンセンサスをとった手法にはなっていない場合が多い。(中略)
 
一方で、業界団体や公的団体が作成した、本格的なロードマップというものもある。国際半導体技術ロードマップ(ITRS : International Technology Roadmap for Semiconductors)などはその代表例で、半導体関連業界の研究者、技術者にとって必須のものであると思われている。(中略)だが、その存在意義としてずっと重要なのは、業界の合意形成ツールとして、つまり業界標準としての機能である。
 
経済産業省が作成する技術ロードマップも、同じような機能を目的としたものだ。最近の例は『技術戦略マップ2007』があるが、これは「イノベーションスーパーハイウェイ」構想に沿い、「情報通信」「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」「ナノテクノロジー・材料」「ものづくり」という日本の将来にとって重要と考える主要分野25分野について技術の将来像を約500ページの膨大な技術ロードマップとしてまとめたものである。
 
この狙いは、国が関与するプロジェクトの方向性の指針とすること。同時に、国の予算などを投入して推進した開発活動の成果を市場化へつなげやすくするための仕組みの一環と位置づけている。つまり、ロードマップを単に技術開発テーマの指針とするのではなく、関連する産業界に前もってメッセージを発するツール、すなわち、合意形成ツールとして利用しているのである。

仕事で技術ロードマップを描けと言われて、参考にしたのが経済産業省発行の『技術戦略マップ2010』です。

それぞれの分野で表現は多少違いますが、

1.導入シナリオ
2.技術マップ(ストラクチャー含む)
3.技術ロードマップ

の3つで構成されています。

将来に対する不確定性が高い環境下では、万人が容易に納得できる開発仕様などは存在しにくい。さらには、新たな商品を開発するためには事前に新しい技術を準備しておかなければならないというケースも少なからず出てくる。こうした状況で研究開発を進める際には多くの関係者間でのコンセンサスが必要になる。そのツールとしてロードマップが有効なのである。
 
つまり、ある種のロードマップは、個別企業というよりも関連業界全体に対して意味を持つものなのである。特に、未知の領域を開発しつつ産業が進化している業界においては、これが重要な役割を果たす。関連する業界の足並みが揃っていないと実際には事業化ができないからである。

企業のなかでもいろんな部門がありますから、やはり意思統一するのは大事なことです。

けれど、これはロードマップの、一つのあり方に過ぎない。その一方で、個別企業において効力を発揮するロードマップというものもあるのだ。それは、次の二つを備えたロードマップである。
 
(1)市場のロードマップ/商品のロードマップ/技術のロードマップの3段階のロードマップに分けて考えられていること
(2)市場のロードマップ→商品のロードマップ→技術のロードマップと市場側からスタートし技術へとブレイクダウンして考えられていること
 
政府や業界団体、公的団体などから発表されてきた様々なロードマップでは、市場/商品/技術を渾然一体として語られているケースが少なくない。作成/発表している主体や目的から考えれば必然的なことだろう。けれど、これでは個別企業にとってはほとんど意味を持たない。(中略)
 
二つ目の留意点は、市場からスタートし商品、そして技術とブレイクダウンする流れにしなければならないということである。筆者がこの点を極めて重要だと考えている理由は、現在の日本企業に見え始めている「商品開発偏重、技術開発軽視」の傾向を、この流れに沿ったロードマップを活用することによって修正できると考えているからである。
 
直接的に利益を生み出すものは商品である。だから、商品開発を目的とした開発費投入への抵抗は少ない。けれど、技術開発自体は直接的にイメージできる特定の商品開発を目指すものではないので、投資効果を重視する現在の経営としては認めにくい。けれど、商品開発の手段として技術開発の位置付けが明確に説明できるようになれば、それも変わるはずである。「このような商品を○年後に商品化しようと考えているが、その商品の優位性を確保するためには×××技術が必要なので、この技術開発をテーマとして取り上げなければならない」といった、商品と技術が関連付けられた説明を聞けば、多くの経営者は納得できるはずである。

そう! まさによく言われるのが「開発テーマと事業の連鎖を分かりやすく表現しろ」ということ。
言うは易しで、簡単にできるなら苦労はしないんですが。

筆者の知るところでは、ロードマップを効果的に使っている日本企業の例として村田製作所が挙げられる。同社はご存知のように変化の激しい電子部品業界に属しながら、10年先までのロードマップを作成している。この業界で10年先などが見えるかという懸念を抱く方が多いのではと思う。筆者もその通りだと思う。
 
では、彼らの作業は無駄なものなのか。いや、そうではないと思う。彼らは言う。「重要なのはロードマップの内容そのものではなく、10年先を見ようとする努力とその意識で開発に取組むことである」と。まったく同感である。
 
ロードマップの普及に熱心な経済産業省は、活動の一環として世界のロードマップ研究者から意見を聴取して「技術戦略マップ2006」にまとめているが、多くの研究者がこの問題について村田製作所とまったく同様なコメントをしている。

うんうん。 こんなことしてて意味があるのかなと思ったりもするんですが、「作る過程に意義がある」と考えて頑張ります。

最後に、ロードマップのつくり方について触れておきたい。その策定過程において議論が重要であることを指摘してきたが、だからこそ、特定の部門の人間で作成しても意味がないのである。個人に任せてしまうなど論外だ。市場に対する理解力のある人、商品戦略および技術戦略について語れる立場の人など、様々な立場の人が議論して作るべきだろう。営業部門や生産部門、研究開発部門など関連する多くの部門の人が集まり、できればさらに社外のスタッフを加えたプロジェクトチームを組んで取組むことが、一つの理想形といえるのではないか。

そのと-り!!