経済学者は歯医者のようなもの

人口オーナスへの対応を阻む長期雇用、年功賃金:日経ビジネスオンライン

この中で確か稲田献一氏(故人、高名な数理経済学者)が司会を務めた対談に金森久雄氏(経済企画庁出身の官庁エコノミストで私の大先輩)が出席したことがあった。この対談では、経済学者たちが最先端の難しい理論的な問題を延々と議論していたのだが、金森氏はほとんど発言しない。
 
見かねた司会の稲田氏が発言を促すと、金森氏はただ一言「経済学者は歯医者のようなものだ、歯が痛くて困っている人がいたら治療しなければならない」という謎の言葉を発して、後は再び黙り込んでしまった(記憶に頼って記述しているので、細部については不正確である可能性があります)。
 
私はこれを読んでいておかしくてたまらなかった覚えがある。金森氏の言いたかったことは要するに「経済学者は難しい議論のための議論をするのではなく、歯医者のように世の中の役に立つような議論をしろ」ということだったと思う。

そういう意味では、実際に歯痛を直した経済学者は竹中平蔵くらいなのかもしれません。

ところで人口オーナスってなんでしょう?

要は、人口が減少すると、一時的には人口に占める働く人の割合が高まる「人口ボーナス期」を迎えるのだが、やがて少子・高齢化の進展とともに働く人の割合が低下する「人口オーナス期」が来る。
 
日本は既にこのオーナス期に入っており、その結果、潜在成長力の低下、社会保障制度の行き詰まり、人口減少地域の疲弊などの諸問題が表面化している。この人口オーナス現象は、今後さらに程度が高まることが確実であるため、問題点の方もさらに深刻化することが懸念される。

これは今や「日本病」と言われているようです。

「日本病に罹った」とついに認めた韓国:日経ビジネスオンライン

東亜日報は11月12日付で「韓国の生産年齢人口の減少速度、世界最高」との見出しの記事を掲載した。経済協力開発機構(OECD)の報告書「世界経済長期展望」を引用した記事だ。
 
それによると、韓国の生産年齢人口の比率が2011年の72.5%から2060年には52.3%へと急落する。34のOECD会員国と、8の重要な非会員国の中でもっとも大きな下落幅だ。(中略)
 
10月下旬から11月半ばまで「日本病に罹る」という趣旨の記事が韓国メディアにあふれた。ついに、というべきか、11月7日に韓国銀行がそれを認める論文を発表した。「人口構造の変化と金融安定の関係」という調査報告書だ。以下は、巻頭の「要約」の一部だ。(中略)
 
そして脚注では「日本銀行の白川総裁も論文(2011年)で『生産年齢人口の比重が減る時点の前後に、人口ボーナスがオーナスに変わる』と言及している」と書いた。隣国の中銀総裁まで“動員”して「日本病」の恐ろしさを強調したのだ。

そりゃお気の毒に。