格差拡大は小泉構造改革のせい?

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小泉構造改革3つの誤解:日経ビジネスオンライン

小塩氏はこの本で、小泉構造改革で日本の格差が拡大したというのは誤りだと指摘する。理由は簡単だ。格差のデータは逆の事実を示しているからだ。まず、日本の格差が拡大しているということを示すデータは2000年以前のものである。また、日本の格差、貧困が先進国の中でも高めであるという指摘の基となるデータも2000年までのものである。小泉政権が誕生したのは2001年4月だから、これだけでも「小泉構造改革で格差が拡大した」というのは誤りだし「小泉構造改革によって日本は国際的に見ても格差の大きな社会になった」というのも誤りだということが分かる。
 
小塩氏はさらに、OECDが2008年に“Growing Unequal?”という報告を出しており、この中で「日本の所得格差と貧困は、長期にわたる拡大傾向に反して、過去5年間で縮小に転じた」と指摘したのだが、当時これはほとんどメディアに取り上げられなかったと指摘している。つまり、小泉構造改革によって、格差はむしろ縮小したことになるのだが、それまで「格差の拡大」を指摘したメディアは、その逆の結論を取り上げにくかったのだろうと推測している。
 
さらに、格差という点では、小泉内閣時代の規制緩和で派遣可能な業種が大幅に拡大し、これによって身分の不安定な非正規労働者が増え、景気後退期に「派遣切り」などの現象を生むことになったという指摘もある。この点については、国際基督教大学の八代尚宏教授が『新自由主義の復権』(2011年、中公新書)の中で事実誤認を指摘している。八代氏は、労働者派遣法の改正は小泉政権発足前の1999年に実現したものであること、この改正は、ILOの条約を批准したことに伴うものであり、その狙いは企業のためというよりは、労働者にとっての雇用機会拡大のためであったことなどを指摘している。

日本のマスメディアは、小泉首相に「踊らされた」という気持ちがもの凄く強いのだと思います。

「劇場型政治」とか批判しつつ、それに乗っかって視聴者・購読者の耳目を集めていたのにね。

ではなぜこれほどまでに「小泉改革で日本は格差社会になった」という誤解が広がったのか。私は要するに経済が低迷していたからだと考えている。小泉構造改革が行われていた時代は、失われた20年の真っただ中であり、経済は低迷し、名目所得は減り、若者の失業率は高まり、企業は正社員の採用を抑制し、非正規の労働者が増えた。多くの人はこうした現象を「格差の拡大」と認識したのではないか。しかし、それは「格差が拡大した」のではなく、絶対的な所得水準が低下し、絶対的な雇用のレベルが下がったことによるものだったのだ。
 
多くの人は、自分の身の回りの状態が悪化した時、それは「他の人との差が広がったことによるものなのか」それとも「みんなが同じように状態が悪化したのか」を特に区別せずに議論しているように思われる。そもそもこの点を自分の身の回りから判断することは難しいから、やむを得ないことなのかもしれない。

でも小泉政権時代は「いざなぎ景気」を抜いて過去最長の好景気(第14循環)だったのでは?

こうしてみれば分かるように、民主党の成長戦略は小泉構造改革路線を踏襲している部分が相当ある。素直に考えれば、「構造改革を通じて民間活力を最大限に発揮し、財政に頼らないで経済の活性化を図っていく」ということを成長戦略の柱として打ち出せばよいと思う。しかしそれができないのは、自分たちが小泉構造改革を批判することによって政権交代を果たしたというしがらみから抜け出せないためだと私は思う。
 
今、日本経済が求めているのは再度の小泉構造改革である。しかしその改革は多くの誤解に基づいて批判され、その批判に乗って民主党は政権交代を実現した。このため本音では構造改革を前面に押し出したくてもそれができない。仮に自民党が政権を取っても、「また市場原理の構造改革か」と言われるのを恐れて、これを前面に出せないかもしれない。その意味で、小泉構造改革にまつわる誤解は「世紀の誤解」と呼べるほど、日本経済の運命を左右している大きな誤解だと私は考えている。

でもね。 一般大衆はそれほど小泉構造改革を悪として捉えていないと思うよ。
既得権者やそれに繋がる政治家のアレルギーは強いと思うけれどね。