新型デミオは、国内でディーゼルがメジャーになるかの試金石

新型デミオの1.5Lディーゼル、小型車でも普及なるか:日経ビジネスオンライン

私事で恐縮だが、筆者の古くからの友人が、独り身であるにもかかわらず最近マツダ「アテンザ」のワゴンを買った。面白かったのは、その友人が、当然のようにディーゼルを選んだこと。このところマツダでは、ディーゼルエンジン搭載車の比率が増えている。同社によればSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)の「CX-5」で約8割、「アテンザ」でも約7割といずれも過半数以上を占める。これは国産車では極めて異例のことだ。
 
小型車「アクセラ」だとこの比率は約13%と下がるのだが、アクセラにはトヨタ自動車のシステムを使ったハイブリッド仕様車があり、しかもディーゼル車よりも低く価格が設定されていることを考慮に入れるべきだろう。そして筆者がその売れ行きに注目しているのが、マツダが秋に発売を予定している新型「デミオ」のディーゼル比率がどうなるかだ。

そうなんだよ。 自分も先日調べてみたんですが、アクセラだけディーゼル比率が低いのです。

ちなみに2014年 1月~7月の累計販売台数は以下のようになっています。

アテンザ 7,573台
4D PET 1,440台
4D DIE 2,261台 61.1%
ワゴン PET 1,084台
ワゴン DIE 2,788台 72.0%

CX-5 19,143台
PET 4,820台
DIE 14,323台 74.8%

アクセラ 29,466台
4D PET 5,073台
4D HEV 5,133台 50.3%
5D PET 14,867台
5D DIE 4,393台 22.8%

アクセラについてはディーゼル(DIE)が設定されているのが5Dだけというのはありますが、ガソリン(PET)車に対する販売比率がアテンザ、CX-5に比べて極端に低いです。
4Dに設定されているハイブリッド(HEV)車はPETと半々です。 その影響でDIEが売れないというのはあまり考えにくいです。

アクセラのディーゼルが売れないのは、ひとえに売価設定にあると思います。

【アクセラ開発者への10の質問】Q4.ディーゼル搭載のアクセラスポーツXD、その位置付けは? | レスポンス

「まず値段を先に決めたんです。300万円台の輸入車と比べられても、遜色ないクルマにしようと。そこで、まず価格を300万円に設定しました。そして300万円台クラスのクルマに相応しい内容に仕上げていったんです。インテリアは専用のクロスステッチをステアリング、サイドブレーキなどに施しています。革シートもスウェード調とのコンビネーションですし、ステアリングのレザーのランクも上げています。フロントグリルにも赤いラインを入れ、リヤのバンパーボトムをピアノブラック仕上げにして、18インチのホイールも専用の高輝度塗装を施しました」。
 
リヤサスペンションはハブベアリングのサイズをアップし、ダンパーも容量を高めるなど単なるセッティングの領域を超えた、専用チューニングが施されている。価格だけを見るとXDは高価に感じるかもしれないが、Lパッケージを超える装備を仮にオプションで積み上げると相当な価格になるハズ。むしろ新型アクセラの中でも一番コストパフォーマンスが高いかも知れない。「実はかなりお買い得な設定なんです」と児玉氏。最初に価格を決めた関係上、後から価格を上げられなくなった?という筆者の意地悪な質問にも「そうなんです」と認めたのだった。

そうは言っても、やっぱり高いよね。 だからこういう意見も出てくるわけですが。

マツダは1.5Lの新型ディーゼルエンジンを、デミオだけでなく、現在開発中のデミオをベースとした新型SUV「CX-3」にも搭載すると噂されている。筆者はこれに加えて、デミオの上級車種である「アクセラ」にも積んではどうかと思っている。実際、アクセラが属する「Cセグメント」では、ドイツ・フォルクスワーゲン社の「ゴルフ」をはじめとする欧州の競合車種が1.5~1.6Lクラスのディーゼルエンジンを搭載しているのだ。アクセラが現在搭載している2.2Lのディーゼルエンジンは、同車種のサイズにはややオーバースペックな印象がある。
 
そういう話を以前に、アクセラの開発担当者の方としたことがあるのだが、その担当者は「アクセラはスポーティな走りが売り物なので、1.5Lのエンジンだとやや物足りない」と否定的だった。しかし、2.5Lガソリンエンジン並みのトルクがある今回の1.5Lディーゼルは、筆者からみれば動力性能も十分だと思うし、燃料代も燃料がガソリンより安いことを考慮すれば、トヨタ自動車の「プリウス」と同等レベルが期待できそうだ。評判のいいアクセラに1.5Lディーゼルが加われば、鬼に金棒と思うのは筆者だけだろうか。

この辺りは開発者インタビューで「安売りはしない」と言ってますので、プレミアム性を着けるためにあえて高めの売価設定にしてあるのだと思います。 DIEばかり売れすぎて、PETが売れないのが悩みみたいだし。

ただデミオクラスだと、価格コンシャスで判断する比率が上がるので、どうかなと。 フィットHVやアクアと同じ値付でDIEの月販がコンスタントに1万台出るかどうか。 注目したいと思います。

ところでマツダのDIEの優位性ですが、

こうしたメリットがあるにもかかわらず、これまでディーゼルエンジンの圧縮比を下げられなかった理由は、寒い時期に、エンジンが始動しにくくなってしまうことだ。こういう状況ではエンジンが冷えているので、圧縮比を下げてしまうと、シリンダ内の温度が十分に上がらず、燃料に着火しにくくなるためだ。(中略)
 
マツダは今回、この可変ジオメトリーターボの仕組みを、エンジンの始動性の向上に役立てた。エンジンの始動時に、可変ジオメトリーターボの、排ガスの流路を絞る仕組みを利用して、排ガスが排出されにくくしたのだ。すると、エンジンが空気を吸い込むときに、温度の高い排ガスの一部がシリンダ内に戻るので、エンジンが早く温まるわけだ。じつは、すでに商品化している2.2Lディーゼルエンジンではもっと複雑な仕組みで排ガスの一部をシリンダ内に戻しているのだが、低コスト化が要求される今回のエンジンでは、新たな機構を追加せずに同じ効果を得ているところにエンジニアの工夫がある。

MotorFan illustratedの解説で読みましたが、特別なデバイスがある訳ではなく、細かい工夫で成り立っているんだなと思いました。

ちなみにSKYACTIV-D 1.5(日本仕様)はEURO6相当で、圧縮比は14.8、最高出力105ps/4,000rpm、最大トルク250Nm/1,500-2,500rpm。
ホンダのインド向けCITYの i-DTEC 1.5はBS4/EURO4相当で、圧縮比16.0、最高出力100PS/3600rpm、最大トルク200Nm/1750rpm。 もちろん性能よりコスト重視の進展国向けなので、先進国向けと同列に比較はできませんが、マツダのDIE技術が一歩リードしているのは理解できます。

マツダ SKYACTIVエンジン開発担当者インタビュー(後編):段違いのクリーンディーゼルだから国内市場でも受け入れられる - MONOist(モノイスト)

仁井内氏 一般的なディーゼルエンジンの開発では、動作温度範囲の下限となる極冷温環境下でもエンジンが燃焼するように圧縮比を上げて最適化します。しかし、この開発手法では、低圧縮比の実現が優先されることはありません。マツダは、“理想の燃焼”を見据えていたので、低圧縮比でも低温で燃焼を継続できるブレークスルー技術を必要としていたのです。この発想の違いが、可変バルブリフト機構を利用するという“気付き”につながったのではないかと考えています。
 
SKYACTIV-Dは、低圧縮比の実現によって燃料の燃焼効率を高めているので、既存のディーゼルエンジンよりも燃費が大幅に向上しています。加えて、燃焼時のNOxやススの発生も抑制できているので、排気ガスのクリーン化も実現しています。従来のディーゼルエンジン車の場合、日本のポスト新長期規制、米国のTier2Bin5、欧州のEuro6といった排気ガス規制に対応するには、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元触媒)システムやリーンNOxトラップ(LNT)などの高価なNOx後処理装置が必要でした。SKYACTIV-Dを搭載するCX-5は、これらのNOx後処理装置を使わずに、先述した排気ガス規制をクリアした世界初の車両なのです。なお、全ての排気ガス処理装置が不要なわけではなく、炭化水素や一酸化炭素を処理する三元触媒と、ススを処理するDPF(Diesel Particulate Filter)は搭載しています。
 
MONOist ここまで聞いたところ、SKYACTIV-Dでは、極めて高度な電子制御を行っているように感じました。エンジン制御システムの中核となる、ECU(電子制御ユニット)や制御ソフトウェアはどのように開発しましたか。
 
仁井内氏 これだけの高度な制御を行うには、ECUの処理性能も向上しなければならないし、制御ソフトウェアの容量も大きくなります。既存のディーゼルエンジンのECUと比べて、マイコンの演算速度は2.5倍、RAMの容量は4倍、制御ソフトウェアの容量は2倍になりました。また、制御ソフトウェアの開発では、モデルベース開発を本格的に活用することで、実試験の回数を削減しています。これにより開発期間を短縮できました。

モデルベース開発は他社ではこれから始めるところもあるので、相当に先行していることになります。

ただPETのSKYACTIV-Gがすぐに他社にキャッチアップされて埋没してしまったように、「日本でもDIEが売れる」と判断すれば、ブルーオーシャンはすぐにレッドオーシャンに変わってしまうでしょうね。
マツダの健闘に期待したいです。