東京電力、「夜得」と「夜トク」どっちがお得?

電気料金の新プラン検証シリーズ(5):“セット割”に勝負を託す、東京電力の新料金プラン - スマートジャパン

もう1つは昼間はあまり電気を使わないが、夜間に多く利用するというユーザー向けの「夜トクプラン」だ。昼間の電気料金はスタンダードプランより割高になるが、夜間の電力を安くしている。夜間電力として割安にする期間を8時間と12時間から選べる。なお、こちらもスマートライフプランと同様に、スマート契約方式のプランだ(図8)。

いよいよ大本命、東京電力の新料金プランが発表されました。

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我が家では現在「夜得プラン」に入ってます。 それと新しい「夜トクプラン」(わかりづらいな)を比べてみましょう。

夜得夜トク8夜トク12
基本料金1,296円/契約210.60円/契約kWh210.60円/契約kWh
昼間料金24.03円/kWh *132.14円/kWh33.76円/kWh
32.03円/kWh *2
37.00円/kWh *3
夜間料金12.48円/kWh20.78円/kWh22.55円/kWh
夜間時間帯21~5時(8H)23~7時(8H)21~9時(12H)

*1 最初の90kWhまで(第1段階料金)
*2 90kWhをこえ230kWhまで(第2段階料金)
*3 上記超過(第3段階料金)

わかりづらいのが新プランの基本料金で、契約kW当たりの単価(スマート契約)になっています。 契約kWというのは今までのブレーカーのアンペア数みたいなものです。

特徴的なのが基本料金で、東京電力が提案する「スマート契約」という手法で算出する。これはスマートメーターを利用して30分ごとの使用電力量から契約電力量を決めるというもの。30分ごとの使用電力量のうち、月間で最も大きい値を2倍した値は最大電力需要とよばれる。過去11カ月の中で、最も値の大きい最大電力需要が契約電力量となる仕組みだ。

我が家はもうスマートメーターですが、「でんき家計簿」から下図のように30分単位での買電力量が分かります。

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「月間で最も大きい値(=ピーク電力量)」が 0.7kWhだとしたら、その倍の1.4kWhが契約電力量となり、「夜トクプラン」の場合は210.60円を掛けた 294.84円が基本料金になります。
実際にはピーク電力量がこんなに低い値にはならないので、3~4kWhくらいの契約電力量(つまり631.8~842.4円の基本料金)になるのではないでしょうか? 「夜得」よりも基本料金は安くなりますね。

それでも我が家の場合は新プランのメリットは全くないです。

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上図のように、年間を通して昼間料金は第1段階(90kWhまで)に収まっているので、単価は24.03円と新プランに比べて低額になっています。 この12月度の電力使用量に「夜トク8」「夜トク12」プランを適用させるとどうなるでしょうか?

「夜トク8」の場合(契約電力量 3kWhと仮定)
使用量単価料金小計【参考】夜得差額
基本料金3契約kWh210.60円/契約kWh631.80円1,296.00円-664.20円
昼間料金61kWh32.14円/kWh1,960.54円1,465.83円494.71円
夜間料金72kWh20.78円/kWh1,496.16円898.56円597.60円
料金合計4,088.50円3,660.39円428.11円
「夜トク12」の場合(契約電力量 3kWhと仮定)
使用量単価料金小計【参考】夜得差額
基本料金3契約kWh210.60円/契約kWh631.80円1,296.00円-664.20円
昼間料金61kWh33.76円/kWh2,059.36円1,465.83円593.53円
夜間料金72kWh22.55円/kWh1,623.60円898.56円725.04円
料金合計4,314.76円3,660.39円654.37円

ここでは昼間と夜間の買電量が現状と変わらないと仮定して計算していますが、「夜得」と「夜トク」では夜間料金の時間帯が異なるので、この表よりも料金が割高になる可能性があります。

特に「夜トク8」はダメですね。 朝の5~7時が夜間料金になっても、夏は太陽光発電が始まりつつあるし、冬は6時からエコウィルが発電しているので意味がないです。
夜21~23時が昼間料金になりますが、暖房用に発電している冬ならともかく夏場は風呂用の貯湯は2時間も掛からず20時には終わっています。 エアコン冷房も使用しているでしょうから、昼間料金が高騰する可能性があります。

「夜トク12」だと「夜得」に対して、朝5~9時の4時間が夜間料金になりますが、前述のようにその効果は限定的です。 もちろん契約電力量が 4~5kWhに上がればさらに料金が上がります。

そこで東電としては「ポイント+セット割」でおトク感を出すつもりのようです。

東京電力は今回の新プランからポイント制度を導入する。ポイントの付与率は1000円ごとに5ポイントだ。「Tポイント」もしくは「Ponta」のどちらかとしてもためることもできる。2017年春をめどにこうしたポイントを電気料金に充てられるサービスも開始する計画だ。ポイントは1ポイント1円相当として換算できるという。
 
ではこのポイントでどの程度料金がお得になるのか。東京電力は40A契約の3LDKマンションに住む4人家族で、月の平均使用量が400kWhの家庭がプランSに切り替えた場合で試算をしている。この時に従来電灯Bで契約しているとすると、電気料金は月額約1万1000円だ。これをプランSに切り替えた場合、1年間でたまるポイントは540ほど。そしてWebから新プランに申し込んだ場合500ポイントが加算されるの。実際の料金そのものはあまり差がつかないが、ポイントによって年間約1000円相当分がお得になる計算だとしている(図3)。
 
そしてさらにユーザーにお得感を訴求するのが、東京電力のパートナー企業が提供するサービスと組み合わせたセット割引だ。例えば先述した40A契約、月平均使用電力が400kWhの家庭がニチガスとのセット割引プランに申し込んだ場合、従来電灯Bと比較して1年間で6500円の割引になるという
 
このように新料金プランでは、セットプランによる割引率が大きい。東京電力はニチガスの他、ソフトバンク、So-net、USEN、ビックカメラなど、現在21社と小売電力の販売について提携しており、今後もパートナーを拡大していく予定だ(図4)。こうした提携プランの割引率やサービス内容が顧客の動きに大きく影響しそうだ。なお、ソフトバンクとのセット割引プランについては2016年1月中旬にかけて発表する予定だという。

こういう囲い込みはあまり好きではありません。 割安なように見えて、そのコストは別なところに乗っかるだけですから。

とまあ、何のメリットもない新プランですが、必ずしも移行しなければならない訳ではありません。 東電もこんな風に書いています。

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電力自由化で電気代が下がるハズじゃなかったのか!?とお怒りになる方もいるかもしれませんが、何度も書いているように我が家の本命は「都市ガス自由化」です。 電気代は売電で賄えていますからね。
ただこれを契機に東京ガスなどの他の新電力も「夜トクプラン」対抗の新プランを出してくれるといいですね。