ミクロ的に合理的でも、マクロ経済的には困った事態に

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財務戦略偏重がもたらす重大な副作用:日経ビジネスオンライン

しかし、こういった一種の極論は別としても、同じ時期から、事業戦略と財務戦略を一体化して考えるべきだ、という流れが強まってきた。
 
具体的には、例えば事業投資を考える際、資本を獲得・維持するためのコストを疑似的に求め、それ以上のリターンが期待できるかどうかを、投資の「ゴー・ノーゴー」の意思決定基準に組み入れる。あるいは、リスクが高い事業については、それに見合った高めのリターンを求める。(中略)
 
当然、これにはメリットとデメリットの両方が存在する。
 
メリットの最大のものは、投資規律の確立、そして一定のリスクテイクの後押しだ。

全く次元の違う話ですが、こういうことは日常の仕事の中でもありますね。
損益だけを考えるなら受けたくない仕事でも、政治的な理由でやらざるを得なかったり、技術戦略的にやった方がいい場合もあります。

財務と事業が矛盾しないのが理想なんですが、相反する場合にどちらを取るのか? 上の人が「二兎を追え」とか言うこともあるんですが、そういう場合はたいてい大失敗しますね。 やはり割り切りが肝心だと思います。

それはさておき、

逆に、デメリットは、レバレッジの偏重、言い換えれば、多めに借金をすることで資本に対するリターン(ROE=株主資本利益率)を高める。こうした事業そのものとは無関係なバランスシートを使った財務戦略を採用する企業が増えがちなことである。現在のように外部環境において大きな変化が頻発する時代には、それが重大な副作用を生む。
 
事業戦略と財務戦略を一体化して考え、先ほど述べたような資本コストを考える経営にする。ここまではいいのだが、事業戦略と財務戦略のバランスが崩れ、本来事業戦略をサポートする「従」たるべき財務戦略が「主」になってしまうことがある。(中略)
 
日本でも、高度成長期には、借金の比率が高い企業が主流だったが、バブルがはじけると、事業からのキャッシュフロー、すなわち返済原資が減ってしまい、それまでの高レバレッジ体質が、危険水域にまで達してしまった例が数多く見られた。
 
こうした局面では、ミクロに見て、個々の企業が過剰債務を減らしていくことは合理的な行動だ。しかし、困ったことに、企業セクター全体が債務削減とそれに伴う資産売却に走ると、マクロ経済全体の成長性が低下してしまう。借金の返済時には、新たな投資が控えられ、それが経済全体に広がると、さらに新規投資を抑制する、という悪循環が始まるわけだ。
 
いま米国で起こっていることは、この企業の債務削減と、住宅ローンを中心に借金をしすぎた家計セクターの債務削減(とそのための消費抑制)の、同時進行だ。それが日本の失われた20年のような「需要が少ないから、供給を削減し、投資を控えるため、需要が戻らない」という流れにつながっている。言い換えれば、「財務戦略>事業戦略」のミクロの企業経営が、全体として、マクロの経済停滞の主要因になっているとも言える。

一個の営利企業に、社会全体での最適を考えろと言われても、そんなこと出来る訳がありません。
政府がインセンティブをつけないと、部分最適の流れは止まらないでしょうね。