アップルの本質は「模倣の達人」

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アップルの本質は「模倣の達人」:日経ビジネスオンライン

―― アップルを引き合いに出して、イノベーション、とりわけオリジナルなビジネスや製品を開発することの重要性がしばしば語られます。こうした論調について、どうお考えですか。
 
井上:確かによくそういう言い方がされます。しかし、アップルが本当にオリジナリティーだけを追求してきた企業なのかどうか、よく考えてみる必要があります。
 
例えば、(パソコンの)マッキントッシュは、グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)とマウス操作を実現しましたが、GUIやマウス自体は、米ゼロックスのパロアルト研究所で開発されたもので、アップルが創ったわけではありません。それ以外の製品についても言えることですが、アップルは実は模倣がとても上手な企業なのです。(中略)
 
よそで開発された技術を結びつけて、優美なソフトウェアとスタイリッシュなデザインで包み込む。他社の技術やアイデアを持ち込むことを恐れず、ちょっとひねりを加えて自社の魅力的な製品を作り出す。そういった強さを持っているのがアップルです。
 
実際、創業者の故スティーブ・ジョブズ氏も、模倣について肯定的でした。「素晴らしいアイデアを盗むことに我々は恥を感じてこなかった」という言葉を残しています。

そうそう。 昔のAppleを知ってる人間からすると、真似上手というイメージが強いです。

それでいて真似されるのは嫌いなんですよね。 晩年のジョブズの「Androidは抹殺する」という発言は残念でした。

Appleなんかどうでもいいので、本題はそこではありません。

―― 日本企業からイノベーションが起きないのは、そうした模倣能力が低下したからなのでしょうか。
 
井上:もともと日本企業は模倣を得意としてきましたし、今でも模倣のうまい企業はあります。
 
けれども、全体的に見ると、高度経済成長を経て「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた頃ぐらいから、日本企業の間では、「イノベーションは模倣なきところから生まれる」という誤解とおごりが蔓延していきました。多くの企業が、自分たちの世界に閉じこもり、目も耳も塞いだ状態で頭の中だけで独自性を出そうとし、出せるはずだと思い込んできました。
 
しかも、そのまずい状態に日本人はなかなか気づきませんでした。昨今でも、アジアの新興国で「良い模倣」「美しい模倣」がどんどん起きているのに、「あれは単にまねをしているだけで、新しいものではない」と否定的な見方をする人がいます。「新興国にまねばかりされる」という模倣脅威論も根強く、自分たちも新興国の企業から学び、模倣しようという積極的な動きが見られません。
 
また、企業は模倣によってイノベーションを起こそうとしていても、模倣する相手を間違えている場合があります。製造業の開発部門では、自社製品のスペック向上を図るために、他社の製品を参照したり、ベンチマークしたりしていますが、これでは大きなイノベーションにはつながっていきません。
 
厳しい競争にさらされているのは分かりますが、同業のライバル他社を模倣しようとしても、もともと情報は限られていますし、たとえ模倣できたとしても同質競争に追い込まれていくだけです。そういう「近い世界のお手本からの模倣」ではなく、他業種や外国から学ぶ「遠い世界のお手本からの模倣」、あるいは時間を遡り、過去の初心に返って学ぶ「原点回帰」が有効でしょう。

これは全くもってその通りですね。

「日本は基礎技術開発はせずに、欧米のうわべを真似ているだけ」という批判が80年代に強くなって、これじゃイカンと独創的な技術開発を志向し始めたのですが、やり方を間違えていたと思います。