「引き分け狙い」はフェアプレーではない?

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

引き分け狙い…なでしこ、フェアプレー精神はどこへ  :日本経済新聞

何より、なでしこジャパンと同義語ともいえた「フェアプレー」の精神はどこへ消え去ってしまったのか。そしてまた、相手チームに対する「リスペクト」は……。
 
佐々木監督は、試合後の記者会見でこうはっきりと語ったのだ。
 
「準々決勝の相手はどこでもいい。ただ、1位ならグラスゴーへの移動、2位ならここカーディフに残って試合ができる。コンディションを考え、後半の途中に引き分けを選んだ」(中略)
 
私は、南アフリカ戦もしっかりと勝ち、1位だろうと2位だろうと、そして移動があろうとなかろうと、金メダルに向かってまっすぐに突き進んでいってほしかった。だが、この道は佐々木監督と選手たちが選んだものだ。狙いどおり、最高の戦いで勝利をつかむことを祈りたい。(中略)
 
そして私自身は、たとえ準々決勝で勝とうと、そしてたとえ金メダルを取ろうと、この南アフリカ戦でのなでしこジャパンの試合をずっと残念に思い続けるだろう。
 
眠い目をこすりながらテレビの前で試合を見守った少年少女たちを含めた日本中の人々を落胆させた罪は、けっして小さくはない。

中継するメディア的には、なでしこが大勝するところを伝えたいのでしょうが、「どんな時でも全力で勝利を目指す」ということが、そんなに「美徳」かね?

うぶなチームからしたたかな強豪へ。なでしこ優勝への最短ラインを探る。 - Number Web : ナンバー

現時点では、チームとしてなでしこが本当に2位を狙いに行くのかどうか、定かではない。佐々木監督の性格を考えれば、気の緩みが生まれるのを嫌い、あえて1位突破を目指すのではないかとも思う。
 
ただ、世界王者に君臨し続けたいのなら、いつまでも“がむしゃらさ”や“ひたむきさ”ばかりを前面に押し出して頑張る、うぶなチームではいられない。
 
そろそろなでしこも、大会全体を見通す“したたかさ”や“ふてぶてしさ”を身につけてよい頃ではないだろうか。
 
そしてもちろんそれは、“がむしゃらさ”や “ひたむきさ”と両立できるものなのだ。

「うぶ」というのは「ナイーブ」ということです。

昔の日本サッカーは、よく「マリーシア(狡猾さ)」が足りないと言われていたものです。 勝ってる試合で時間を使えばいいものを、バカ正直に攻めにいってカウンターでやられるとかね。

なでしこ、メダルへの舞台は整った!“2位狙い”指令の是非を考える。 - Number Web : ナンバー

常に、全力で戦う姿勢を見せるのが「なでしこ」ということなのかもしれない。だが、五輪ではプロセスや姿勢ではなく、メダル獲得が最優先される。時間が経過すれば試合内容はほとんどの人が忘れてしまうだろうが、メダルを獲得したことは永遠に語り継がれる。頂点までの6試合すべてを全力で、ひたむきに戦うのは姿勢としては有りだが、現実的には不可能である。
 
なでしこの選手からは、いまもメダル獲得に対するブレは微塵も感じられない。
 
宮間あやは、佐々木監督の「2位通過発言問題」で一時はナーバスになりかけた選手を尻目に、「外で、いろいろ言われるのは気にならない。私たちはメダルを取りに来ているので」と、強気な姿勢を崩さない。
 
岩清水梓も今日の試合は「メダル獲得のため」と割り切っていたという。
 
「こういう状況で試合に出るサブメンバーのことを考えたら、やはり難しいというか、かわいそうだと思えてしまいます。でも、だからこそメダルを取って、あの試合は、このメダルを取るための試合だったんだと言いたいんです」
 
岩清水は、申し訳なさそうな表情で、そう言った。

つまり日本サッカーはここまで成熟したということです。

佐々木監督「引き分け狙いという辛い指示になった」=南アフリカ女子戦後会見(スポーツナビ) - ロンドンオリンピック Yahoo!スポーツ×スポーツナビ

――引き分けの指示を、はっきりと選手に伝えたのは誰を使って、どこのタイミングだったかをはっきり教えてほしい。また、一人一人の見極めができたということだが、使えるめどが立った選手がいれば、誰か教えてほしい
 
矢野は安定したプレーを見せてくれたという評価。ほかの選手はボーダーラインというかまあまあですね。前半は普通に戦ったわけなのですが、そのなかであまりいいチャンスができていなかった。ただ、2位狙いというのを僕の口から言ったのは今日であり、それは後半の途中でということ。しかし、その空気というか、(事前に)僕自身がそういう言葉を発したなかで、前半も普通にやるとはいえ、なかなか選手も集中できなかったんじゃないかなとは思います。
 
だから、後半20分ぐらいで状況を考えて引き分けを狙えるようなら、狙おうと事前に言ってしまったのは申し訳なかった。その言葉を発した時点で、影響が出てしまった。だから、内容とか選手のパフォーマンスの判定はストレートにできない部分があります。
 
普段出てない選手は点を取りたいという気持ちもあっただろうし、申し訳なかったです。
 
――なぜカーディフに残ることがいいのか? またドローということはわかるが、観客にとってみればゴールがなくエンターテイメント性のある試合でなかったことについてはどう思うか?(海外メディア)
 
グラスゴーではなく、ここを選んだのはコンディションを考えてのこと。われわれは五輪の挑戦者であって、それを達成するためには、そういう準備や狙いがあるもの。もちろん、テレビで応援してくれる人や少年少女に対しては申し訳なかったと思います。それは僕自身の責任です。戦略的な指示を出しましたので。しかし、そのお返しとして、次の試合ではスペクタルな展開ができるようにベストを尽くしたいと思います。
 
――引き分け狙いなのはよくわかったが、精神面で次の試合への影響や心配はないか?
 
勝手に心配してくださっても結構だと思います。それは僕が、次の準備でしっかりやることで、ロッカールームの雰囲気を見る限り、実際に選手はこの試合の結果に満足していると思います。

もしも日本(女子)サッカーが日本の柔道、あるいはブラジルのサッカーのような「結果だけでなく華麗な内容も」求められる存在になれば、批判もやむを得ないと思いますけどね。