「実質実効ベースで見れば円高ではない」のウソ

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コラム:円安の先にインフレは来るか=唐鎌大輔氏 | Reuters

一方、今回の円高局面に関しては「実質実効ベースで見れば円高ではなく、むしろ円安だ」といった主張も散見されてきた。これは平たく言えば、「自国通貨が高くなっても国内産業の継続的な効率性改善などを背景に国内物価が低下しているから、国際競争力上は問題ない」という主張に近い。だが、これは実態を逆に理解している面もあろう。
 
「国内産業で効率化が進んだ結果、円高が問題ではなくなっている」のではなく、「円高が問題だから、効率化してきた」という現実があるはずで、円高によりドル建てコストがかさんだ分をデフレで、具体的には製造業を中心とする効率化(含む賃金カット)で帳尻を合わせてきたというのが現場感覚に近いのではないか。
 
「実質ベースで見れば円高は問題なく、むしろ円安」という指摘は一面では正しいのだろうが、血のにじむような努力を重ねてきた輸出企業も含めてひとくくりに当てはめるのは、いささか乱暴に思える。

全くもってその通りだと思いますね。
学者や官僚にはそれが分からんのです。

ところで円安の先にインフレは来るか?ですが、

しかし、筆者は円安の先に2―3%の物価上昇が待っているとは考えていない。上述したように、企業からすれば、インフレ率が上昇して、それに伴い所得も上がるならば、せっかく円安で競争力を回復してもチャラになるわけで、今後、円安で企業収益が増えても所得環境が為替相場ほど劇的に変化する可能性は低いと言わざるを得ない。
 
思い出して欲しい。「プラザ合意以来の円安」を背景に戦後最長の景気回復局面を経験した02―07年、企業収益が増えても名目雇用者報酬はほとんど増えなかった。当時、多くの人が恐らく一度は「実感なき景気回復」との表現を目にしたはずである。それでもあの頃は円安だったからこそ名目雇用者報酬が「減らなかった(概ね横ばいだった)」という事実もあって、その意味で現政権が円安を志向する意味はあるだろう。
 
だが、円安進行と共に消費者物価指数(CPI)の上昇率がどこまで上がったかといえば、せいぜい06年半ばに1%程度になったくらいである。仮に、あの頃、企業収益の増加に呼応して所得も増えていたらCPIはもっと上昇したのかもしれない。だがその場合、日本企業が国際競争力を維持できただろうか。新興国・地域との競争が一段と激しくなり、企業のコスト意識が洗練される中で、「維持できない」と踏んだ企業が多かったからこそ所得の上昇が起こらなかったのではないか。
 
全世界が輸出のパイを取り合い、世界経済の成長率が低下している現状を見る限り、日本企業を取り巻く環境は当時より厳しいと考えるのが自然だろう。こうした状況下、今後、円安によって企業収益が増加するといった経路がある程度実現されるにしても、その先の「所得増」「消費増」「物価上昇」の好循環にまで至るのかどうかは、少なくとも前回の景気回復局面の経験を踏まえる限り、かなり怪しいところである。

これまた同意ですね。 輸入品の価格上昇で物価が上がる部分はあると思いますが、価格転嫁しにくい業界もあるでしょうし。
春闘でもベアどころか定昇すら問題になるくらいです。 賞与が上がるかどうかも微妙なところです。